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厚労省・社保審医療保険部会 医療制度改革骨子を提示 予算関連法案として通常国会提出へ

公開日時 2015/01/13 03:51

厚生労働省は1月9日の「社会保障審議会医療保険部会」(部会長・遠藤久夫学習院大学経済学部教授)に、医療保険制度改革骨子案を提示した。高齢化のピークを迎える2025年に向け、高騰する高齢者医療費の適正化と国民皆保険を堅持するために必要な医療保険制度の安定化を図る。具体的には、国民健康保険(国保)の財政基盤強化や財政運営責任の都道府県移管などを盛り込んだ。加えて医療費適正化計画を見直し、2015年度から議論の始まる地域医療ビジョンと整合的な目標を設定する。そのほか保険外併用療養の仕組みとして「患者申出療養」の創設も明記した。同省はこの日の議論を踏まえ、「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法案(仮称)」と題する予算関連法案を通常国会に提出する。


◎地域包括ケア構築に向け都道府県の役割強化


医療保険制度改革骨子案は、①国民健康保険の安定化、②高齢者医療における後期高齢者支援金の全面総報酬割の導入、③協会けんぽの国庫補助率の安定化と財政特例措置、④医療費適正化計画の見直し、⑤個人や保険者による予防・健康づくりの促進、⑥負担の公平化、⑦患者申出療養(仮称)の創設-の各項からなる。


特に医療システムについては、医療機能の分化・連携、地域包括ケアシステムの構築に向け、都道府県の役割を強化する方針。これに伴い都道府県は、医療提供体制と医療保険の両面において自主性・主体性の発揮が求められることになる。


◎国保の財政運営責任を都道府県に移行


医療保険制度の持続性を担保するため、骨子案では、国保について財政運営責任を都道府県に移行する案を明示した。市町村国保については、2015年度から1700億円、17年度から3400億円の財政支援の拡充を行うことで、抜本的な財政基盤の強化を図る。具体的には、15年度から低所得者が多い自治体に対する保険者支援制度として、消費税財源を活用して1700億円を拡充する。さらに、2017年度からは後期高齢者においても、保険者の総報酬額に応じて支援金を定める、いわゆる“総報酬割”による国費約2400億円のうち、約1700億円を優先的に活用する。総報酬割は、現行では1/3について実施されているが、15年度に1/2、16年度に2/3に段階的に引き上げ、17年度には全面的総報酬割を実施する。これにより、報酬水準の高い健保組合と、協会けんぽなど報酬水準の低い健保組合との間で、格差を解消する狙いが込められている。


18年度からは国保の運営主体をこれまでの市町村から都道府県に移管し、都道府県が財政運営の責任主体を担う。国保はこれまで、▽高齢者が多く、医療水準が高い、▽低所得者が多い、▽小規模保険者が多い―など構造的な課題を抱えてきた。国の財政支援を拡充するとともに、都道府県が中心的役割を担うことで、各地域に見合った運営を行う。


一方で、都道府県は、地域医療ビジョンを策定し、病床の機能分化、連携を推進し、地域の実状に見合った適切な医療提供体制を構築する役割も担う。都道府県が医療提供体制と医療保険の両面から責任を果たす仕組みを構築することで、地域の実状に見合った、医療と介護が一体となった地域包括ケアの実現を目指す。


◎医療費適正化計画 GE使用割合を新指標として追加


医療費適正化計画では、都道府県が保険者協議会との協議を通じ、医療費の水準や医療サービスの効率的な提供について、地域医療ビジョンと整合性が取れた目標を設定する。具体的には特定健診・保健指導実施率や平均在院日数について必要な見直しを行うほか、新たな指標として後発医薬品の使用割合や、効率的な医療提供体制、地域包括ケアシステムに対応した指標なども追加する。これらの進捗状況の管理や暫定評価については、毎年度実施し、公表させる方針。同省は、各都道府県の策定する目標に達しない場合の“ペナルティ”は定めないとしている。ただ目標が実績と乖離した場合については、要因分析を行い、必要な対策を検討、実施することも求める考えだ。


そのほか、各地域で定める医療計画や介護保険事業支援計画との整合性を取るため、計画期間をこれまでの5年から6年に変更。18年度から実施される第三期計画も地域医療構想策定後、前倒しするとした。


一方で、予防・健康づくりの促進も強化する。健診の受診や体重の記録など、健康づくりの取り組みに応じて健保組合が個人にヘルスケアポイントの付与や保険証への支援などを実施する。これらの取り組みを国が策定するガイドラインに沿って保険者が保険事業の中で実施できることも明確化する。保険者に対しては、18年度から指標の達成状況に応じて、最大10%の段階的な減算を行う仕組みとする。指標としては、これまで特定健診・保健指導実施率のみだったが、これを見直し、後発医薬品の使用割合等、複数の指標で総合的に評価するとした。インセンティブを付けることで、各保険者の取り組み促進を促す。


これらの取り組みは、全国のレセプト・健診データを集積したナショナルデータベース(NDB)の充実を図り、分析に基づき効果的に実施することも求める。


◎紹介状なしの大病院受診には定額負担導入も


そのほか、特定機能病院及び500床以上の大病院を、紹介状なしで受診する場合には、選定療養として、原則として初診時、最新時に5000~1万円の定額負担を患者に求める。あわせてこれらの病院は、治療に際し、中核的な役割を担う医療機関であることから、社会保障・税の一体改革の主旨でもある、地域における医療機関の“機能分化・連携”の中心的役割を担うことも、健康保険法の改正に盛り込まれることになりそうだ。


 


 

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