認知症治療薬 在宅での副作用は21% MRは製品軸から地域包括ケア軸に脱却を

公開日時 2017/08/22 03:51
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在宅での認知症治療薬の副作用は21%-。東京大学大学院医学系研究科地域医薬システム学講座の今井博之教授は8月20日、都内で開催した一般社団法人日本医療コンコーダンス研究会主催のシンポジウムで、628人の患者について薬剤師から回答を得たアンケート調査の結果を明らかにした。副作用の背景に医師の漫然投与がある可能性を指摘した上で、「地域包括ケアシステムの中で、医薬品販売後の情報は実際にはほとんど収集、提供、伝達できていない」と指摘。「製品軸という過去の成功体験ではなく、地域包括ケア軸、多職種連携軸」へと脱却し、新たなMRの姿となることの必要性を強調した。

今井教授らは、2016年度厚生労働科学研究として、全国の在宅医療の実態を明らかにする目的で研究を実施。日本薬剤師会、日本在宅薬学会の協力のもと、在宅医療に携わる薬剤師にアンケート調査を実施した。それによると、患者628人のうち、副作用21%に当たる134人に副作用が発現しているとの回答を得た。副作用の内訳は、「興奮・不眠」が最多の32%、消化器症状(22%)、幻覚・妄想(11%)などが次いだ。副作用に対する処方の提案(回答数:82人)としては、中止が半数を占める結果となった。さらに、抗認知症薬が正しく処方できていない理由をたずねたところ(回答数:45人)、医師の漫然投与が67%を占めた。調査期間は2017年1~3月。


◎製薬企業は地域医療の変化をほとんど何も知らない


今井教授は、認知症の例を引き合いに、現在のMR活動と現実の医療との間に乖離があるとし、「こういう情報をなぜ集めようとしないのか」と指摘。地域は個別性と特殊性、日常性の特色を持っているとした上で、製薬企業にも”地域”を理解した上で、上市後の情報収集を行い、それを分析して提供することを求めた。一方で現在の製薬企業の実態については、「急速に医療現場が変貌を遂げているのに、製薬企業は地域医療の変化をほとんど何も知らない」と指摘。「現状の地域医療の枠組みの外で、傍観者として存在している」、「地域医療という言葉の本当の意味を理解していない」とし、情報不足が顕著だとした。


急激な高齢化人口減少に伴って各地域が地域包括ケアシステム構築に動く中で、MRに求められる役割も急激に変化しており、「古典的な、単純な医薬品情報の収集と提供だけではもはや価値はない」と述べ、MRが地域包括ケアシステムの中に入る新たな姿へと脱却することを提案した。


各地域で医師、薬剤師、看護師、ケアマネージャーなどの多職種連携が構築されている中で、この姿を理解することが情報の獲得につながるとの考えも示した。特に、保険薬局との連携する必要性を強調。これまで医師はMRに情報を頼るいわば“MRベースド・メディシン”の姿だったが、今後の世界は薬剤師による医師への働きかけがカギとなる“Pharmacy Based Medicine(PBM)”へと変化すると見通し、「薬局と連携することが製薬企業としての一つのカギとなる」との考えを示した。今井教授は、「地域医療の参画と多職種連携を理解し、本当に患者アウトカムが向上するコマーシャル戦略をすべきだ」との考えを示した。


◎MRはひとりの地域住民としての参画を



シンポジウムでは、医師、薬剤師、看護師がそれぞれの立場から見た地域包括ケアシステムと、それに合致するMR像について語った。薬剤師の立場から講演した西東京市薬剤師会理事の藤田珠理氏は、製薬企業として参画する上でのハードルの高さを指摘し、「製薬企業を背負ってではなく、一人の地域住民として参加」することを提案した。藤田氏は、「地域包括ケアシステムの主役は地域住民。地域住民にとっては、安心して生活を送れることが重要だ」と説明した。その上で、地域包括ケアシステムのプレイヤーの一員として自治体もおり、公共性が重要になると指摘し、一般市民として参画した方が連携しやすいとの考えを示した。

実際、西東京市ではすでに一般市民としてフレイル事業に参加する製薬企業の社員もいるという。こうした取り組みを通じて、吸収した内容を企業に持ち帰り、事業に生かしては、と提案した。

また藤田氏は、「わからないことがあったときにMRに聞こうとは思わない。本当に相談ができるのか」と指摘した。周囲の薬剤師に、現場から製薬企業に求めることを周囲に聞いたが「ない」ことも明かした。その上で、地域で収集した情報を分析し、患者ひとりひとりに合致した情報提供を行うなどの情報提供を求めた。
 

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