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MR1人あたり生産性 3億円超に3社 MR活動「プロジェクト重視」にシフト 本社からMRに直接指示も

公開日時 2022/07/04 04:52
ミクス編集部が製薬各社のMR1人当たり生産性を調べたところ、トップはJCRファーマで4億4100万円となった。生産性が3億円超の企業に、中外製薬、参天製薬があり、JCRファーマを含めて3社あった。参天製薬は6年連続、中外製薬は3年連続で3億円を上回った。2億円台は合計9社。このうちアステラス製薬は、当期売上高が前年度比9.5%減となったものの、早期退職者の募集でMR総数が約500人減り、1人当たり生産性は前年水準(前年比6000万円増)をキープした。一方でMR減少時代のMR活動について調べたところ、支店・営業所の廃止に伴い、プライマリケアを主体とする「地域・エリア重視型」のMR活動を見直し、本社からダイレクトに営業所課長や現場MRに指示出しできる「プロジェクト重視型」の専門・領域別MR活動にシフトさせている実態も明らかになった。

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ミクス編集部は製薬各社が公表している直近の国内医療用医薬品売上高と、本誌が集計したMR数調査結果(Monthlyミクス6月号掲載)を用いて、MR一人当たり生産性を試算した。生産性トップのJCRファーマは前回5位からランクアップした。売上高が前期比11.9%増収したことに加え、MR数が59人と少数であることが影響した。第2位は中外製薬と参天製薬で、ともに3億9900万円となった。

MR1人当たり生産性の上位10社のうち、MR数が1000人以上の企業は、中外製薬(2位・MR数1300人)、田辺三菱製薬(8位・同1300人)、アステラス製薬(9位・同1200人)、第一三共(10位・同2200人)の4社のみ。また、上位10社の中で、MR数をこの1年間で減らした企業は8社(参天製薬と第一三共は現状維持、エーザイは21人増)あり、自社のMR数を削減することでMR一人当たりの生産性向上に結びつけていることも分かった。

◎過去の「地域・エリア特化型」から専門MR主体の「プロジェクト特化型」にシフト

MR数は本誌Monthlyミクス6月号(ミクスOnline・有料会員向けデータ掲載)で詳報した通り、前年比6.6%減となり、いよいよMR総数が5万人を下回るタイミングが近づいている。MR数の減少トレンドと製薬各社のMR1人当たり生産性を分析したところ、製薬各社とも自社のポートフォリオ(特にスペシャリティ領域)を重視し、主力製品の上市タイミングおよび増量・維持期間(特許切れまでの期間)に必要なMR数を割り出して、最適化していることが分かった。これに伴って、製薬各社ともMRの配属地域の採用件数や処方医師数を確保する、いわゆる「地域・エリア特化型」の戦略から、各社が注力するプロダクトベース(製品ベース)ごとにMRを再編成し、製品戦略を練る本社の部隊とMR(営業マネージャーを含む)をダイレクトにつなぐ「プロジェクト特化型」にシフトさせている。加えて、この実効性を高めるため、近年は支店や営業所を廃止し、本社とMR間の意思疎通や意思決定の速さ、専門医やターゲット先の専門医療機関に対する漏れの無い双方向アプロ―チをデジタルで実現する試みも活発化していた。一方、本社機能の強化では、オンライン専任MRの配置、Web講演会や「MR君」のような3rd Partyの活用、本社スタッフを同席させたMRによるオンライン面談、医師等からの問い合わせに迅速に対応するコールセンターの強化などに注力していた。

◎アステラス製薬・安川社長CEO「本社の指示がダイレクトに届き、フィードバックできる」


製薬各社の新薬の立ち位置が生活習慣病薬から、難治がん、中枢神経、希少疾患などにシフトしたことで、MR活動そのものの役割も見直されている。アステラス製薬の安川健司社長CEOはメディアのグループ取材(6月29日・関連記事)の中で、「いまはグローバルで統一の戦略を立て、国別に味付けして国ごとの販売戦略に落とし込む。昔のMRにように、どの地域の担当ではなく、プロダクトで持つようになる。むしろ本社の指示がダイレクトに届いて、フィードバックできるようになる。PDCAサイクルがもっと早く回るようになった」と語っている。

◎武田薬品・古田JPBUプレジデント「どうすれば診断が進むかを考えサポートする活動」

一方、武田薬品の古田未来乃・ジャパンファーマビジネスユニット(JPBU)プレジデントもメディア取材(4月19日・関連記事)に対し、「10年、20年前の(糖尿病や高血圧など)注力領域は診断や治療のアルゴリズムが確立されていた。MRはこの中で製品のポテンシャルを追い続けた。その意味でメインのステークホルダーは医師や医療従事者のみで、MRが医師に製品情報を届けることがメインだった」と指摘。これからのタケダは、「例えば遺伝性血管性浮腫(HAE)の診断率は約20%で低い。確定診断まで13~15年かかる。これをいかに縮められるかだ」と強調。患者団体やKOL(キーオピニオンリーダー)に限らず、「どうすれば診断が進むかを考えサポートするという活動に注力することがタケダとしての価値観の発揮だ」と語ってくれた。

◎医療従事者を通じ、患者が抱く不安や悩みにも応えながら「患者中心の医療」を実現

生活習慣病時代のようにMRを競って増やし、日本全国の診療所や病院をMRが隈なく訪問して、コール数を稼ぐ時代は終わった。これからは、製薬各社の革新的新薬の適正使用情報を専門医や専門医療機関に迅速に届け、医師や薬剤師のニーズを汲みながら、安心して処方できる環境を整える役割をMRが担う。一方で、医療従事者を通じ、患者が抱く不安や悩みにも応えながら、患者中心の医療を実現するデジタルソシューションを医療者と共同で開発するための橋渡し役も担うことになるだろう。MR数は今後も減り続ける。企業側もMRの生産性向上に向けた施策をこれからも取り続けることになるが、同時にMR活動を最適化するためのデジタル活用は避けて通ることはできない。逆にMR側からどう活用するかを本社に提案し、自らが旗振り役となって次世代MR活動を実践する時代が目前に迫っている。

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