
ダイトの松森浩士代表取締役社長兼CEOは本誌取材に応じ、杏林製薬の後発品事業の承継に基本合意したことについて、「北陸経済圏の中で、地域振興、地域産業の活性化を担う観点からも、杏林製薬グループは非常に相性の良いパートナーであると考え、話を進めてきた」と語った。地の利を生かし、キョーリン製薬グループ工場の高岡工場など製造所を統合することで、生産能力が増強されるだけでなく、研究開発能力も高まるメリットも強調する。買収に当たり、ダイトは2社と手を組み、“医薬品共創機構”を立ち上げることも注目を集めた。「今後の様々な展開を見据え、異業種のパートナーを含めたあり方を考えた」と話す松森社長に、狙いと今後の展望を聞いた。(望月 英梨)
ダイトの松森浩士代表取締役社長兼CEOのインタビューの一問一答は、Monthlyミクス6月号に掲載しています。(会員限定、記事はこちら)
◎既存の工場を効率よく回すだけでは、持続的な成長は望めない
ダイトは4月24日、他2社と設立予定の共同出資会社「医薬品共創機構」が杏林製薬の後発品事業の承継について基本合意したことを発表した。松森社長は、「ダイトの本業である“研究開発型のCMO”強化の一環として、川上の製造所の統合を行おうと考えた」と話す。
同社は、中期経営計画「DTP2027」を踏まえ、ポートフォリオマネジメント、ライフサイクルマネジメントを強化し、S&OP会議(需給調整会議)を実施しForecast Accuracyの精度を高めるなど、「既存ビジネスの効率化に向けて様々な手を打ってきた」という。Meiji Seika ファルマなどと共同で進める新・コンソーシアム構想についてもこの一環に位置付け、「一定の時間はかかっているが、高付加価値のもの、ボリュームの大きいものに置き換えることは段階的に進んでおり、既存の工場の生産効率が進んでいる」と話す。
一方で、「既存の工場を効率よく回すだけでは、持続的な成長は望めない」と松森社長は居長する。同社は10億錠を生産する第十製剤棟のフル稼働に向けて進めている段階にある。「建築材料費が高騰する中で、人材リソースも限られ、時間もかかる。今の薬価制度の中で、設備投資を行い、新たな製剤工場を建築するのは難しい。我々も自前で強化できない場合は、効率的なM&Aを行おうということで、ここ2年間様々な検討をしてきた」と話す。杏林製薬が新薬に集中する方針を示す中で、「キョーリンリメディオの生産機能を担う連結子会社であるキョーリン製薬グループ工場の高岡工場、井波工場は同じ富山県にあり、場所も近い。北陸経済圏の中で、地域振興、地域産業の活性化を担う観点からも、キョーリンリメディオは非常に相性の良いパートナーであると考え、話を進めてきた」という。
◎ダイトが過半を超えない最大出資者
ダイト1社で承継するのではなく、他2社と共同出資した“医薬品共創機構”を設立する形式を取ったことも注目を集めた。なお、医薬品共創機構はダイトが過半を超えない最大出資者だ。松森社長は、「今後の様々な展開を見据え、異業種のパートナーを含めたあり方を考えた際に、1社でM&Aを仕掛けるよりも、機能の異なる複数の会社に枠組みに入っていただき、バリューチェーンの上流を中心としたM&Aをしていくことがベストなオプションだと考え、この形に至った」と説明する。
新・コンソーシアム構想との関連については、「新・コンソーシアム構想と直接のつながりはない」として、あくまで同社の戦略に立脚したものであることを強調する。ただ、「新・コンソーシアム構想を通じ、中堅・中小のジェネリックメーカーなどが今後どういう事業形態が良いか喫緊の課題で、再編が必要だというムードができた中で起きた現象の一つ。そういう意味では、化学変化の最初に表に出たものだ」との見方を示す。
◎9月末に最終契約を予定 60億錠の生産能力に 稼働率や効率性向上を視野
承継は9月末に最終契約を予定しており、「これからデューデリジェンスを進めていく」という。シナジー効果としてまず見込むのが生産能力の増強だ。「承継が予定通り進めば、生産能力とキャパシティーが増強される。ダイトは全面稼働を進める第十製剤棟をあわせて40億錠の生産能力がある。キョーリン製薬グループ工場の高岡工場は最大20億錠の生産能力がある大量少品種用の工場で、合わせて60億錠の生産能力を有することになる」と話す。
これにより、「新しい高岡工場の稼働率や効率性を向上させることも可能だ。キョーリンリメディオのプランを聞いたうえで戦略を立てる必要があると考えているが、それぞれ単独では引き受けることのできなかった受託案件も、役割分担しながら引き受けることが可能になると考えている。収益を上げられる状況になれば、当然、ダイトのビジネスとしても恩恵を受けることができる」とメリットを強調する。
◎研究面でのシナジーに期待も 「役割分担すれば、2倍の製品開発ができるのではないか」
「研究のシナジー効果」にも期待を寄せる。「キョーリンリメディオには、高い品質保証能力と非常に優秀な研究員と研究所がある。しかも、研究所も富山にあり、距離も近い。キョーリンリメディオは、生物学的同等性試験(BE試験)における血中濃度測定を含め、自前で試験ができるし、製剤技術も強い。共同開発を行っているが、非常にレベルが高いと感じていた。ダイトでポートフォリオマネジメントをしていても、最終的に課題となるのはリソースだ。新たなジェネリックの開発も役割分担すれば、2倍の製品開発ができるのではないかと期待している」と語った。このほか、原薬や包装材料などサプライチェーン面や品質保証の標準化にも期待感を示した。
屋号の統一については今後検討する方針。既収載品については、「屋号統一の結果、混乱するリスクもあるため、慎重に内容を検討したい」と話す。一方、新規品目については「開発段階から両社で取り組むので、ダイト屋号になるのか、新たな医薬品共創機構の屋号になるかは別として、統一屋号で出せるのではないかと思う。屋号が統一された医薬品を何社かで販売するなどの形も取れるかもしれない。まだ生産数量は十分ではないかもしれないが、戦略として取れる選択肢が増えるのではないか」と意欲をみせた。
◎雇用を守る「我々も同じ考えでそれを尊重したい」
雇用のあり方については、「まだ承継が完了していないが、杏林製薬も雇用を守るとおっしゃっており、我々も同じ考えでそれを尊重したい」と表明した。
松森社長は、「富山は、薬の産業で300年以上の歴史もある。ダイトは富山に本社を置く会社で、富山と北陸に貢献したい」と強調。「グループ会社などになったことを考えると、いずれも富山県の中で、車で20分ほどの距離。北陸新幹線で本社もつながっている。情報交換や有事の対応など、地の利のメリットは大きい。交通や人の行き来を考えても、北陸経済圏は製造所の統合などは手を組みやすい」と述べ、北陸経済圏の中で成長していく姿を描いた。