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社保審 長期収載品の選定療養で自己負担引上げが論点「全額患者負担」の声も 後発品の安定供給が前提

公開日時 2025/11/07 05:43
厚労省保険局は11月6日の社会保障審議会医療保険部会に選定療養における自己負担の引上げを議論の俎上にあげた。現行制度では、患者希望で長期収載品を使用した場合、長期収載品と後発品の価格差の4分の1相当を患者が負担しているが、事務局は価格差の2分の1、4分の3、全額引き上げることを論点にあげた。北川博康委員(全国健康保険協会理事長)が「本人の希望であれば、価格差全額を患者負担とすることをぜひ大きな方向として、ご理解いただきたい」などの意見があがった。一方で、自己負担の引上げに際しては後発品の安定供給が前提とする必要性を指摘する声も相次いだ。OTC類似薬については保険給付範囲から除外することに反対する声があがる一方、選定療養の導入や償還率の変更などの方策をあげる声もあった。

◎選定療養 対象範囲拡大などの検討を求める声も

選定療養をめぐっては導入から1年が経過し、後発品の使用促進が進み、一定の効果があった。一方で、後発品の供給不安が続くなかで、長期収載品を調剤せざるを得ないケースがあり、医療現場に負担がかかっているとの指摘もある。

佐野雅宏委員(健康保険組合連合会会長代理)は、「今後、さらに後発品の使用を推進するためには、より積極的に選定療養を活用すべき。患者負担の影響等を踏まえつつ、負担額を拡大していくべきだ」と述べた。また、「選定療養の積極的な活用には、負担額だけでなく、対象範囲を拡大していく方法もある。今、選定療養が免除されているところの医療上の必要があると認められる場合、これについての厳格な精査等、課題を整理して、具体的な見直し案をお示しいただきたい」と述べた。横本美津子委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会長)も「選定療養導入後の状況を検証しつつ、今後、さらにこの仕組みを進めていくことを考えていく必要がある」との考えを示した。

ただ、自己負担の引上げに際しては、後発品の安定供給が大前提との意見も相次いだ。藤井隆太委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)も、「患者負担の引上げにあたっては、まず後発品の安定供給に向けた取り組みに着実に対応した上で、検討を進めていただきたい」と要望。北川委員は、「協会加入者のレセプトデータを分析したところ、選定療養対象の先発品を使っている方の約8割が”医療上必要”ということで、特別な料金の負担がない。このうち、8割が在庫状況を踏まえ、後発品提供が困難という理由がレセプトに記載されているというのが実態」と紹介。「当局においても、詳細に見ていただくとともに、後発品の供給不足解消に向けた着実な取り組みということをお願いしたい」と述べた。

伊奈川秀和委員(国際医療福祉大医療福祉学部教授)は、「医療上の必要性、あるいは、納得感で考えていくしかないのではないか」との考えを示した。

◎OTC類似薬 保険給付から除外に反対の声 用法用量、効能効果、投与経路・剤形に違い

OTC類似薬の保険給付のあり方についても俎上に上げた。事務局は医療用医薬品と有効成分が一致していても、用法・用量、効能・効果、投与経路・剤形などに違いがあると実例を交えながら示した。OTC類似薬を保険給付から除外することに反対する声があがる一方、選定療養を導入するなどの方策を求める声があがった。

林鉄兵委員(日本労働組合総連合会副事務局長)は、「OTC類似薬だからといって、単純に保険適用から外すということは難しいと受け止めている」と指摘。「子供や慢性疾患を抱えている方、低所得の方の患者負担などに配慮しようと思えば、非常に複雑な仕組みになってしまう。給付範囲を縮小することで、子育て世代をはじめ、現役世代に負担が増すことになれば、国民や患者に理解、納得を得られない」と述べ、給付範囲の縮小そのものに反対の姿勢を示した。

城守国斗委員(日本医師会常任理事)も、「軽い症状だと自己診断で、受診を控えた結果、重篤な疾患の早期発見、早期治療の機会を失うということも、否めない。骨太に記載の適切な医療機関への受診を担保するという趣旨にも合わない。保険給付から適用を除外するということであれば、様々な問題が発生するので、見直しということには我々としては、反対をせざるを得ない」と述べた。

藤井委員は、「保険制度の持続可能性を確保することが重要だが、OTC類似薬を単に保険給付から除外することや、処方を取りやめるだけでは、セルメディケーションの達成にはつらつながらないのではないか。かかりつけ医や薬剤師による適切な指導体制の構築、あるいはOTC医薬品、特にスイッチOTCの購入履歴を含めた薬歴の一元管理、そして、国民の意識啓発など、環境整備をセットで検討すべき」との考えを示した。その上で、「保険給付のあり方を見直すのであれば、お子さんや慢性疾患を抱える方への配慮、消費者の安全確保を念頭に、まずはリスクの低い薬剤から段階的に見直していくというアプローチが求められるのではないか。見直しの結果、かえって高額な薬剤が処方され、結果として、保険財政の負担が増大するという懸念もある。こうした点も含め、丁寧な検討を強くお願いしたい」と述べた。

一方、北川委員は、「OTC類似薬の保険給付については、大きな方向性としては、ぜひ保険適用からの除外というものを検討するということを進めていただきたい」と要望した。そのためには薬局、薬剤師の果たす役割が重要との考えを表明。「薬局で、“これは病院に行った方がいいですよ”という一言のアドバイスが受けられるような、まずは、薬剤師さんに相談するというようなことも、トータルでの医療費の適正化という点には、大きな力になるのではないか」との見方を示した。佐野委員は、「子供や慢性疾患を抱えている方、低所得の方に対する配慮は当然必要だが、用法用量、また効能効果等の違いを踏まえつつ、OTCで代替可能なものはできるだけ広い範囲を対象として選定療養で追加の自己負担を求める方法、償還率を変える等の方法についても具体的な検討を進めていただきたい」と述べた。

渡邊大記委員(日本薬剤師会副会長)は、「単一の成分で、同じ適応傷病名を持っているOTCがある医療用医薬品を交付する場合の保険給付のあり方をどうするか、ということに少し絞って協議をしていく必要がある」と指摘した。

島弘志委員(日本病院会副会長)は、「入院に関しても必要な薬をOTC化してしまったら、院内で処方する分はどうするのかという問題が現状出てくる。現実患者さんを診療するに際して、こういう問題もクリアしていかないといけない」と問題提起した。

◎バイオシミラーの使用促進 選定療養導入、一般名処方、医師・薬剤師の連携体制評価など求める

このほか、バイオシミラーの使用促進に向けた環境整備も論点となった。選定療養の導入に加え、一般名処方の導入や、医師と薬剤師の連携を評価する加算の新設など、制度的な後押しを求める声があがった。

北川委員は、「さらなる使用促進という観点から、バイオシミラーのある先行バイオ医薬品の選定療養制度の導入というのも、ぜひ検討を進めていただきたい。また、一般名処方を可能とすることや、診療報酬上の加算要件の見直しなど、医療機関がバイオシミラーを使用する環境整備ということも、ぜひ進めていただきたい」と述べた。佐野委員も、「置換えを促していくとともに、バイオシミラーへの置換えが一定程度進んでいる先行バイオ医薬品については選定療養の対象とするなど、推進を図るべき」と述べた。

渡辺委員は、「処方を変更する時点や新規処方する時点で、医師と薬剤師が連携しながら、在庫の状況を準備した上で当該医薬剤を処方していただくなど、連携しながらでないと、なかなか使えない。進められるだけの一定の体制評価という部分もないと、なかなかしにくいのかもしれない」と診療報酬上の体制評価を求めた。島委員は、「医療施設の経営が非常に悪化しているのもあり、バイオシミラーを使おうと先生方の意識も少し変わってきているのは事実だろうと思う。実際、長期収載品と同じように、一般名称法ができるようになると、薬剤の変更もセットで考えられると思うが、バイオシミラーに関しては先行品と似て非なるものなので、この辺の制度化をきちんと促進していかないと、バイオシミラーの利用促進にはつながらないのではないか」と述べた。

一方、バイオシミラーの選定療養の導入については、林委員が「後発医薬品と違って選定療養の活用という段階ではない。置き換え状況の差について、より詳細に分析した上で、議論を進めていく必要がある」と慎重な姿勢をみせた。
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