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厚労省・総合戦略 製薬企業のMRに変革求める 「集中と選択」を

公開日時 2015/09/07 03:52

厚生労働省は9月4日、「医薬品産業強化総合戦略~グローバル展開を見据えた創薬~」をまとめた。総合戦略では、今後の製薬企業とMRのあり方についても言及した。MRについては、「これまでも過剰又は不適切な営業・宣伝活動が指摘され、訪問規制等が行われている」と指摘。インターネットの普及など情報手段の変化、発達していることを踏まえ、「今後その活動内容や必要性が変化することが予想され、それぞれの企業の社会的な役割を踏まえた業務の集中と選択が求められるのではないか」と提言した。そのほか販促活動の違反措置の必要性を含めて検討を求めた。


今回公表された総合戦略は、8月24日に開催された官民対話での関係者の意見も踏まえ、文章化したもの。後発医薬品(GE)80%目標が閣議決定された中で、国民への良質な医薬品の安定供給、医療費の効率化、産業の競争力強化を三位一体で実現するための医薬品産業の競争力強化に向けた緊急的・集中実施的な戦略を示した。戦略は、①イノベーションの推進、②質の高い効率的な医療の実現、③グローバルな視点での政策の再構築—が柱となっている。



◎新薬メーカーは「グローバルに展開できる革新的新薬創出を」


総合戦略では、「国として新薬メーカーに期待するのは、グローバルに展開できる革新的新薬の創出」とし、「世界をリードする治験先進国を目指すべき」とのメッセージを発信した。しかし現状は、長期収載品の収益に依存する企業も少なくない。国際共同臨床試験が主流となり、研究開発へのコストが増加している中で、資本力も必要になるが、日本企業はグローバル企業に比べて規模も小さい。そのため、「産業構造やイノベーションを生み出す力が現状のままでは、日本の創薬産業は生き残りが困難な状況になる」と指摘。資本力・研究開発力・グローバルな人材確保などの観点から「M&A等による事業規模の拡大も視野に入れるべきではないか」とした。


また、創薬大国である米国と比べ、世界で最初に上市される品目が少ないこと、バイオベンチャー由来の製品が少ないことを指摘した。「バイオベンチャーを育てる好循環(バイオベンチャーのエコシステム)の確立を図ることが必要」とし、AMEDを中核とした官民一体となった振興に取り組む必要性を強調した。


◎GEは仕切価に安定供給に必要なコスト上乗せ検討を


イノベーション推進の重点領域は、ゲノム医療、iPS細胞を用いた創薬・核酸医薬品、バイオ医薬品などとした。施策の柱は、臨床開発インフラの整備、人材育成、産官学の連携強化に加え、保険償還価格におけるイノベーションの評価も盛り込んだ。「引き続きメリハリを付けた薬価制度により、イノベーションの適正な評価をさらに進めることが重要」と指摘。創薬サイクルを効果的・効率的に回す観点から新薬創出加算のあり方について検討する。また、予見性を高める観点から先駆け審査指定制度の対象となる医薬品の評価のあり方について、検討することを盛り込んだ。
 

上市後に継続してイノベーションを評価する観点からは、市場実勢価格が唯一の指標と説明し、単品単価取引の重要性を強調した。流通を担う医薬品卸については、後発医薬品(GE)の急激な浸透や新薬創出加算品目の増加による、カテゴリーチェンジの影響で、経営が悪化していると説明。「行政が安定供給のための制度的措置をとることも考えられる」とした上で、GEなどについては「安定供給に必要なコストを仕切価に乗せて販売するなど、大きな市場環境に伴う収益構造の変化への対応が求められる」とした。
 

◎既存薬のドラッグ・リポジショニングでイノベーションも
 

既存品について、イノベーションの観点からも重要であることを盛り込んだ。市場規模が小さい希少疾患などの研究開発推進も重要になるが、既存薬の適応拡大を含めたエビデンス構築を進めるなど、“ドラッグ・リポジショニング”を促進するための施策の検討も盛り込んだ。
 

一方で、長期間にわたり医療現場で使用され、臨床上の必要性の高い、基礎的医薬品についても、「薬価上必要な措置」などを検討することを盛り込んだ。ワクチン、輸液製剤、漢方製剤、外用製剤をあげた。輸液製剤では、慢性的な不採算が指摘されることから、解消に向けて「企業の枠を越えた事業継続体制の構築が重要」とした。


◎バーコード表示ないGEは薬価収載認めない措置も検討 

GEをめぐっては、医薬品の回収などで医薬品卸が求めていた、変動情報を含んだバーコード表示を必須化。この表示のないGEについては薬価収載を認めないなどの措置も視野に検討する。GEの販売名についても、一般名ベースに変更しないGEは薬価基準から削除することも含めて検討する。また、先発品が所有する規格はすべて揃えて薬価収載する、いわゆる“規格揃え”について今年9月を目途に方向性を決定し、2015年度中に見直しを行うことも盛り込んだ。


GEは、コスト削減の観点から共同開発が実施されているケースが多く、結果としてひとつの先発医薬品に対し、30数品目など多くのGEが薬価収載されるケースもある。これが、薬局や医薬品卸の在庫負担となっていることも指摘されており、この対応策を検討する。そのほか、薬価・診療報酬制度上のインセンティブの中長期的なあり方や品質確保対策を検討する。

◎厚労省・城課長「製薬産業に対する危機意識の表れ」


厚生労働省医政局経済課の城克文課長は、本誌取材に対し、総合戦略は「塩崎恭久厚生労働大臣をはじめ、厚労省を含めた関係省庁の製薬産業、特に創薬産業に対する危機意識の表れ。隅から隅まで読んで、どうしたらよいのか(製薬企業は)自分で考えて欲しい」とコメントした。



◎ 製薬協・多田会長「製薬産業を後押しするものと評価」


日本製薬工業協会は同日、多田正世会長名で、「革新的な医薬品の創出等に向けて製薬産業を全体として後押しするものとして高く評価したい」とする声明を発表した。M&Aなど事業拡大などの必要性が示されていることについては、「企業経営者自らが主体的かつ総合的に判断していくべきものと考えている」とした。イノベーションの推進に際しては、臨床開発のインフラ整備、AMEDを軸とした産官学の連携に加え、新薬創出加算の維持・継続、研究開発税制の拡充などの施策についての実施も改めて訴えた。

 

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