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財務省・大沢主計官 地域フォーミュラリで「自発的な適正化に期待」 薬剤費の適正化「より大きな課題」

公開日時 2022/10/31 04:52
財務省主計局の大沢元一主計官(厚生労働係、社会保障総括担当)は10月30日、都内で開催された第1回日本フォーミュラリ学会学術総会で講演し、「地域フォーミュラリのような自発的な適正化の取り組みが広がると、より薬剤費の適正化という意味では効果的だ。制度面だけで適正化するのではなく、適正化が進むものと期待している」と述べた。後期高齢者がピークを迎えるなかで、薬剤費について「適正化がより大きな課題」との認識を表明し、市場拡大再算定などの制度面だけではない、地域での自発的な取り組みに期待感を示した。「(医療の)質の向上とそれからその費用の適正化を車の両輪として追及していかないといけないと考えている」との考えも強調した。

「まさに我が国経済、社会の最大の問題は少子高齢化だ」。大沢主計官は、働き手が減ることで、経済成長の圧縮要因になるとともに、社会保障などの費用の支え手が減り、サービスの受け手が増える。こうした日本の構造上の課題に危機感を露わにし、「いまの財政状況はこうした社会構造の結果」との見解を示した。バブル期以降、経済の低成長により税収が増えない一方で、高齢化による社会保障費増大が増大。新型コロナによる財政出動で財政はさらに悪化している。大沢主計官は、全世界では数年に1度は感染症による緊急事態宣言が出ていることも紹介し、「これからもコロナのようなものは発生し得るという前提で制度面、それから財政面の対応をしていかないといけない」とも述べた。

◎薬剤費「後期高齢者人口増えるなかで適正化がより大きな課題」


年金にはマクロ経済スライドが導入されているが、医療・介護にはこうした経済状況に応じた自動調整機能は導入されておらず、「医療・介護については、いまから2040年にかけてGDP比がかなり増えてしまう」と強調した。特に、後期高齢者人口がピークを迎える2022年度から25年度の3年間について、「非常に大事な時期」とし、「放っておくと、75歳以上の医療費の負担が支える若者の皆さんの保険料負担が、非常に高まってしまう時期だ」と危機感を示した。

こうしたなかで、増加を続ける薬剤費については、「今後後期高齢者の人口が増えるなかで、適正化がより大きな課題になる」との認識を示した。「単価が高額な薬品で最近、高額な医薬品というのが非常に増えている。ここをどうするかが大変な課題で、このなかで市場拡大再算定など色々な工夫をしている」と説明した。そのうえで、「こうした制度面の取り組みも必要だが、地域フォーミュラリのような自発的な適正化の取り組みが広がると、より薬剤費の適正化という意味では効果的だ。制度面だけで適正化するのではなく、適正化が進むものと期待している」と述べた。

また、病床数が多いものの、1床当たりの医師・看護師数が少なく医療密度が低い日本の医療における課題を指摘。かかりつけ医の普及の重要性を強調したうえで、地域フォーミュラリの役割を強調。「かかりつけ医を増やしていかないといけない中で専門外の診療をする機会も増えてくる。そのなかで、地域においてオススメの処方があるとかかりつけ医にとっては非常に便利なものになるのではないかと期待している」と述べた。政府方針として、マイナンバーカードと健康保険証の一体化が進められることにも触れ、「メリットは患者の過去の情報を医師が容易に見られるようになる。フォーミュラリとの関係で申し上げれば、患者さんへの投薬の方針が医師にとって判断しやすくなる」との考えも示した。

◎日本OTC協会・磯部理事長「自助、共助、公助のバランスとれた制度設計必要では」


フロアから、日本OTC医薬品協会の磯部総一郎理事長が、「日本の医療全体は自助の政策が弱いのでは」と指摘した。「日本の医療が国民皆保険の共助を作り、コロナで公助を整備してきた。日本の医療はある意味、国が提供してくれる。国民の負担感が少ない。この結果、
私も驚いたが、日本のヘルスリテラシーは東南アジアよりも低く、世界最低レベルにある」と指摘した。日本国民は病院や薬局にかかればいいとの意識が強く、自身で健康管理をする意識が薄いとした。磯部理事長は、「ヘルスリテラシーをきちっと上げて、まずは自分の健康は自分で守る。それが難しいときに、医師や薬剤師のコンサルテーションを受ける。こうした自助、共助、公助がまずバランスをとった制度設計をしていくべきではないか。公助が多すぎるという話ではなくて、色々バランスを取って考えていくのが日本の医療として大事なのではないか」との見解を表明した。

大沢主計官は、「医療機関と薬局、地域における連携がここ10年くらいの医療の世界の政策のキーワードになっている。連携と言っても、他職種の連携は実際の中身があんまり伴わない場合も多いのではないかと思う。そのなかで、フォーミュラリは連携の中身を与えるような材料だと思うので大変期待している」と応じた。大沢主計官は2010年度、12年度の診療報酬改定に携わった。新薬創出等加算が試行的に導入された10年度を振り返り、「薬の世界で、全体総論の適正化とイノベーションの推進をどうしても両立させていかないといけない。それまでずっと財政論理ばっかりだったが、もっと中身でイノベーションを推進するためにどうしたらいいかという議論をさせていただいた」と振り返った。

◎第4期医療費適正化計画「前向きに議論に参加」 大沢主計官


地域フォーミュラリの導入に向けて、日本フォーミュラリ学会の今井博久理事長は「全国津々浦々、北海道から沖縄まで広めていくには診療報酬点数による評価が不可欠と私自身は認識している」との考えを強調した。後発品80%時代となった背景も診療報酬があると強調。①医師の処方箋交付に対して、②処方実績に応じて地域単位で償還する方式、③体制加算のような指標-のほか、後発品普及策を廃止し、地域フォーミュラリと合体させたシンプルな体系に抜本的に改革することなどを提案した。

会場からは、「(24年度からスタートする)第4期医療費適正化計画のなかにフォーミュラリを入れる、ジェネリックの新たなロードマップに入れる」ことなどを求める声があがった。大沢主計官は、「厚労省で医療費適正化計画の次期改定に向けて議論を進めている。私も議論を見守りつつ意見を申し上げる。前向きに議論に参画したい」と述べた。なお、財務省主計局は今年4月の財政制度等審議会財政制度分科会で、「地域フォーミュラリの策定」について、都道府県医療費適正化計画の目標値に盛り込むことを提案している。
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