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【FOCUS G1品目“撤退ルール”で実効性に課題も データ承継はGE80%時代を占う試金石】

公開日時 2019/04/02 03:52

後発品の置き換えが80%以上進んでいる長期収載品(G1)品目の“撤退ルール”の詳細が固まった。2018年度薬価制度抜本改革で盛り込まれたこのルールは、後発品と同じ薬価となった先発品が市場から撤退できるというもの。ジェネリックメーカーにとっては先発の市場を譲り受けることに加えて、薬価上のインセンティブがあるとして、当初は注目を集めた。ただ、先発メーカーが社内に保有する安全性・有効性データの引き継ぎについて、「社内資料の引き継ぎ等にかかわる協議を行う」と示すに止まった。加えて、対象品目のマーケットサイズが大きく市場競争が激しいことから市場実勢価格の下落幅も大きく、その結果、一価格帯になるとして実効性を疑問視する声も聞かれだした。すでに先発メーカーの一部には、長期収載品を別会社に事業譲渡する動きが活発化しており、実際にルールを活用する事案は少ないとの見方もある。こうした様々な声の背景にはデータの承継の難しさがある。ジェネリックメーカーに対しては、安全性・有効性への責任の明確化を前提としたビジネス転換を突き付けている。(望月英梨)

長期収載品に依存するビジネスモデルからの脱却が製薬各社に突き付けられるなかで、政府は18年度薬価制度抜本改革を通じ、G1撤退ルールの策定を求めた。G1品目は後発品上市後5年後のZ2適用期間(5年間)を経て、6年間をかけて後発品と価格が揃えられる。これにより先発メーカーはG1品目の市場撤退を自らの意思で選択できるようになった。ただ、長期間をかけて蓄積した先発メーカーの安全性・有効性データをきちんとジェネリックメーカーに引き継げるかどうかを問う声が医療関係者を中心にあがり、厚労省もルール化の検討を行ってきた。

◎厚労省が事務連絡 増産対応企業は単一・複数企業で50%超の要件も

撤退ルールのスキームについて、厚生労働省医政局経済課は3月29日付で日本製薬団体御連合会(日薬連)に事務連絡を発出した。

具体的には、Z2の適用期間終了後6年以内に薬価基準削除の要望がある場合は、通常薬価改定の3か月後を目途に経済課に報告する。これを受け、厚労省は増産意向をジェネリックメーカーにたずね、特段の問題がないと判断した場合は増産対応企業として、増産依頼を行う。撤退が決まったG1品目については、撤退意向確認年度の6年後の4月1日に薬価が削除される。より早期に撤退する場合には、薬価削除予定の2年前までに、増産対応企業の増産計画書を添付し、早期撤退希望書を提出する。

増産対応企業としての条件は、「増産意向を示した製造販売業者であって、合算して後発品生産量が全後発品の50%を超える単一又は複数の製造販売業者」。手挙した企業のうち数量シェアの多い企業から順にシェアを積算し、50%超に達するまで複数の企業を認める。さらに単一企業で50%超の生産体制を有している場合は、最も数量シェアの大きい企業も増産対応企業とするなどとして、安定供給に配慮した。

◎安全性情報引継ぎで「協議」求める

しかし、このルールの適用を阻む課題は大きい。製薬業界は、G1撤退ルールが示されて以降、いかに蓄積したデータを引き継ぐかに議論の時間を費やしてきた。安全性情報一つをとっても、企業ごとに活用するフォーマットは異なり、引き継ぎは容易ではない。一方で、すでに特許後の市場で、先発メーカーが安全性情報を保持するのにかかるコストも重くのしかかる。第三者機関を介したデータの引き継ぎも検討されたが、最終的に先発メーカーとの間で、「社内資料の引継ぎ等にかかわる協議を行うこと」で決着した。また、引き継ぎ先の増産対応企業に対し、審査報告書や添付文書をはじめとした公開済の情報を補完し、対応することを求めた。

実際、医療現場からは、後発品の市場浸透が進んでいるにもかかわらず、先発メーカーのMRやコールセンターを通じた情報提供が中心となっているとの指摘も少なくない。あるジェネリックメーカー関係者は、「医療関係者から質問があった場合に、そのデータを先発メーカーが有していたかどうかがわからないことが課題だ」と話す。ただ、ローコストオペレーションが求められるジェネリックビジネスではこうした問題は重くのしかかる。撤退ルールの導入で、課題が浮き彫りになった感は否めないが、この課題は後発品80%を見据えたときに、ジェネリックメーカーが避けて通れない課題でもある。

さらにこのルール、ジェネリックメーカーにとっては、インセンティブが薄いとの声も少なくない。薬価算定ルールでは、増産に対応した企業と、その他の企業にわけた2価格帯とすることが明記されている。増産に対応していない企業は、増産に対応した企業の価格帯を上回らないこととされている。

ジェネリックメーカーにとっては、“夢の2価格帯”なのだが、この実現にも懐疑的な声があがる。G1品目の約8割は注射剤。市場の多くはDPC病院が握る。一般的に流通量の多く、マーケットが拡大すれば、低価格になる。むしろ増産対応企業の方で納入価が下振れしていると見られており、実質的な1価格帯は揺るがないとの見方が強い。増産の手挙げをした企業は安定供給の責務もあることから、原薬の値上げなどのリスクもはらむ。

撤退ルールが浮き彫りにするのは、後発品80%時代後の安定供給、そして情報提供のあり方にほかならない。体力のある企業での対応が進むことも想定される。後発品80%後のジェネリック市場を占う一つの試金石となりそうだ。

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