厚労省 条件付き早期承認、先駆け 法制化へ向け議論スタート

公開日時 2018/05/10 03:51
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厚生労働省の厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会が5月9日開かれ、医薬品医療機器等法(薬機法)改正を見据え、条件付き早期承認制度や先駆け審査指定制度の法制化に向けた議論をスタートさせた。薬価制度抜本改革が断行され、新薬創出等加算が抜本的に見直される中で、研究開発型企業を中心に薬事承認制度を含めた開発上のインセンティブを強く望む声が業界内からあがっている。この日の制度部会でも、業界代表の野村博委員(大日本住友製薬社長)が「条件付き早期承認制度、先駆け審査指定制度については、患者アクセスに有効な制度と考えている」と述べ、法制化を要望した。

◎国際共同治験の増加、臨床試験手法の変化踏まえた法改正へ

「国際共同治験を促進し、世界同時開発によりグローバルヘルスに貢献することを視野に入れた制度の整備を要望する」-。野村委員は、日本製薬団体連合会(日薬連)が加藤厚労相宛に提出した要望書(4月27日付)に基づき、こう主張した。

研究開発型企業にとって命運を握る研究開発を取り巻く環境はここ数年間で大きな変化を遂げた。そのひとつが国際共同治験、世界同時開発の増加だ。2007年度に10%だった国際共同治験は16年度には40%前後まで増えた。臨床試験の手法も変化し始めている。これまで臨床試験は対照群にプラセボを置き、被験薬の有効性・安全性を検証することがセオリーだった。しかし、米FDAは、バイオマーカや遺伝子に着目した新たなプロトコルに着目している。臓器横断的な適応も視野に入り、さらに幅広い患者群が参加する国際的な治験の実施、患者の組み入れの増加も見込まれる。さらに、抗がん剤などでは被検薬と対照薬の単剤同士での比較ではなく、併用薬を置いた治験数も増加してきている。薬機法改正の議論も、こうした変化を踏まえて進むことになる。

さらに今後の変化として注目されるのが、リアルワールドデータ(RWD)の利活用だ。同省は省令改正を行い、条件付き早期承認制度を導入した。検証的臨床試験の実施が難しい場合や長期間要するケースについて探索的臨床試験で一定の有効性・安全性が確認されたことで承認する。承認自体は前倒しされることになるが、承認条件としてRWDの利活用などで有効性・安全性の確認を求めた。さらに、難病や希少疾患などで患者数が少なく対照群を置くことが難しいケースで、対照群の代わりにRWDを利活用することで、単群、少人数での臨床試験を可能にし、革新的新薬を早期に実用化することも視野に入る。短期間・低コストでの治験実現につながる。患者にとって革新的新薬を早期に届けることが可能になるばかりか、製薬企業にとっては、短期間・低コストでの実施が期待できる。

野村委員も、RWDについて「革新的医薬品をはじめとする新薬創出力の向上、臨床試験の効率化、製造販売後安全対策の充実に医薬品業界としても大変期待している」との考えを表明。企業へのデータ提供時における個人情報保護の問題整理やデータベース利用時の信頼性を確保すべきと主張した。

◎市場の不透明感高まる中で高まる創薬環境整備へのニーズ


製薬業界が条件付き早期承認制度や早期承認制度の法制化を強く要望する背景には、日本市場の不透明さがある。2018年度薬価改定に伴い、新薬創出等加算が見直されるなどの抜本改革が断行された。製薬業界に大幅な産業構造転換が求められる中で、革新的新薬を創出するための環境整備の必要性が高まっている。厚労省はこうした状況を踏まえ、18年度予算編成に際し、薬価・診療報酬改定率の決定と同時に、日本創薬力強化プランを策定。条件付き早期承認制度やRWDの利活用などで研究開発の生産性を高めるための環境整備を打ち出すとともに、予算も確保した。今回の薬機法改正の議論も、この延長上にある。

野村委員は、条件付き早期承認制度や先駆け審査指定制度の法制化で、「開発計画を見通すことができる予見性の高い仕組みとするよう検討いただきたい」と述べた。

日本での「先駆け審査指定制度」と同様の制度として、米国にはBreakthrough Therapy制度、欧州にはPRIME制度がある。日本での指定品目数は33品目(18年3月31日現在)。日本に1年遅れて制度化されたPRIME制度だが、指定品目数は日本とほぼ同等。米国での指定品目数は200品目を超える。新薬の審査期間も欧米並みに短縮化されたものの、企業側の審査時期はいまも米国に約1年(16年度)後れを取っている。製薬企業側も市場や、レギュレーションの環境から「開発や承認申請を行う国・地域を選択する時代」に移りつつある。国際共同治験が主流となる今だからこそ、経営者にとって日本市場への投資を確保するうえで、先行き不透明感への危機意識も強い。法制化は予見可能性を高め、こうした不安を払しょくする観点からも、重要性が増している。

一方で、この日の部会で花井十伍委員(特定非営利法人ネットワーク医療と人権理事)は、「イノベーションが強調され、どういうものを対象にすべきかという条件、そして判断プロセスの透明性を高めなければ、極論を言えば、製薬企業側からすべての開発品を条件付き早期承認にしてくれということになりかねない」と指摘。患者のための制度充実を訴えた。 

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