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小説MR・久坂部羊氏 TVドラマでMRの役割、医療の一側面知る機会に 映画・廃用身は実体験がきっかけ

公開日時 2026/06/15 04:53
映画「廃用身」の原作者で、医師で小説家の久坂部羊氏は6月13日、映画化記念講演会に臨み、映画製作をめぐるエピソードなどを語った。小説「廃用身」は久坂部氏の処女作で、脳卒中で麻痺した高齢者の手足を切断するという過激な治療を考える医師の話。実際にデイサービス併設のクリニックに勤務した際に、利用者から「麻痺した手足が重い、痺れる、痛みがある」として「切ってほしい」と言われた実体験がきっかけになっていると話した。映画化には「多くのハードルがあった」とも振り返った。久坂部氏はまた、自身の小説「MR」が今秋に連続テレビドラマとして放映されることも報告した。ドラマに込めたメッセージについて本誌取材に応え、「医者だけに任せていたら十分に良い医療ができない側面もある。MRの役割の重要性は確実にある。このドラマから、それを汲み取って明日を生きる希望になれば良いと思う」と語ってくれた。

久坂部氏は大阪大学医学部を卒業、外科、麻酔科医を経て外務省に入省し、大使館の医務官として海外に赴任した経験がある。帰国後に在宅医療に従事した際に執筆した作品が「廃用身」(2003年)だ。久坂部氏は小説「廃用身」について、「脳卒中で麻痺した患者の手足を切断する治療法を考える医者の話。高齢者の麻痺した手足を切るというだけでも、世の中に顰蹙(ひんしゅく)を買うし、ビジュアル的にグロテスクなホラー映画にもなる。それからCGを使うとものすごくお金がかかる」と述べ、映画のオプション契約の話があった時から「ものすごくハードルの高い映画になる」として実現は難しいと思っていたと振り返った。一方で映画監督を務めた吉田光希氏が久坂部氏の仕事場を訪問し、映画製作に関する想いと作品に対する「熱意」に押されてクランクインに合意したエピソードについても披露してくれた。

映画では、意識の無い植物状態の高齢者の両手両足を切断する手術シーンが描かれている。撮影には実在する病院の手術室と本物の医師など医療者が協力したという。主人公の漆原医師は高齢者の麻痺した手足を切断することで血液循環が良くなり、ひょっとしたら意識が戻るかもしれない、認知症の高齢者の頭がすっきりするかもしれない、活力の無い高齢者が元気になるかもしれないと考え、院内のカンファレンスで医療スタッフ全員に意見を聴く場面がある。久坂部氏は、「あくまで小説的な理屈」と断りながらも、漆原医師の提案に一度は躊躇しながらも医療スタッフが、それを受け入れていく様子や心の揺れが描かれている。

一方で患者・家族の葛藤も奥が深い。脳梗塞で麻痺が残り寝たきりとなった夫を介護する奥さんが「もう一度主人と話したい」と漆原医師に懇願するシーンを映像化した。訴えを聞く漆原医師が「意識が戻るかどうかは保証の限りではありません」と答えながらも、麻痺した手足を切ったら少なくとも介護は楽になるだろうという想いを抱き、迷い、葛藤する。結果的に切断手術を決断するが、その後、何一つ改善しない夫の治療経過に家族は納得せず、「意識が戻らない。なぜ切断したのか」と逆に漆原医師をなじる場面に展開する。久坂部氏は、こうした事例は延命治療の現場ではよくあることだと明かす。まさに”善か悪か”では語れない世界がそこにはある。映画のラストには、原作に描かれていない高齢社会が抱える過酷な介護現場や日常生活の視点を通じ、もう一つの「可能性」を込めたシーンが加えられていると久坂部氏は明かしてくれた。

久坂部氏は講演の最後に、「現実を良くしたいなら、まず現実を直視することがスタートだ。メディアから発せられる話は良い話ばかりだ。いつか(ヒトの命は)終わる。良い時間はいつまでも続かないということをもっと意識すべきだ。それにより、いま無事でいることのありがたさを実感することができる。突然、家族が脳梗塞になったり交通事故にあったりすることは誰にでもあることだ。家族の死を常に考えることが大切だ」と語り、映画「廃用身」に込めたメッセージを発した。

◎小説「MR-医薬情報担当者」が今秋に連続テレビドラマ化 

久坂部氏の小説「MR-医薬情報担当者」が今秋に連続テレビドラマ化(wowow)される。ストーリーは、準大手製薬会社「天保薬品」の東京支店第三営業所所長で、MRの紀尾中正樹(主演:向井理)は、自社の画期的な二型糖尿病の新薬「パンセル」が「診療ガイドライン」の第一選択(A判定)に決定されることを目標に奔走していた。このガイドラインの第一選択に薬が採択されるということは、年間売上が1000億円超のブロックバスターが確実視されるということ。ところが、外資のライバル社「タウロス」のMRである鮫島淳からの苛烈な妨害工作によって、評価の高かった「パンセル」は一転、セミナーでのコンプライアンス違反に問われてしまう―。

◎久坂部氏 やはり医療においてMRの果たす役割は極めて大きい」 一方で諸刃の剣も

久坂部氏は小説「MR」のドラマ化について本誌取材に応え、「世間に対して製薬企業のMRという仕事があまり知られていない。やはり医療においてMRの果たす役割は極めて大きいと感じている」と強調。一方でMRぼ仕事は「諸刃の刃で、利益相反になる危険性もあったりする。そうした医療の一側面を多くの方々に知って頂きたい。今回のドラマ化でそういう姿が描かれると期待している」と述べた。

◎「ともすれば医師の横暴に心が折れたり、会社の都合で振り回されたり

一方で現役MRに対しては、「仕事のやりがいを見つけられる余地はあるが、ともすれば医師の横暴に心が折れたり、会社の都合で振り回されたりすることもあると聞いている」と指摘。「患者に届く医薬品を医療者に情報として届けることがMRの役割だ。医師だけに任せていたら十分に良い医療ができない側面もある。それをこのドラマから汲み取ってもらって明日を生きる希望になれば良いと思う」と強調した。




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