厚労省 単品単価交渉率、別枠品は80%も価格交渉代行業者は15%にとどまる “一括交渉”の形態整理へ
公開日時 2025/06/23 07:29

厚生労働省は6月20日、医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会に、いわゆる別枠品の単品単価率交渉率は80%程度だったと報告した。流通改善ガイドラインが改訂された効果が一定程度あることがうかがえる結果となった。一方で、交渉形態ごとに見た場合の単品単価交渉率は48%。特に、価格交渉代行業者では15%にとどまった。今後は、一括交渉における取引形態と取引契約等における課題を整理した上で、必要に応じて流通改善ガイドラインの改訂を検討する方針。
厚労省は流改懇に、単品単価交渉率について、基礎的医薬品は79%、安定確保医薬品(カテゴリーA )は80%、不採算品再算定品は79%、血液製剤は84%、麻薬、覚醒剤及び覚醒剤原料は81%。別枠品では約8割だったと報告した。新薬創出等加算品は68%だった。流通改善ガイドラインでは、別枠品について「個々の医薬品の価値を踏まえた単品単価交渉とすること」とされている。
交渉形態ごとにみた単品単価交渉率は、卸と医療機関・薬局が個別交渉している場合は95%卸と医療機関・薬局の法人・グループの本部等が一括交渉している場合では34%、このうち、価格交渉代行業者と交渉している場合は15%だった。全体的に病院・診療所よりも薬局における利用率がやや高く、主に店舗数が少ない薬局での利用率が高値となっているとのデータも示した。
厚労省医政局医薬産業振興・医療情報企画課の藤沼義和首席流通指導官は、“一括交渉”には「色々な形態がある。同一法人など、グループ本部との一括交渉、あるいはフランチャイズ契約を締結しているようなチェーン本部との一括交渉、あるいはボランタリーチェーンとの一括交渉など、多種多様な交渉形態がある」と説明。価格交渉代行業者との交渉でも、「基本的には卸と加盟している医療機関、あるいは薬局との間で基本契約が締結されると考えられるが、そのうちあの価格交渉という一部分を代行する方が請け負うということになると、当然この三者の間での責任主体が少し曖昧な状態になり、安定供給に支障を来たすのではないかと危惧する声がある」と説明した。
小山信彌構成員(日本私立医科大学協会参与)は、「病院の方から見ると、一括交渉はずっと値引き率がいい。極端な話、単品単価でやると値引き交渉率、非常に悪い」と説明。特に、大手チェーン薬局で乖離率が大きい一方、基礎的医薬品や不採算品再算定品目は病院・診療所よりも乖離率指数が小さい。小山構成員は、「基礎的医薬品のところ、調剤薬局でなぜ低いのか。300床以上499店舗、500店舗以上がなぜこんなに低いのか。こんなことあり得るのか」と疑問を露わにした。「別枠品に寄せられちゃっているのではないか」と指摘した。これに対し、折本健次構成員(日本医薬品卸売業連合会参与)は、「薬局の大きな店舗で基礎的医薬品が犠牲になったとは思わない」と応じた。一方で、単品単価交渉率が改善したことに触れ、「流通改善ガイドラインの効果は十分あると思う」と述べ、流通改善ガイドラインが周知された結果との見方を示した。
貞弘光章構成員(全国自治体病院協議会常務理事)は、「経営が厳しい中で、価格交渉代行業者と契約を考えている病院が増えてきている」と説明。地域医療連携推進法人のメリットが共同購入であり、こうした取組みも現場で広まりつつあるとした。そのうえで、「結果的に、これだけ単品単価交渉が低くて利ザヤが大きいとなると、我々がこれまでやってきた単品単価交渉すると利ザヤが少ない」と「不公平」であることを指摘。「単品単価交渉をしているような病院、あるいは医療施設には、“医療用医薬品適正価格購入加算”のような加算を」と提案した。
原靖明構成員(日本保険薬局協会医薬品流通検討委員会副委員長)は、「(一括交渉の中で価格が異なる)一つの要因として、与信能力とか契約の状況に応じて、支払い状況に応じても変わってくると私は思っている」と指摘。経営形態や経営母体によっても変わってくる、卸の扱いも変わってくることも指摘し、“一括交渉”の内容を整理する必要性を指摘した。
眞鍋雅信構成員(日本医薬品卸売業連合会)は、「価格交渉代行業者と薬局間との取引基本契約書なり何らかの契約について我々知る由もない。価格代行業者と一口に言っても、他にも色々なサービスを薬局から委託されている業態もあり、価格交渉代行機能をどう位置付けていいのか、卸としても悩んでいる」と述べ、議論に向けて整理する必要性を口にした。
このほか、豊見敦構成員(日本薬剤師会常務理事)は、「この調査に出てこないような取引などがあるか。最近では後発医薬品の販売会社の買収もあり、流通に変化が起きているのではないか」と指摘した。