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財政審が建議 26年度診療報酬改定「適正化」 病院と診療所で経営状況や費用構造に差異 不断の改革を

公開日時 2025/05/28 07:00
財務省の財政制度等審議会(十倉雅和会長・住友化学取締役相談役)は5月27日、建議を取りまとめ、東国幹政務官に手渡した。2026年度診療報酬改定については、「国民皆保険を堅持するためにも、病院と診療所では経営状況や費用構造等に差異があることに配意しつつ、全体として診療報酬の適正化を図ることが必要」と提言した。診療報酬・介護報酬の1%引上げで現役世代等の保険料負担は3000億円程度増加するとして、「さらなる給付費用の増加は現役世代等の保険料負担の増加に直結することに留意する必要がある」と指摘。「不断の制度改革」を通じて現役世代の保険料負担を最大限抑制することが重要としている。(写真提供:財務省)

◎診療報酬・介護報酬1%の引上げで保険料負担は3000億円程度増加

診療報酬をめぐっては、医療関連団体が賃金・物価動向を踏まえた診療報酬への適切な対応を求めている。建議では、「医療・介護の給付費用は、この20 年余りでおおむね倍増しており、経済成長率を大幅に上回って増加している」と指摘。「仮に診療報酬・介護報酬を1%引き上げるとすると、利用者負担を含む医療・介護費用全体から概算すれば、現役世代等の保険料負担は3000 億円程度増加することとなる」と説明。「さらなる給付費用の増加は現役世代等の保険料負担の増加に直結することに留意する必要がある」とした。

特に医療費の総額は経済の実態の伸びを上回る形で継続的に伸びてきていると説明。「足もと、経済全体が賃上げの方向にシフトしていく中で、経済・物価動向に合わせて診療報酬を伸ばすよう求める声もあるが、こうした過去の乖離が現役世代を中心とする国民全体の保険料率の上昇をもたらしてきたことを十分に踏まえ、引き続き不断に制度改革を積み上げていく必要がある」と釘を刺した。少子化対策の財源確保も求められるなかで、「全世代型社会保障の構築に向けた改革工程に基づき、医療・介護の給付と負担のバランスの適正化を通じて、現役世代の保険料負担を最大限抑制することが重要」と指摘した。

◎病院と無床診療所経営医療法人の利益率に差 「類型ごとの精緻な分析」求める

26年度診療報酬改定をめぐっては、「病院と診療所では経営状況や費用構造等が異なることを踏まえたメリハリある改定の実施」を求めた。23年度の医療機関経営状況については、病院のみを経営する医療法人の利益率が2.1%だったのに対し、無床診療所のみを経営する医療法人の利益率は8.6%で、「中小企業の全産業平均である3.6%よりも高い水準」と指摘した。26年度診療報酬改定においては、「医療経済実態調査等のデータを病院・診療所等それぞれの類型ごとに精緻に分析」することを求め、「窓口負担・保険料負担・公費負担で支えられている医療保険制度を通じて医療機関にもたらされる利益が、国民・患者の視点から見て妥当なものかどうかについても検討しつつ、国民負担の軽減と必要な医療保障のバランスを図りながら、メリハリある対応を検討する必要」があるとしている。

◎かかりつけ医機能の抜本的見直しを 地域包括診療料、外来管理加算、機能強化加算

25年4月から、かかりつけ医機能報告制度がスタートするなかで、「かかりつけ医機能の報酬上での評価について改めて精査・整理の上で、抜本的な見直しを図るべき」と提言した。「特に外来診療に関し、初診・再診料に係る各種加算や“日常的な健康管理”を評価する各報酬項目を含め、地域の患者を“治し、支える”役割を的確に評価する報酬体系とすべき」とした。

具体的には、かかりつけ医機能を評価する代表的な点数である、地域包括診療料・加算や認知症地域包括診療料・加算について必要な体制整備が困難との理由で、算定実績が低調だと指摘。「例えば、両者を統合した上で、個々の医療機関が担うかかりつけ医機能をよりきめ細かに評価できる報酬体系に再構築すべきではないか」と提案した。外来管理加算については、「例えば再診料に包括化した上で、それが果たしてきた役割・機能について、かかりつけ医機能を評価する他の管理料・加算との間で整理・統合すべきではないか」、機能強化加算については、「“初診時におけるかかりつけ医機能の発揮”を的確に評価する形となっているかどうかを改めて検証した上で、その廃止を含め抜本的な見直しを図るべきではないか」と提案している。

◎生活習慣病の疾病管理「診療GLに沿うよう算定要件の厳格化を」 月1回より長く

生活習慣病患者の疾病管理について、病状が安定してきた患者に対するフォローアップは、「一般的な診療ガイドラインに沿う形で報酬の算定要件を厳格化するべき」と指摘。「例えば、血圧がコントロールされている場合の生活習慣病管理料の算定について、1か月に1回よりも長くする等の対応を検討すべき」としている。

◎外来診療所の地域偏在是正 特定過剰サービス”の減算を

実効性ある医師偏在対策のためには、「診療報酬上のディスインセンティブ措置が不可欠であり、適切なアウトカム指標導入とセットで、付加価値の低い“特定過剰サービス”に対する減算措置を導入すべき」と提案した。特定過剰サービスとは、客観的な基準に照らして、ある地域の特定の診療科の医療サービスが過剰であると判断される場合。ただ、一律に減算するわけではなく、アウトカム指標を設定し、良好と判定された場合には減算措置の対象から除外することも提案した。なお、「かかりつけ医機能やレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)のデータをアウトカム指標の設定・評価に活用することも考えられる」とした。

特定過剰サービス単位ごとに見た医療費について、一定の基準額を超過した場合には、「アウトカム指標を満たさない医療機関を中心に、超過額の保険償還分を精算するといった仕組みをあわせて導入することも検討すべき」とした。

◎処方料、処方箋料 院内処との関係で適正な水準を検討すべき 「政策的意義を含め、再考の余地」

処方料、処方箋料についても言及。目的とした医薬分業が推進されてきた一方で、門前薬局などが増えている状況にあると指摘。「政策的意義を含め、再考の余地があるのではないか。具体的には、医薬分業の進捗状況を踏まえ、処方料(院内処方)の水準との関係で、処方箋料(院外処方)の適正な水準を検討すべき」とした。

リフィル処方については、「症状が安定し長期間の処方が可能なケースについては、リフィル処方とかかりつけ薬剤師による服薬状況等の確認を組み合わせることにより、通院負担を軽減させ、患者の利便性を向上させることが可能と考えられる」と表明。リフィル処方を短期的に強力に推進していく観点から、「早期に的確なKPI を設定するとともに、医療DX を推進しつつ、リフィル処方の実績がリアルタイムで確認できるような仕組みを設けるべき」とした。また、特定の慢性疾患などにおいて、継続的な状況確認が必要な場合でも、「薬剤師との連携によりリフィル処方が活用されるよう、診療報酬上の加減算も含めた措置を検討すべき」と提案した。

◎費用対効果評価 対処療法に追加的有用性ない薬は“保険適用せず”を提案

建議では費用対効果評価についての積極的な活用の必要性も指摘した。財政審は、日本では承認された医薬品は、「半ば無条件での薬価基準への収載」されると説明。「財政影響は予算統制の枠外となっており、また、一旦保険収載された医薬品に対しては、その後の費用対効果評価の適用も極めて限定的」と問題意識を露わにした。

例えば、①比較薬と効果が同等の場合に、必要な医療資源が過大であれば、薬価を比較薬と同額以下とし、反対に、過小であれば同額以上とすることや、②「対処療養や無治療との比較で追加的有用性がない薬」には保険を適用しないこと―を提案し、「被保険者としての国民の賛同を得られるのではないか」と言及した。また、「対象とする薬剤の範囲や、価格調整の対象範囲を拡大するとともに、費用対効果評価の結果を保険償還の可否の判断に用いることも検討すべき」と提案した。

類似薬効比較方式Ⅱについて、「新規性に乏しい新薬をどのように保険収載すべきか、どのように薬価を算定すべきかといった観点から、費用対効果評価の活用方策も含め、抜本的かつ具体的な検討を早急に進めるべき」と主張した。

建議では、現役世代の保険料負担軽減が重視されるなかで、「薬価制度上の評価のメリハリ付けを一層推進することにより、革新的新薬を開発・製造する製薬企業の成長をより一層促す一方、革新性の低い新薬や長期収載品に依存する企業の再編を促していくことに加えて、費用対効果などの経済性や患者利益を考慮した保険診療が効率的に行われる仕組みを構築する」ことで、「現役世代の保険料負担軽減を含め、国民皆保険制度の持続可能性を確保するとともに、創薬イノベーションの推進を図っていくべき」としている。

◎調剤報酬改定 “対人業務”に一層シフトを 「調剤技術料・薬学管理料の見直しを」

調剤報酬改定については、「引き続き、多剤・重複投薬の防止や残薬の解消、かかりつけ薬剤師機能の発揮といった観点から、対人業務を重点的に評価する報酬体系への一層のシフトを進めていくべき」と表明。「調剤技術料・薬学管理料に係る報酬体系の見直しを行うべきではないか。その際、かかりつけ薬剤師指導料や服用薬剤調整支援料といった、薬学管理料の中でも、真に対人業務を評価する項目への評価の重点化を進めるべき」と提案した。

また、調剤基本料について、「集中率が高い薬局は、備蓄している医薬品の品目数が少ない傾向にあり、その点においては集中率の低い薬局に比べ低コスト」と説明。「経営の実態を踏まえながら、処方箋集中率が高い薬局等における調剤基本料1の適用範囲を縮小すべき」と提案している。
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