キョーリン製薬ホールディングスの萩原豊社長は11月8日、東京都内で開催した2020年3月期（19年度）第２四半期（４～9月）の決算説明会で、感染症領域において予防・診断・治療の一貫した事業モデルの確立を目指すと表明した。「3つのトライアングルを抑えることが、パンデミックやAMR対策のひとつの解につながる」と述べた。このうち治療については、9月に承認を取得した自社創製のキノロン系合成抗菌薬・ラスビック錠や、10月に承認申請したキノロン系合成抗菌剤の注射薬・KRP-AM1977Yを主軸に据えて取り組む姿勢をみせた。

ラスビック錠は、追加の非臨床試験を求められるなどしたため、発売が当初の計画よりも遅れている。杏林製薬の荻原茂社長は、「耐性菌の問題があるなかで、呼吸器耳鼻科領域の疾患に対し最適な抗菌剤は何かという視点に立って開発した。市中肺炎や慢性副鼻腔炎の患者に適切に治療効果を期待できる薬剤だと思う」と述べ、感染症治療への貢献とともに、今後の業績への貢献に期待感を示した。KRP-AM1977Yでは誤嚥性肺炎の適応取得を目指す。キョーリン製薬HDの萩原社長は、「取得できれば大きな社会貢献ができる」と意気込んだ。

このほか事業モデルの柱となる診断や予防領域では、超高速遺伝子定量装置・GeneSoCを11月に新発売したことや、環境除菌・洗浄剤のルビスタの存在をあげた。

■デザレックス供給再開、ラスビック承認取得に「問題は解決した。どう挽回するか」

19年度上期の医療用医薬品事業の売上は前年同期比4.4％減の455億500万円。主力製品の喘息薬フルティフォームの伸長や、18年11月に発売した過活動膀胱治療薬・ベオーバ、MSDから18年8月に販売を引き継いだナゾネックス点鼻液が売り上げに寄与したほか、後発品では、モメタゾン点鼻液AGが8月に発売し、売り上げを押し上げた。

一方、抗アレルギー薬・デザレックスが19年1月から供給を一時停止した影響が大きく、医薬品事業全体として減収となった。医薬品事業全体の当初計画にも36億円届かなかった。デザレックスに加え、ラスビックの承認取得・発売時期のずれ込みも影響した。

キョーリン製薬HDの萩原社長は業績について、「ふがいない結果となってしまった」と振り返った。一方で、デザレックスが11月18日から供給を再開することや、ラスビックの承認を取得したことを踏まえ、「問題はすでに解決した。どう挽回していくかが重要だ」と強調した。

通期業績予想は、医療用医薬品事業は売上1034億円（4.1％減）を目指す。連結の営業利益は65億円（27.6％減）を計画。新薬群の売上目標は、フルティフォームが141億円、デザレックスが50億円、ナゾネックスが62億－－。デザレックスは期初計画から30億円減とした。

フルティフォームでは、ぜんそく治療のファーストライン薬としてのポジションの確立を目指す。上期の売上シェアは0.7ポイント、数量シェアで1.1％ポイント上昇し、上期の売上高は67億円（10.3％増）だった。「まだまだ伸びていける薬剤」（キョーリン製薬HD萩原社長）として、中枢から末梢気道まで肺全体の薬剤分布が期待できるという特長の一層の市場浸透に取り組む。

ナゾネックスは、オーソライズドジェネリック（AG）を8月に発売。耳鼻科を中心に他の薬剤とともに総合的な情報提供活動を行い、相乗効果を発揮したい考え。

このほかベオーバの投薬期間制限が12月に解除されることから、納入件数と処方例数の拡大を目指す。上期売上は6億円だが、下期に22億円の売上げを計画し、通期で28億円を目指す。

【連結実績（前年同期比）19年度通期予想（前年同期比）】
売上高　482億9900万円（4.1％減）1094億円（3.7％減）
営業利益　7億8300万円（72.5％減）65億円（27.6％減）
親会社帰属純利益　8億3400万円（62.4％減）54億円（21.4％減）

【主要製品売上高（前年同期実績）19年度通期予想、億円】
フィルティフォーム　67（61）141
デザレックス　０（28）50
キプレス（成人製剤）　24（29）47
キプレス（小児製剤）　30（33）63
ナゾネックス　27（13）62
ウリトス　30（35）59
ベオーバ　6（－）28
ペンタサ　68（71）127
ムコダイン　28（31）61
ジェネリック計322(293)310