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【有識者検討会 1月13日 議論その1 ベンチャー支援等に関する有識者、関係企業からのヒアリング】

公開日時 2023/01/16 06:24
厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の7回目の会合が1月13日に開催された。この日は、ベンチャー支援等に関する有識者、関係企業等からのヒアリングを行った後にディスカッションを行った。本誌は「議論その1」では、有識者、関係企業からのヒアリングの内容について発言要旨を公開する。

遠藤座長:それでは議題に入る。きょうは、ベンチャー支援等に関する有識者と関係団体等からのヒアリングを行う。有識者、あるいは業界の皆さまから順番にお話をいただき、その後まとめて質疑応答を行い、ディスカッションしたい。それでは最初に有識者会議のメンバーでもある芦田構成員から説明をいただきたい。

◎芦田構成員(INCJ執行役員):遠藤座長ありがとうございます。本日こちら側(ヒアリング)の席でお話をさせていただく。私は現在INCJに所属している。それ以前の2004年から国内のライフサイエンスおよびヘルスケアのスタートアップの支援に関わってきた。本日はその経験に基づき「日本の創薬スタートアップの現状と私が考える課題」についてお話をさせていただきたい。

では、スライドお願いします。このスライドは、本日のテーマでもある革新的な医薬品の迅速な導入に係るステークホルダーとその関係を表したもの。新薬の開発は国内に拠点を持内資、外資の製薬企業に加えて創薬スタートアップ、そして海外の新興バイオ製薬企業が主体となる。前回の検討会でエマージング・バイオファーマと述べていたものを、本日は新興バイオ製薬企業と呼ぶことにいたします。

革新的なシーズの多くはアカデミアから生み出されている。そしてそれらを支えているのが政府および政府機関、そして金融機関であると考えている。本日はこのスライドで黄色の楕円で囲った二つのステークホルダー(創薬スタートアップ、海外の新興バイオ製薬企業)について話をする。まず日本の創薬スタートアップの現状と課題および課題解決に向けた私の考えを述べる。その後に海外新興バイオ製薬企業の開発品の日本への導入における課題について私の考えを述べたいと思う。次のスライドお願いします。

まず日本の創薬スタートアップの現状についてだ。ここに示したように本日は4つの観点から話をする。まず1点目だが、日本の創薬スタートアップが開発をして市場に上市された新薬にはどのようなものがどのくらいあるのかについて事例を示す。

創薬スタートアップの役割の一つとしてアセットの創出や初期開発を行って、製薬企業へ導出する、ライセンスアウトするということがある。ここで“アセット”と申し上げたものは開発中の新薬候補のことでパイプラインと呼ぶ方が多い。本日はアセットと呼ばせていただく。

次に2点目として、日本の創薬スタートアップと製薬企業とのアライアンスの状況について示す。アライアンスの一つとしてM&Aがある。創薬スタートアップに投資をするベンチャーキャピタルにとっては投資回収、いわゆるExitの一つの方法となる。3点目は、日本の製薬スタートアップが買収された事例を示す。最後の4点目は創薬スタートアップの起業価値について、東京証券取引所に上場している創薬スタートアップの時価総額の全体像について示す。

次のスライドお願いします。このスライドは、東京証券取引所に上場している創薬スタートアップがアセットの創出、または臨床開発を行って承認された医薬品および再生医療等製品を調べた結果だ。漏れがあるかもしれないが、傾向は示せているのではないかと思っている。ここに示した医薬品および再生医療等製品は15品目。医薬品の開発が長期間にわたりしかもリスクが高いというものの、残念ながら数が少ないというふうに考えている。

また、上市に至った医薬品および再生医療等製品を見ても、いわゆるモダリティの革新性やアンメッドメディカルニーズの高い難病や希少疾患への革新的治療方法の提供というふうに読めるものは数が限られているのではないかと考えている。

次のスライドお願いします。次に創薬スタートアップと製薬企業のアライアンスについて話す。このスライドは、世界と日本の創薬に関わる企業間のアライアンスの件数の状況を示したものだ。右のグラフで示しているように日本の創薬スタートアップが製薬企業などに開発中の化合物などを導出した件数は、年間30件ほど。増加傾向にあると言える。しかしながら左のグラフにあるように世界では年間2000件ほどの契約が結ばれており、世界と比較すると、数はまだ少ないと言える。

次のスライドお願いします。それでは、次にどのようなアライアンス契約が行われているかについて、代表的な事例を示す。このスライドは、日本の創薬スタートアップが製薬企業などと結んだアライアンス契約のうち、契約金額が公表されており、その契約金額が大きい大型契約のいくつかを例として示したものだ。なお、契約金額には、契約時に支払われる一時金に加えて、開発の進捗と上市後の販売進捗に応じた、いわゆるマイルストーン・ペイメントを加えた総額を示している。

上の表が創薬基盤技術の技術ライセンス契約、下の表が開発中の化合物や再生医療等製品の導出ライセンス契約だ。これらを見ると創薬基盤技術の技術ライセンス契約において、大型契約がみられる。その一方、アセットの導出契約を見ると、臨床ステージに入っているアセットの導出で大型契約のものは少ないように思われる。これらのことからユニークな創薬基盤技術を持った創薬スタートアップがあるものの、創薬スタートアップによる化合物等の臨床開発が、製薬企業に導入する段階にまで進んでいるようなものは多くはないという見方ができるかと思う。また大型契約は外資系製薬企業との契約に多いと見ている。

次のスライドをお願いします。このスライドは日本の創薬スタートアップのM&Aの主な事例を示したものだ。公表されているものを調べたが、若干の漏れがあるかもしれない。しかしご覧いただけるように、創薬スタートアップが企業に買収された事例は日本においては非常に数が少ないということがお分かりいただけると思う。

次のスライドお願いします。それでは次にスタートアップの企業価値についてみたい。このスライドは、東京証券取引所に現在上場している創薬スタートアップ39社の時価総額の分布を示したものだ。時価総額の平均値は300億円を超えているが、分布としては300億円以下の企業が大半を占め、中央値は108億円だった。これどう見るかですが、創薬スタートアップのほとんどが研究開発を行っている段階にあり、赤字企業だ。従って、事業の継続には資金調達が必要になる。しかし、証券市場での資金調達は、その企業の時価総額の大きさに影響を受けるので、そのように考えると、研究開発に必要な資金量に対し、多くの企業が十分な企業価値は残念ながらないというふうに考えられる。

次のスライドお願いします。ここまで日本の創薬スタートアップの現状についてお話してきた。残念ながら日本の創薬スタートアップが創薬エコシステムの中で存在感を示すという状況にはなってないということがあるかと思う。

ここからは、その要因についていくつかの考察を試みたい。ヒト、モノ、カネのうち、ここでは創薬シーズと言います。創薬シーズは先ほど述べた通りです。このスライドでは資金について示したい。日本とアメリカのベンチャーキャピタル投資額の推移です。統計の主体が異なりますし、いずれも創薬以外の分野も含んでおります。ただ、傾向は見てとれるかなと思う。なお左側の図の日本の2021年の値が大きくなっている。これはバイオテクノロジーを用いた新素材分野の開発のスタートアップで、144億円を調達した会社と97億円調達した会社があったため、この年、急に上がっている。それらを考慮すると、日本とアメリカでは、ベンチャーキャピタル投資額の総額はもとより、スタートアップ1社あたりの資金調達額に大きな差があると思う。

次のスライドお願いします。次は人材についてだ。創薬事業には高度なサイエンスとテクノロジーが求められるとともに薬事および保険に関する規制への理解と対応が必要になる。従って、スタートアップの経営陣にも専門知識や経験が求められる。右のグラフをご覧いただきたい。右のグラフからアメリカの創薬スタートアップの経営層がほぼ製薬企業の出身者であるということが見てとれる。アメリカの人材の流動性の高さがアメリカの創薬スタートアップを支えている大きな要因の一つではないかと思います。

次のスライドお願いします。今までお示した日本の創薬スタートアップ・エコシステムの課題をまとめたのがこのスライドだ。

全部で4点ある。まず1点目だが、私はアセットが少ないと考えている。日本のアカデミアにはユニークな創薬基盤技術の研究成果があり、それに基づいて設立されて活躍をしている創薬スタートアップがある。しかしその中で、自社の技術に基づいて、アセットの創出から臨床開発まで進めている企業が多いとは言えない。

2点目だが、日本のアカデミアには疾患原因や標的分子について、優れた研究成果があると考えている。しかし、アカデミア初の加工物の中には、医薬品開発の視点からはデータおよび知的財産が十分でない事例が見られる。そのような化合物に基づいて設立された創薬スタートアップの中には、改めて探索段階から研究開発を行う場合があり、臨床POC(Proof of Concept)取得まで結果的に長期間を必要とする例が見られる。そのような場合、ベンチャーキャピタル投資これはファンドの期間が限られているので、そういった投資がつきにくい場合がある。次に、その投資資金が少ないということだ。ベンチャーキャピタルの数もファンドの規模もここ数年で増えている。しかし、まだまだ不足しているというのが現状かと思う。

次に3点目、専門人材が少ないという点だ。これも最近改善が見られるものの創薬スタートアップおよびそれらを支援するベンチャーキャピタルや証券会社などに、医薬品業界の経験や医薬品分野の専門性を持った人がまだ少ないと考えている。

最後の4点目として、創薬スタートアップおよびベンチャーキャピタルのグローバル化の遅れをあげたい。革新的新薬は基本的にグローバル市場に展開可能なものだ。しかし、国内のみで開発している事例が少なくない。また、創薬スタートアップに投資をしているベンチャーキャピタルなど、投資家のExit戦略が東京証券取引所のグロース市場の上場に偏っているというふうに見ている。

さらに人材および資金などのリソースの調達が国内に限定されており、アメリカの豊富なリソースを活用できていない。以上4点申し上げたが、これら4点は、相互に原因と結果担っていると思われ、いわば負の循環になっているのが日本の現状であると考えている。

次のスライドお願いします。このスライドは政府の想定創薬スタートアップへの資金面での主な支援策をまとめたものだ。政府のスタートアップへの資金支援のプログラムは増えており、支援金額も増加している。特に創薬スタートアップについては昨年からAMEDが創薬ベンチャーエコシステム強化事業というものを開始した。この基金は総額で3500億円と大型だ。また投資資金についても政府出資のベンチャーキャピタルファンドの数およびファンドの資金量は増加している。

しかしその多くが創薬に特化しているわけではない。例えば、他のDX(デジタル・トランスフォーメーション)だったり、脱炭素化を事業とするスタートアップへの投資金も含んでいる。そのように考えると、そういったそのトップ向けのベンチャーキャピタル資金量のさらなる増加が望まれるというふうに考えている。

次のスライドお願いします。それではこれまで申し上げてきた課題について私個人の考えを申しあげる。創薬スタートアップ・エコシステムを日本に構築して根づかせるためには、一つでも多くの成功事例を生み出すことが必要だと考えている。ここでの成功とは革新的新薬の開発の進展や上市および創薬スタートアップの企業価値の向上をいう。成功事例が生まれることによって、アカデミアなどでシーズを創出した研究者、スタートアップの起業家、経営者、従業員、そしてベンチャーキャピタルなどの支援者に成功した人が生まれる。そうすると、次の起業や投資につながっていくと思う。それによってエコシステムが正の循環、プラスの循環が回ると期待される。

具体的には3点あげたい。このスタートアップ支援については非常に盛んに議論され、方策が打たれてきている。ここでは政府が昨年11月に発表したスタートアップ育成5か年計画などに含まれていない意見をお話したい。

まず1点目だが、アカデミアのアセットを創出する研究開発の拡充だ。アカデミアにおける基盤技術の研究と疾患原因や標的分子の基礎的な研究に一層の充実は必要だと思うが、それに加えて、そういう基盤技術を用いた創薬研究、実際にアセットを作るということの推進を強化していただきたい。またアカデミアの創薬シーズのいわば成熟度を向上するとともに、特許を国際的に競争力のあるものにしていただきたい。

次に2点目、海外開発および海外リソース活用の支援について。国内スタートアップの国際競争力の向上およびそれによる企業価値の向上、さらにその投資の呼び込みということについては海外での開発、そしてグローバルに事業展開している国内外の製薬企業とのアライアンスが必要だと考えている。
また、海外、特にアメリカのエコシステムを活用するために、スタートアップが海外法人を設立するということも選択肢の一つであると考えている。

その点から二つここに挙げている。例えば既に一部のAMED事業で実施されているが、AMEDが行っている補助事業や委託事業の対象を国内における開発には限定せず、海外における開発にも広げてはどうかというふうに考えている。また、AMED事業の支援対象を国内の法人に限定せず、一定の要件を設けて、それらを満たすということであれば、海外法人に広げてはどうかと考える。

3点目は人材については、兼業の推進だ。専門的知識の共有化を図るために製薬企業の社員の兼業・副業の促進加えて、アカデミアの研究者であったり、AMEDやPMDAの方々を含む公務員の方々が、創薬スタートアップやベンチャーキャピタルと兼業や副業を行うことを薦めるもしくは認めてはどうかと考えている。これらがいずれ人材の流動化の促進につながるのではないかと考えている。

次のスライドお願いします。これが私の最後のスライドだ。これまで日本の創薬スタートアップについて話をしてきたが、ここから話題を変えて海外新興バイオ製薬企業が開発した革新的新薬の導入に関する課題について私の考えを話す。

特にアメリカの新興バイオ製薬企業が開発している革新的新薬を日本で上市するには、次の4つの方法があると考えている。①海外の新興バイオ製薬企業が自ら日本で開発する、②日本製薬企業が導入して開発もしくは買収をする、③欧米の製薬企業が導入して開発もしくは買収する、④日本の創薬スタートアップが新興バイオ製薬企業から導入して開発する―。

ドラッグラグやドラッグロスの解消や防止のためにはこれら4つの“いずれか”でなく、“いずれも”進める必要があるというふうに考えている。では、それぞれを進める上でどのような課題があるかについて私の考えを述べる。

まず1点目は、日本の薬価制度だ。これは4つの方法のいずれにも当てはまる。これについては昨年12月の有識者検討会で議論したことなのでここでは触れない。

次に2点目。国内の薬事および臨床試験環境だ。これも海外企業にとってはもちろんだが、国内企業にとってもコストや開発期間のマイナス要因があるというふうに言われている。

3点目は日本の製薬企業の事業戦略だ。日本の製薬企業が新薬候補を導入して国内で開発、上市することが、ドラッグラグ、ドラッグロスの解消に加え、日本企業の体質転換に寄与するのではないかと考えている。さらにドラッグラグを防ぐには海外承認後の導入ではなく、早い開発段階での導入が望ましいと考えている。しかしながら、それには導入費用や開発費用、そして開発リスクが伴うので、難度は高いと思われるが、日本の製薬企業の積極的な取り組みを期待したい。最後に4点目だが、日本の創薬スタートアップの資金調達についてだ。これは先ほど述べたので、ここでは割愛する。

以上、日本の創薬スタートアップ・エコシステムの現状と課題と海外からの革新的新薬の導入についての課題を述べさせていただいた。私の発表は以上です。

遠藤座長:はい、どうもありがとうございました。非常に包括的な説明かつ問題点を提起、さらには提言も含めておられて今後の議論に非常に資する情報を提供いただいたと思います。ありがとうございました。

引き続きましてMEDISO(三菱総合研究所)から資料のご説明をお願いしたい。どうぞよろしくお願いいたします。

◎川上明彦氏(三菱総合研究所ヘルスケア&ウェルネス本部 ヘルスケアイノベーショングループ主任研究員、医療系ベンチャー・トータルサポート事業(MEDISO)プロジェクトマネージャー):よろしくお願いいたします。三菱総合研究所の川上と申します。では資料をお願いします。当社、三菱総合研究所ですが、厚生労働省より医療系ベンチャー・トータルサポート事業、通称MEDISOを受託し、運営しています。本日はMEDISO事務局という立場から、ベンチャー支援の紹介と医療系ベンチャー支援の課題について発表する。

次のページをお願いします。まずはMEDISOによるベンチャー支援について紹介する。MEDISOですが、医薬品、医療機器、再生利用等製品の実用化を目指す医療系ベンチャー企業やアカデミアを支援している。

MEDISOは研究段階から製品化段階まで、そして法人化前からグローバル展開まで成長ステージに応じた支援を提供している。MEDISOの主たる支援は様々な専門家による相談対応だ。相談対応以外にも、知財戦略や出口戦略調査、人材交流事業などをベンチャー企業アカデミア向けセミナーやマッチングシステム、海外ピッチ等様々な支援を提供している。これら、MEDISOによる相談対応や各種支援というのは無料で提供している。

次のページお願いします。MEDISOの目指すところは大きく二つある。一つは日本の医療系ベンチャー企業の底上げ。もう一つが日本から医療系ベンチャー企業の有望企業を輩出することの二つを目指している。

次のページをお願いします。まずはMEDISOの主となる相談対応についてご紹介する。MEDISOでは各分野の専門家を70名程度プールしており、相談者からの相談内容に応じた適切な専門家、これをサポーターと呼んでいるが、こことの面談により相談者を支援している。

次のページお願いします。MEDISOは通常1回の相談の申し込みに対し、1回もしくは2回の面談を実施していますが、この相談申込は何度でも可能となっている。面談後には、優先的に対応すべき課題と対応方法案、そして今後のメリットによる支援内容をフィードバックしている。またPMDAとも連携を図り、PMDA面談同行支援も実施している。

ベンチャー企業やアカデミアの場合、PMDAとの面談に慣れておらず、面談の中での指摘事項等をその場できちんと理解しきれず消化不良で終わってしまうケースということもあるので、MEDISOのサポーターがPMDAとの面談に同席し、面談後に振り返り面談を実施することで今後の開発、薬事戦略立案の支援をしている。

次のページお願いいたします。MEDISOですが2018年2月に立ち上げ以降、4年10か月で1038件の相談に対応しており、相談件数は年々増加している。2022年は計249件の相談申込があった。また相談件数のうち19%が過去に相談経験のあるリピーターからの相談となっている。

次のスライドお願いします。MEDISOにくる相談者の属性と相談種別です。相談者全体に占めるベンチャー企業の割合は58%、アカデミアの割合は17%となっており、製品種別としては、医薬品が24%となっている。

次のスライドお願いいたします。先ほども申し上げました通り、MEDISOは様々な相談に対応しておいるが、相談案件のうち、多い相談は法規制対応、次いで資金調達、事業計画となっている。これら3つは医薬品において多いが、他と比較して多い相談は資金調達、知財戦略といったところだ。

次のスライドお願いいたします。MEDISO立ち上げから5年が経過するところだが、相談者の中から少しずつではございますが成功事例が出てきている。ここに示しているのはごく一部だが、例えば製造販売承認や認証の取得、資金調達の成功、ライセンス契約の締結と成功事例を数多く輩出している。成功事例の特徴として何度もMEDISOを活用いただいているというところが挙げられると考えている。

次のスライドお願いします。一方、典型的な困難例を3つ示す。ここに記載したものはいずれももっと早い段階で相談に来ていただければこのような事態に陥らなかったと考えられるケースだ。

1点目は研究と製品化の違いというところで、薬機法等関連法規の要求事項に則った開発を行っていないため、やり直しが発生した。例えば品質システムの要求事項を満たしていないことで、非臨床試験や臨床試験のやり直しが必要となってしまうケースがあった。

2点目、先端分野の特許出願です。特許出願に関しては正しい専門性を持った弁理士に依頼することが重要ですが、例えば医療機器プログラムですとか医薬品の最新モダリティのような先端分野の特許出願に関しては、やはり専門性を持った弁理士に依頼することが非常に重要となる。もし、そういったことを行っていないため、後々知財戦略の部分で困ってしまうというケースだ。

3点目は資本政策の失敗。ベンチャー企業はシード期、ラウンドA、ラウンドBと資金調達を繰り返し研究開発や製品化の資金集めて進めるが、ときに株主構成を間違えてしまいその後の資金調達が難しくなってしまうことがある。シーズは良いものの、その後の研究開発が進められないケースというものもある。これはかなりクリティカルな失敗にあると考えている。これらいずれのケースにおいても、早くメールでご相談いただければ避けられると思うような相談だ。

ここまでMEDISOによる相談対応についてご説明した。次のスライドお願いします。冒頭申し上げたが、MEDISOでは相談対応以外にも様々な支援を行っている。全てをご紹介することは叶わないが、ベンチャー企業、アカデミア向けセミナーと、ジャパン・ヘルスケアベンチャー・サミット2022(JHVS2022)について簡単に紹介する。

次のスライドお願いいたします。MEDISOでは薬事や知財等の専門トピックを取り上げるMEDISO主催のセミナーや大学や自治体等との連携セミナーを実施している。特に薬事関連については厚生労働省事業の強みとして厚生労働省がPMDAの担当者による講演等も取り入れております。また東京開催だけではなく全国各地の大学自治体との共催セミナーの実施や出張の相談会等も実施している。

次のスライドお願いします。続いてジャパン・ヘルスケアベンチャー・サミット2022(JHVS2022)だ。これは厚生労働省が主催する医療系ベンチャーとアカデミア、大手企業やベンチャーキャピタル等とのネットワーキングに資するイベントだ。VC出展により大手性企業とネットワークの場を提供するとともにプレゼンテーションエリア内で出展者が行うピッチイベントや各種パネルディスカッション等をMEDISO事務局が企画し、実施している。2022年10月にパシフィコ横浜で実施したBio Japanと3日間で延べ1万5813名の方にご参加いただいた。

次のスライドお願いいたします。またJHVSのスピンアウトとして、JHVSグローバルピッチを別に開催した。JHVS出展ベンチャーの海外進出をサポートする目的で、英語でのピッチ機会や海外物資、海外関連機関とのマッチング機会を提供している。今年度はオックスフォード大学の技術移転を起源とするOxentia社(イギリス)と協力し、英国を中心とした海外の事業者、ベンチャーキャピタル、公的支援機関、イノベーション支援者等を集めて英語でのピッチを実施している。

次のスライドお願いいたします。もう一つJHVSのスピンオフとして、JHVSシンポジウムを毎年実施している。シンポジウムでは医療系ベンチャー、アカデミアを取り巻く業界動向や各種支援策の情報提供でネットワーク構築の場を作ることでエコシステム形成を促進することを目的としている。今年度は2月2日~3日の2日間。対面とオンラインのハイブリッド開催を予定している。

次のスライドお願いします。MEDISOによるベンチャー支援を紹介して参りました。これまでの事業の経験から見えてきた医療系ベンチャー企業のニーズとMEDISOの課題についてご説明する。

1つ目が、より早期からのMEDISO利用の促進です。先ほどの困難例の通り課題が顕在化してからの軌道修正は非常に困難な場合がある。医薬品等の実用化を考えている方にできるだけ早期からMEDISO利用を促す必要性があると認識している。そのため全国の支援機関での出張相談会の実施等を御強化しております。

2つ目が伴走支援、ハンズオン支援の拡充です。成功事例は人材交流事業によるハンズオン支援で躍進しているケースものが多いのが実情だ。今後伴走者の充実を図るためフォローアップ対応の改善やハンズオン支援の対象期間の拡充を検討していく。

3つ目が他省庁支援事業、民間支援機関との連携強化。これはこの後に説明する医療系ベンチャー支援の課題にもつながるもの。医療系ベンチャーを含むベンチャー支援施策については充実してきており、関係市町、自治体、公的機関、民間企業等、各組織がそれぞれ個別に様々な支援施策を展開している。MEDISOもそれら各機関との連携をしてきているところではあるが、今後は民間を含む他機関との連携を強化し、MEDISOの強みである集客力や規制対応等を生かして各種支援を展開していきたいと考えている。

4つ目が海外展開支援の充実。医薬品等はグローバル展開が基本だが、創薬ベンチャー企業には海外展開のノウハウがないため、潜在的な支援ニーズが高い領域でもある。海外の支援機関等との連携を強化し日本の医療系ベンチャーの海外展開支援を充実、充実化させていきたいと考えている。

最後5つ目。ベンチャー企業または起業家の間、並びに大企業、VC支援人材との交流の促進だ。日本の医療系ベンチャー企業には成功事例がまだ少なく、成功した医療系ベンチャー企業からの情報収集というのがベンチャー企業側からでは困難だ。実際にMEDISOの相談者からも成功事例のあるベンチャーの方と情報交換をしたいという要望もある。また情報のみならず経営人材や各種専門人材の確保といったところもやはり困難な状況になっている。こういったところから、ベンチャー同士の交流会やベンチャーと大企業、VC支援人材との交流会の提供など、これまで以上に実施していきたいと考えている。

次のスライドお願いいたします。以上がMEDISOによるベンチャー支援の紹介だ。ここからこれらを踏まえ医療系ベンチャー支援の課題についてお話したい。スライドをお願いします。

釈迦に説法でございますが、医療系ベンチャーは研究開発と経営の両面を進めていく必要がある。これは創薬ベンチャーの一般的な実用化プロセスを示しているが、基礎研究から非臨床、臨床を経て販売承認そして販売へとステップを踏んでいく。もちろんここには様々な専門性が必要となってくる。一方ベンチャー企業として法人化から組織拡大、技術に向けた資金調達や組織構築など様々な経営課題も存在している。

次のスライドお願いいたします。医療系ベンチャー企業は次のような事業特性を有するためチャレンジが山積みと言われている。こちら厚生労働省の医療のイノベーション担うベンチャー企業の振興に関する懇談会報告書からの抜粋ですが、1つ目が高い科学技術水準と開発リスクがあるというところで、2つ目が承認までの時間の長さと、必要資金の多さ。そして3つ目が、医療、薬事、保険に係る規制への理解と対応、4つ目が、特性に設置した人材確保の困難と言われている。

次のスライドお願いします。またご存知の通り医療系ベンチャー企業ではチャレンジするためのあらゆる経営資源が不足している。例えば経営人材が見つからない。各種専門家人材が見つからない、といった人の問題ですとか、研究拠点、製造設備がないといった問題、研究開発に必要な資金、専門人材を雇用する資金、特許関連費用といったものが十分に捻出できないといった金の問題。薬事に関する知識の差がないとか、市場に関するノウハウはない、また委託先や提携先企業に関する情報がないといったような情報の不足など、本当にあらゆる面で足りない中で実用化に向けて進めていかなければならない。

次のスライドお願いします。一方、近年公的機関によるベンチャー支援は充実している。MEDISOのみならず経済産業省のInnoHabやNEDOが中核となっているPlus Oneなど各種補助金アクセラレーションプログラム等多くのベンチャー支援施策がある。資料23ページ、24ページに参考として、主な公的支援策、補助金等をまとめている。

24ページをお願いします。AMEDの創薬ベンチャーエコシステム強化事業につきましては、認定VCを設置し、さらに事業規模が3500億円になるというところなど資金面での支援というのも強化が進んでいる。このような状況下で現在の医療系ベンチャー支援の課題として考えられるのは、ベンチャー支援に関する情報を収集し、一元的に情報発信するような交通整理が必要だというところだ。医療系ベンチャー企業の課題は本当に様々ある。またそれに対応するような医療系ベンチャー企業を支援する施策機関も非常に増えている。もちろん一つの支援機関で全ての課題を解決できるわけではない。ベンチャーの抱えている課題に対して適切な支援機関につないでいくということが非常に重要と考えている。

次のスライドお願いします。このような課題に対してMEDISOが交通整理を行い、官民によるトータルサポートを実現してはどうかと考えている。具体的には各支援策の情報収集、情報発信、円滑な支援の橋渡し、イベントの相互の活用促進をこれまで以上に実施し、医療系ベンチャー企業、アカデミアに対するトータルサポートの1限窓口としてより一層機能することで、日本からの革新的な医薬品の創出につながると考えている。以上、MEDISOからの説明でした。ありがとうございました。

遠藤座長:はい、どうもありがとうございました。医療系ベンチャーの支援の実態およびそこから見えてきた医療系ベンチャーの課題、あるいはその支援策についての提案について説明をいただきました。ありがとうございました。それでは続きましてベンチャーの方々からのご発言ということで。まずはアミカス・セラピューティクスよりご説明をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

◎海老原恵子氏(アミカス・セラピューティクス薬事本部本部長):ご紹介ありがとうございます。アミカス・セラピューティクスの海老原と申します。スライドを願いします。まずアミカス・セラピューティクスについての紹介です。「患者中心」を第一に掲げ、希少代謝性疾患と共に生きる人々のために質の高い医薬品を開発し、提供することを使命とするグローバルなバイオ企業です。米国において2002年に遺伝性の希少疾患医薬品の開発を目的に研究所を設立し、欧米を含む現在約世界約30カ国を中心に展開している。右下の写真ですが、弊社CEOのジョン・クラウディがそのご家族と一緒に写った写真およびジョンがお子さんのために治療薬を開発したという経緯が映画になった際のDVDの画像です。難病に侵されたお子さん2人を救いたい一心から全く製薬会社の社員ではなかったジョン・クラウディが自ら新薬開発のベンチャー企業をファンディングで起こし、お子さんの治療薬を開発したという実話があり、これを映画化したものだ。会社の宣伝ではないがベンチャー企業としての成り立ちという意味で紹介させていただいた。

日本法人は2016年11月に設立され、2018年3月にオーファン指定医薬品の承認を取得した。同年5月に薬価収載して上市した。現在も新たにオーファンの医薬品の開発製造および販売を行っている。

次のスライドお願いします。こちらは本日の構成を示すスライドだ。初めにベンチャー企業による医薬品開発について、次いで日本で医薬品を開発するメリットと課題、そして最後にベンチャー企業の医薬品開発に関する海外ビジネスモデルについて説明したい。

次のスライドお願いします。ベンチャー企業による医薬品開発というところですが、まず開発から上市までの費用の観点からの課題というものがある。メガファーマに比べると長期間にわたっての医薬品開発に必要な予算の確保というのがなかなか難しい。また本邦において、最初の医薬品開発を手がける場合、成功の可否の判断というのが当初難しく、リスクを避けるためにも先行投資のための人員というのが最小限に絞られるというところも課題だ。

ご存知と思うが新医薬品の承認取得から上市のためには第一種医薬品製造販売業許可の取得が必要となる。そのためには要件として代表取締役と3役と呼ばれる総括製造販売責任者、品質保証責任者および安全管理責任者の設置が義務付けられている。まずこの4名の設置というところの人員配置が必要となる。そして会社の設立事務所の確保に加え、医薬品製造販売業許可取得のための要件であるこれら人員と、それから必須の初期費用として開発要員等の設置が必要となってくる。これは企業の規模に関わらず、この代表取締役と3役、それから事務所の設置といったところがかかってくるので、必然的に相対的にメガファーマに比べると費用負担、職員の費用負担が大きくなるものと思う。

また人員が絞られる結果、医薬品開発から申請のみならず、薬価収載、市販後の安全性対策においても外部の契約機関、CROと呼びますが、これらを利用する必要性が出てくる。その結果として費用がかさんでくるといったところも課題だと思う。

そこで医薬品の開発着手から市販後の活動に対するベンチャー企業の資金への支援制度を設けてはどうかというご提案を申し上げたい。

先ほど説明がありましたがAMEDでは創薬ベンチャーエコシステム強化事業を展開しておいる。これはベンチャー企業にとって非常に明るい話題だとは思うが、基本的には感染症のワクチンや治療薬の開発のための、または将来的に感染症のワクチンや治療に転用できる可能性のある革新的な技術開発を行う創薬ベンチャーを公募するというふうに書かれており、全ての創薬ベンチャーへの支援にすべからく文言が開かれているわけではないと理解している。

間違っていたら申し訳ございませんが、ただし、このような狭き門という形ではなく、もっと広く門戸を広げる方法はないのだろうかというところが私からの提案だ。

実際にAMEDのベンチャー支援におきましても令和4年、8つの申請がありましたが、2つのみ申請が採択されたというところになる。繰り返しにはなるが、医薬品の開発着手から市販後の活動に対するベンチャー企業の支援への支援制度といったものが設けられるとありがたいというふうに思う。

次のスライドお願いします。臨床試験において患者登録にも課題がある。こちらは医薬品を開発する会社全ての課題ではあるが、特にベンチャー企業においては大きな課題であると感じている。被験者、患者の治験への理解度を特にプラセボを用いた二重盲検試験等についての信頼度が必ずしも高くないと思われる。このことから、患者を組み入れるための時間、コストといったものが費やされる。特に知名度の低いベンチャー企業が実施する臨床試験においては、もし競合に知名度の高い会社が同じような治験を始めている場合には、患者の参加はおのずと大きな会社に行ってしまう。

外資系企業の場合、国際共同治験に組み入れることが多いことから、また海外のインフォームドコンセントを行ったようなものを使わざるを得なくて、日本人特有の感性にマッチしないといったところがあり、患者の治験参画への理解度や躊躇といったものを助長させる可能性もあると思う。

次のスライドお願いします。このような状況の中、一つ提案させて頂きたい。患者に治験への理解を深めていただくということで、治験への積極的な参加を促す方策というものが取れないだろうかというところです。産官学民そして患者といった形で医薬品の開発について検討し、学習する場を設けてはどうかという提案をさせていただきたい。

背景におきましては欧州では10年以上前に、EUPATIというPPIの促進を目的としたコンソーシアムが設立された。日本でも数年前にPPI Japanというものが設立されたが、このような産官学民・患者といった形で治験というものに理解を深めるような取り組みをしていただくということもあるとありがたいと思っている。

一方、いまPMDAが安全対策業務の一環として患者への迅速的確な情報提供収集のための患者会との連携というような活動をしている。こういったようなことも併せて進めていただけると治験というものに関する国民もしくは患者の信頼感が深まるものではないかというふうに思う。

次のスライドお願いします。こちら僭越ながらPMDAへの取り組みを引用させていただいてご紹介するスライドだ。このスライドでは患者の登録および患者数の把握というところに関する課題をまとめた。これはベンチャー企業に限らないが、ただ、ベンチャー企業が開発する薬品の中には希少疾病用治療薬品、いわゆるオーファンが多く、弊社も開発を手がけている。オーファンの開発として医薬品を開発できるかどうか、オーファンの指定を受けるかどうかといったようなことは非常に開発の可否着手に関わる大きな要素となっている。

患者数は本邦での医薬品開発の成功確率、それは治験への組み入れの難易度や、また効果の確認のために患者数の推定をするといったこと、また将来においては売り上げの予測といったようなことに関しても大きく関わる要素だ。この調査には大幅な時間と労力が必要となる。もちろんベンチャーに限らないが、ベンチャーでは人員が限られていることからこのような情報を収集するということに関しても課題となっている。

患者数が公表されていないということから、日本における開発の“Go”、 “No Go”の実施に時間がかかり、より慎重にならざるを得ないという傾向がある。ベンチャー企業では医療従事者とのコネクションもあまり構築されていないことも多いため、日本で開発実績があり知名度がある会社との競合している場合に患者さんの組み入れといったところでどうしてもスピード感が得られないなど多様な課題もある。

以上を踏まえた提案を9ページに示しました。これは現実化するにはいろいろな課題があろうかと存じますが、私の見解を述べていいというふうにいただいているので、あえてちょっと挑戦的なことかもしれませんが、よろしくお願いします。

おおよその患者数の把握やオーファン指定の可能性など、これらの情報がある程度公表されていることで開発着手のための判断が役立つものではないかと思っている。もちろんベンチャー企業のみならず医薬品企業の参画を推進するためには患者数のおおよその推定累計といった情報が公表されるということも一つの大きな要素になろうかと思う。ここで提案だが、患者登録システムを推進し、患者数を公表するということができないかということだ。患者数をもとにオーファン指定の可否が判断できるような制度を検討いただければある疾患の治療薬の開発において、オーファン指定は受けられるといったような、ある程度の確率の高い情報のもとに、日本における医薬品開発の促進といったものも期待できるものではないかと考える。

10ページのスライドをお願いします。スライドは医薬品の開発における薬事制度について示したものだ。オーファンの開発において日本の開発開始の優先順位が高く位置づけられずに開発の着手が遅れることがある。実際に弊社でもあまり詳しいことは申し上げられませんが、欧米英アジア(日本除く)で開発を進めながら、日本の承認の準備を進めるといった議論が常になされている。この辺りに関しても、日本の症例の組入れが遅いといったこともあり、日本を入れたくないといったようなことを言われるというのは弊社のみならず時々聞くこともある。このあたりで日本人症例の組み入れといったところも一つの課題かなというふうに思っている。

また、欧米の申請資料をそのまま使用できないこと。言語が日本語であるということが申請書の基本原則となっており、英語の申請資料もそのまま活用できるという部分もある。英語を日本語にし、日本語を英語にするというその手間と費用とまたは誤訳、誤記を防ぐことができるという提案だ。

日本人における安全性のデータや既承認薬との比較データによる有効性を示すことがオーファン指定の要件になっている。開発早期からオーファン指定を受けられるということが難しく、その分の助成金支援相談制度の優遇といったところも受けられない。そういった課題もある。結果として他国での開発を優先し、国内での開発の着手が遅くなるケースが増えるといったこともある。したがってオーファンもしくはウルトラオファーにおいては、日本人の症例の組入れは必ずしも必要としないといった承認申請制度を医薬品の条件付承認制度等の仕組みが標準的に適用されるといったようなご議論をいただけると大変ありがたい。

また、市販後の安全対策等で保管するといったことが条件付きになると思いますが、その場合の補助、助成といったようなものもご検討いただけると大変取り組みやすいかというふうに考えている。

続いて11ページです。人材確保育成に関する課題だ。こちらも先ほど先生方からお話がありましたが、米国では転職をしながら少しずつ自身のキャリアやポジションを高めていき、給与や社会的地位を上げるということが比較的行われている。それに比べると日本は安定型の就職を希望する傾向があるので、ベンチャー企業への就職を第1希望にする人材は多くないと思う。本邦における医薬品開発の参入もないベンチャー企業では知名度も低いことから、なかなか良い人材を第1希望にしていただくのは難しいというところもあるかと思う。そのような方々を広く受け入れるために資金の導入といったところの助成があるというのも一つの案ではないかなというふうに思っているところだ。

また、医薬品開発から市販後における知識経験の蓄積という点でも人員が少ない。どうしてもヒトの流出が多いことから、蓄積も難しい課題で、例えば給与面、待遇面の補償をするというのは大きな課題だと思う。資金の助成といったことを検討いただけないかと思う。

医薬品の薬事規制や制度市販後の安全対策といった専門知識に対する習得並びに、例えば外資ですと、外国語のコミュニケーションの習得といったようなものが必要なところからそのような人材の確保というのが非常に難しいことも課題だ。提案だが、ベンチャー企業への人材確保、育成支援制度を充実させてはどうか。また、先ほどのご発表でもありましたがベンチャー企業の人材育成のための人事交流の制度化もご検討いただけないかと思う。

資料12ページです。ここからのスライドでは、日本で医薬品を開発するメリットと課題をまとめた。種々のメリットがあるということは確かで、医薬品開発支援制度が設けられている。またオーファンの開発支援制度も存在している。オーファン開発に必要な試験研究費の助成金が設置され、試験研究費に対する税制措置上の申請等の認定事務支援を受けることができる。ただし、基本的には医薬品の開発から承認申請の年度末までの原則3年間といった支援に限られており、申請後の審査対応、薬価収載対応、市販後の安全対策等に関する費用の支援というのは基本的には大きなものがないと理解している。

一定の収益が認められると助成金に関しても返金の義務が発生するといったところがございますが、これがまた制度利用における躊躇になっている場合もある。私からの提案だが、もっと早い開発段階からの支援もしくは承認取得後の支援といったようなものをご検討いただけないかなと考えている。

13ページをお願いします。こちらのスライドもうオーファン開発支援に関する説明だ。医薬品の申請手数料や相談手数料に関しても減額といった措置がある。これらも開発までというところだ。

次のスライドお願いします。こちらも同様で開発から審査までに審査期間といったものが優遇される措置というか制度というものを設けていただいている。これらは日本における医薬品開発のメリットとして行政からご提供いただいているものだと思う。次の15ページだが、この有識者検討会の過去の議論においても何回かあげられているかもしれないが、改めてオーファンの指定の要件をまとめている。日本の制度では医療上の必要性、開発の可能性という要件がオーファン指定にかかっている。開発の可能性が高いことという点で初期段階のシーズが当該要件を満たすことは難しく、また開発中期から後期になるまでは当該助成が受けられないという状況になっている。欧米では主に第1相試験や第2相試験のデータを持ってオーファンの指定がされているが、日本では第3相試験の成績をもって指定の可否の根拠がなされるといったような状況だ。従って約6割程度のオーファン指定が承認申請が半年ぐらい前にようやく受けられるというところになるので、そこから申請年度末までの助成金を受けるといったような形になる。これをもっと早い開発段階から支援するという制度に広げていただけるということがあればありがたいなと思う。

16ページがご提案です。開発の早い段階から指定を受けるためにオーファン指定の要件から開発の可能性や医療上の必要性という文言を除いてはどうかという提案。もちろん一定の条件を設けるということは必要とは思いますが、この開発の可能性というところで、結局開発の後期に至るまで、オーファンの指定というものが受けられず、助成が受けられないというところも、日本に早期からの医薬品開発に対する躊躇が起こる一つの要因になっているというふうに思う。

先ほども繰り返し申し上げますが、審査までの助成を行う支援制度はたくさんあるが、承認後でも安全対策等に関する支援があると大変ありがたいと思う。医薬品は臨床試験を実施して承認申請し、承認されれば後は収益を得るのみというものではない。安定供給のための企業努力、設備投資、維持、安全対策等、再審査など継続的に企業努力を行って、その分のコストもかかっている。承認申請までではなく承認後の安全対策等に関しての助成といったようなことが検討いただけるとありがたいという提案だ。

17ページをお願いします。こちらのスライドは新医療用医薬品開発支援のための制度に関するメリットと課題を、同じく上げたものだ。メリットといたしましては再審査期間の設定、承認事項の追加による期間延長などの可能性もある。また先駆的な医薬品指定制度や条件付き早期承認制度のスキームもございますし、医療上の必要性が高い未承認薬の開発要請を受けた場合には開発支援が受けられるといったところもある。しかしながらこちらも申請までという規定がついている。

一方、本邦における開発着手前の成功確率の推定も重要な要素である。患者数のみならず収支を決定する要因として「薬価」がある。薬価設定を企業が決める制度で日本はないため、費用の先行投資のための資金計画や承認後の投資額の回収計画が非常にたてにくい。そこで提案ですが、確約するということではないということを前提にして、薬価を相談する場、特にベンチャーで経験の浅い会社において薬価を相談する場や制度というものを設けていただいてはどうかという提案だ。これにより日本での成功確率に確信を早くに確信を持てる企業が増えてくれば、日本における開発着手の促進にも繋がることを期待している。

18ページをお願いします。このスライドは薬価制度に関するものだ。こちらもメリットがあることは確かで、国民皆保険制度があり、保険収載までの期間も短く基本的には確実に収載され、一度薬価収載されたら削除されることは基本的にない。これらが魅力となっていると思う。一方で再審査期間中も薬価が引き下げられる仕組みがある。ベンチャーの場合や薬価上の措置として、ベンチャー要件に該当する企業においては、「区分3」という0.8掛けられるところを「区分2」に入れて0.9掛けるというような措置も設けていただいている。さりながら、ベンチャー企業の場合、「区分1」に該当するということはほとんどないと考えられるし、ベンチャーに限らず、いわゆる企業に区分を設けるといったような制度というのを再考していただきたい。

そこで提案させていただきたい。製薬企業自体を区分する制度の見直しを検討していただけないでしょうか。特許期間中、最審査期間中の新薬品の薬価を維持することで、本邦における医薬品開発の優先度、価値を高めることが期待されるというところだ。

19ページをお願いいたします。これはご参考までに含めたスライドだ。事業区分において加算係数というものが設けられている。ベンチャーは「区分1」ということに該当することがほとんどないと思われる。このようなところの見直しをしていただけると大変ありがたい。

20ページです。ベンチャー企業の医薬品に関する海外ビジネスモデルへというところで4ページご用意させていただいた。先ほどのご講演にもありましたが、資金調達の手段は日本と米国とではだいぶ違うと感じている。M&AやIPOなどのファンドがある。弊社においても、会社設立当時からずっとファンドという形で資金提供いただいているところ。アメリカでは短期的には赤字であっても中長期的に企業価値があると判断されると継続的な資金調達というものがございます。

また米国ではシーズの段階であってもIPOによる資金調達が可能だ。日本では成功確率が確認され、実績のある企業が開発を確定した後にIPOが行われるということが多い。米国ではシーズ段階での医薬品開発を資本家、機関投資家が投資の対象とすると同時に、これが社会貢献として捉えられるという視点がございます。このような寄付といったようなものも日本に起こすとさらによいのではないかというふうに思う。

また、日本では躊躇されることが多いと思われるので医薬品としての開発着手遅れや断念の確率が欧米に比べて高いのではないかというふうに思っている。そこで提案といたしましてはベンチャー企業の医薬品開発支援のための資金調達や大手企業とのパートナーリングの機会を提供する場を恒常的に提供できないかというところでございます。

21ページをお願いします。このスライドはバイオベンチャーのビジネスモデルを示しております。大きく三つのタイプに分けられますが、必ずしも一つの型に専念しているとは限りません。収益性や開発期間等に応じて使い分けていると思いますが、①創薬基盤型、②パイプライン導入・買収型、③創薬パイプライン型-のようなモデルがあると思っている。

次のスライドお願いします。22ページ目と23ページ目で欧米の比較というところでございます。米国ではパイプラインの開発段階に関わらずファンディングというものがなされており、非臨床段階、フェーズ1段階からでもファンディングというものが見受けられる。

23ページに示しますように日本のファンディングとなりますと、パイプラインが整って他社との提携が進んだ後に行われる、というところが見受けられる。以上のようなことから先ほどからに何とか繰り返しておりますけれども、開発初期のシーズを日本に早期に導入するためには、開発初期からの支援制度、患者数の把握、薬価相談制度、市販後までの支援制度などの設置をご検討いただけることが喫緊の課題と考えている。

以上雑駁な内容となりましたがこのような機会を与えていただきましたことを改めてお礼申し上げ、私の話を終わりにしたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

遠藤座長:はい、どうもありがとうございました。ベンチャー企業のお立場から日本で開発を行う上での課題、あるいはそれに伴うご提案をいただいた。次はリボルナバイオサイエンスの話をうかがいたいと思う。どうぞよろしくお願い致します。

◎富士晃嗣氏(リボルナバイオサイエンス代表取締役):本日はこのような機会をいただき誠にありがとうございます。それではスライドをお願いします。

私からは革新的な医薬品の創出における課題と当社から見た現状とのギャップについてコメントさせていただく。次のスライドお願いします。こちらのスライドは希少疾患に関する数字をご紹介させていただいた。希少疾患の定義は国によって異なるもののグローバルでは推定3億5000万人の患者がいると言われている中で、およそ80%が遺伝性であり、また全体の30%が5歳未満で死亡する。こういった非常にアンメッドメディカルニーズが高い疾患領域でありながら実際に医薬品として認可されている割合はわずか5%しかないといった状況だ。したがいまして研究開発を加速化させるということが必然的に求められてきている。

次のスライドお願いします。このような背景があり、当社は「EVP」と呼ばれるアントレプレナーシップベンチャープログラムを通じ、武田薬品から遺伝性希少疾患を対象とする医薬品の創出を施行した研究開発型バイオベンチャーとして2008年に操業を開始した。

次のスライドお願いします。日本でベンチャーを起業するにあたり経済産業省から出されているベンチャーの一般的なビジネスモデルを参考にした。大きく三つに分類されているかと思う。このビジネスモデルを欧米のベンチャーと比較した場合、欧米ではそのほとんどが創薬パイプライン形である一方で、日本国内では創薬基盤技術型やパイプライン買収型の割合が高くなっている点が特徴となっている。

このビジネスモデルの分類と製薬企業が求めるライセンスインの時期、すなわちプルーフオブコンセプト(POC)が取れる時期を考慮すると、創薬基盤技術型やパイプライン買収型では、こちら赤字で示したように、前期の臨床試験期間がギャップとして生じていることがわかる。つまり前期臨床試験を自社単独もしくはライセンスパートナーである製薬企業と共同で実施するのがするかの選択が求められる。

次のスライドお願いします。このスライドは希少疾患に対する治療薬と一般治療薬の臨床開発にかかる費用と期間を比較した論文の抜粋データになる。遺伝性希少疾患の臨床開発は患者数も少なく、短期間でコストも低いと考えられがちですが、開発期間は全てのフェーズにおいて、希少疾患治療薬の方が長く、また第1相試験、第2相試験におきましては一般治療薬の開発費用よりも費用がかかるといった結果が示されている。その主な理由としては対象患者となる希少疾患の患者さんのリクルーティングに時間を要する点や、単価の高い専門の医療機関の確保が必要となっている点が考えられる。

次のスライドお願いします。それらを勘案してバイオベンチャーの臨床開発に必要なものは大きく二つあるかと考えている。それは資金と臨床開発のチームの形成になる。資金に関しては新株を発行するエクイティファイナンス、AMEDを代表とする補助金、助成金また金融機関などの借り入れといった方法があるかと思う。エクイティファイナンスにおきましてはベンチャーキャピタルがメインとなる、時としてExit戦略と医薬品の研究開発の方向性が合致しないといったケースがあるかと考えている。

またコーポレートベンチャーキャピタルにおきましては同業種からの出資となるケースが多いことから、いつの間にかその会社が競合相手となっているということがある。またエンジェル投資に関しましても、日本国内でのチャンネルは海外に比べて、圧倒的に少ないというのが現実的かと現実かと存じます。

またAMEDなどの助成金は株式の希釈化が起こらないといった観点から非常に有益な資金調達の方法ではあるが、ベンチャーが応募しやすい補助事業のような案件では必然的に競争率も高くなってしまい、煩雑な資料の準備を考慮するとどうしても優先順位が低くなってしまうと、こういった順序にある。

その他金融機関からの借り入れもございますが、実際には多額の研究費用を要するバイオベンチャーではあまり利用されていないと認識している。

次にパイプライン買収型のような臨床開発を軸とした研究を行うベンチャーでは大きな問題とはならないものの、アカデミアベンチャーに代表される創薬基盤技術型の技術をビジネスモデルとして提唱しているバイオベンチャーでは一から臨床開発チームのチームビルディングが必要となっている。

次のスライドお願いします。これらを勘案して、当社では創薬基盤技術から贈呈された候補物質を臨床研究に入る段階で製薬企業に導出するビジネスモデルを採用している。臨床研究はパートナー製薬企業が主導し、非臨床研究を自社単独もしくは共同で実施することを想定している。これにより短期間で多くのパイプラインを構築することが可能となる。また特に専門性の高い製薬企業の臨床開発チームにより研究が行われることで結果として自社単独で行うのに比べて、より短い期間で臨床開発を進められるといったメリットもあるかと考えている。

また一方でこのビジネスモデルにおいてもいくつかの課題があるかと認識しております。次のスライドお願いします。最も重要な課題の一つとしましてパートナー製薬企業との関係性が挙げられる。我々の候補物質しっかり上市まで繋げていってもらう必要があるためにパートナー企業との信頼関係というのは最も重要だと考えている。製薬企業の興味関心は各社によって全く異なるために、多くの製薬企業に関心を持ってもらうためにパイプラインのバラエティーを充実させるといった必要が出てくる。その中でも自社のオリジナリティを明確にして優位性のある情報を提供する工夫が重要となっている。

次のスライドお願いします。次に早期導出する上で特許の権利化が進んでいないケースというものもあるかと考えられる。したがいまして特許戦略を含む知的財産の取り扱い、パートナー企業に対し交渉可能な権利を明確にしておくということが必要となっている。

次に当然ですが臨床試験の成功確率が高いと類推できるデータを非臨床段階で取得しておく必要がある。従って純粋に研究を深堀するだけではなく、製薬企業が求める情報を先読みし、自ら生み出す自ら有益なデータを目指すという必要が出てきます。また最後に緊急コストに関しても取引先を十分に検討した上で決定する。あるいは社内プロジェクトも優先度を持って進めるということで有限な資源と資金を有効に活用する必要がある。

次のスライドお願いします。革新的な医薬品創出に向けて我々ベンチャー企業としてやらなければいけないということはまだまだたくさんある。こちらのスライドでは特に重要だと我々が考えている3つの点を挙げさせていただきました。

1点目は当たり前のことですが、自分たちが持つ技術を高めプロダクトの価値を最大化するために今まで以上に努力する必要があるということ。2点目はオープンイノベーションの推進だ。オープンイノベーションはここ数年非常によく耳にする言葉ではあるが、実践に繋げられている製薬企業というのはそんなに多くはない。我々ベンチャー企業からも多くのコミュニケーションを促す努力が必要である。

最後に成功事例の蓄積を挙げさせていただいた。海外の製薬企業ではジェネンテックやバイオジェンといったベンチャー企業から大企業に成長した成功事例が数多くあるものの、日本ではまだその数は多くないと感じている。一方で、他業種を見れば、学ぶべき事例はすぐそばに数多くあるというふうに感じている。したがいましてこういった知識、経験、ノウハウ、こういったものを業界の垣根を越えて学ぶ必要があるのではないかなというふうに考えている。

次のスライドお願いします。最後に行政の皆様への期待を記載させていただいた。国内のバイオベンチャーは国内ではなく海外で臨床試験を行うケースが非常に多いと感じている。これは臨床試験に移行するためのレギュレーションや日本での治験パフォーマンスが海外に比べて低いということが考えられる。

グローバルから選ばれる国になるため行政が中心となって国際的なポジションを高めていただきたいと考えている。2点目はバイオベンチャーへのインセンティブだ。薬価制度についてはこの有識者検討会において既に提起されているかと存じますが、是非ベンチャー企業から出される特許延長も併せてご検討いただければというふうに期待している。

3点目だが、ベンチャー企業は必ずどこかのタイミングで製薬企業へライセンスアウトする必要がある。なので製薬企業側への働きかけ、とくに製薬企業に優遇制度が適用されるような取り組みやベンチャー企業との連携推進を促すような適応制度というのが担ってくれるのではないかなというふうに考えている。これが全体として医薬品開発期間の短縮に繋がるものだというふうに考えている。

最後に海外に比べてバイオベンチャーが適用できるグラント資金供給というのが非常に限定的ではあるというふうに考えています。今後はこの柔軟な対応が可能なチャンネルが増えていくということを期待しております。発表は以上となります。ありがとうございます。

遠藤座長:はい。どうもありがとうございました。バイオベンチャーのお立場から様々な課題、またバイオベンチャーご自身が努力するべき方向性、さらには行政に対するご要望といったことまとめていただきました。ありがとうございます。それでは最後に事務局から資料が出されておりますので、事務局からの説明をお願いしたい。

◎事務局:事務局より資料を説明する。次のページをお願いします。2ページ目だが、前回の検討会で示した医薬品のライフサイクルの概要を示している。次の3ページは本検討会の昨年の議論において取りまとめた論点と主なご意見を再度掲載させていただいている。論点に記載してある通り、今回は新薬の革新的な迅速な導入に向けた議論のうち、赤囲みに終始しておりますアカデミア、バイオベンチャー企業等における新薬の開発創出を促進するための取り組みテーマとしている。なおその上にある長期収載品に関する論点につきましては次回以降の検討会において議論いただく予定としている。

続きまして4ページ目以降は今回の議題に関する資料となる。5ページ目で流れをご紹介している。5ページ目上段でございますが、一昨年の令和3年に医薬品産業政策の方向性の確認と共有を目的としまして「医薬品産業ビジョン2021」を策定している。この中の大きなテーマの一つを革新的創薬として、オープンイノベーションコミュニティを中心とした研究開発環境の整備等といった具体的な政策を各府省で進めていく旨の記載を行った。さらにその方針を踏まえて下段にある通り、令和4年に革新的医薬品創出のための官民対話を開催して取り組みの進捗について報告をした。

今回は昨年の官民対話での報告内容を引用しつつ行政の主な取り組みの概要について説明をさせていただく。次の6ページ。こちらが昨年報告した革新的創薬に向けた足元の取り組みの方向性を示しており、下の図にございます通り、創薬エコシステム構築の促進に加えまして右側にございますバイオ医薬品や再生医療等製品の推進、医療情報データ基盤活用環境の整備、臨床試験効率化や承認審査の迅速化も大きく四つのテーマについてそれぞれ検討していくとされており、この後の資料はこれらの柱の順にご説明をさせていただく。

次のページをお願いします。次の7ページからは個別のテーマの1点目、創薬エコシステム構築促進について。7ページは官民対話での報告内容を再掲させていただいている。課題としてはエコシステムの根幹となる製薬企業、アカデミア、ベンチャー企業の協業関係が十分に構築されていないとか、アカデミア、ベンチャー企業は必要な資金の調達などに課題を抱えていると指摘があった。これを受けた具体的な取り組みとして次の8ページでございます。先ほどご説明したMEDISOやJAPANヘルスケアベンチャーサミットを実施して、エコシステムの構築に向けた各種相談支援、こういう機会の提供などを実施している。

次の9ページですが、AMEDが実施している革新的医療技術研究開発推進事業のご紹介で、製薬企業と国のそれぞれの研究費を組み合わせてAMEDからアカデミアに対する助成を行うことで、医療上必要性の高い医薬品等に対する産学間協働による研究開発を推進するという取り組みだ。アカデミアや企業では単独では取り組みにくい領域に対して国費と企業原資を組み合わせて提供すること特徴としている。

次の10ページでございます。こちらは昨年の医薬品開発協議会報告されました創薬ベンチャーエコシステム構築に向けた取り組みの全体の概要の資料です。課題して水色の囲みの通り、米国に比べて日本の創薬ベンチャー移行システムでは、数千万円から数億円程度の元ピッチャーキャピタルからの出資を集めるのがやっとの状況であるといったようなことですとか、創薬ベンチャーは他の分野のベンチャーに比べてもビジネスモデルが特殊で事業の内容のリスクが大きいにも関わらず必要な開発資金が多いといったような課題が指摘されておりました。これに対して、下の囲みの通り、創薬ベンチャーに対する大胆な実用化開発支援や政府系ファンドの活動活用等も検討すべきではないかという指摘がされている。

これらの指摘を踏まえたベンチャーエコシステム構築に向けた取り組みが次のページ以降に記載している。11ページ、12ページは先ほどご説明がありましたMEDISOとベンチャーサミットを紹介でございますので割愛をさせていただく。

13ページでございます。こちらも先生方から紹介がございました創薬ベンチャーエコシステム強化事業です。先ほど申し上げましたような課題に対し対応することを目的として、具体的には個別のベンチャーキャピタルの認定を行政の方からして、そのベンチャーキャピタルが出資するベンチャー企業に対して民間出資1に対して2倍までの範囲で国からも臨床試験等の開発費用を追加的に補助するという仕組み。さらなる民間資金の呼び水としていくことを目的としている。また赤囲みにございます通り、令和4年度の補正予算からは感染症分野に限らず、支援を行うということで範囲を拡大して実施をすることにした。

続いて14ページからは、2つ目のテーマであるバイオ医薬品や再生医療等製品の申請に関して。ここに書いてある課題としては技術の専門性からアカデミア、ベンチャーの活躍が特に求められる一方で製薬企業との間で密接な関係が十分に構築できていない。これは先ほどのエコシステムです。またバイオ開発や製造に関する構造性製造設備ですとか関連する人材が国内に不足しているといったような指摘がされている。

これを踏まえました具体的な取り組みとして次の16ページ以降に具体的な政策をご紹介ししている。製造拠点整備に関する事業としては、経済産業省におきまして、ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業を実施している。内容としては今後の新たな感染症への備えとして、平時はバイオ医薬品通常のバイオ医薬品を製造しつつ感染症の感染拡大の有事においてはワクチン製造への切り替えが可能な、いわゆるデュアルユース製造設備を整備するといった企業に対して設備構築に要する費用の補助を行う事業となっている。

次の17ページはバイオ医薬品開発等促進事業を記載した。こちらではバイオ医薬品の製造技術や開発を担う人材育成、人材育成のための研修プログラムを継続的に実施してきているところ。また次の18ページには文部科学省が実施している再生細胞治療遺伝子治療実現加速プログラムの概要を示している。AMEDの方から中核拠点となる大学等に委託をする形で再生医療、細胞医療、遺伝子治療分野の研究とか、それらの分野の基盤研究などを実施するとともに、若手研究者の育成への促進とか伴走支援、マッチング支援なども合わせて実施をすることとしている。

続きまして次の19ページからは3つ目のテーマの研究開発データの基盤等の整備に向けた取り組みをご紹介している。昨年の官民対話における課題として、医療情報の収集は、国による環境整備が必要であること、創薬分野の研究開発に繋げるため、ゲノム情報の収集解析や疾患別に整備されたレジストリの構築などを通してがんや難病患者により良い医療を提供することが求められている。

それらに向けて19ページから次の20ページにかけて方向性を記載した。様々な多様性の対応の方向性が示されているが、その中の具体的な取り組みの一つとして、次の21ページからクリニカルイノベーションネットワーク(CIN事業)について紹介している。こちらは疾患登録情報を活用した治験や臨床研究が実施できる環境を整備して臨床開発を加速することを目標とした事業で、具体的には次の22ページをお願いできればと思う。

こちらは3つポイントがある。上の1ポツのレジストリ疾患登録システム自体の構築を進めるとともに、左側の2ポツでレジストリを活用した臨床研究や治験を実際に実施すること。また右のポツではそのレジストリを活用する際の留意点などをまとめたガイドラインを作成してよりその使用の促進を図ることといった取り組みをあわせて行うものとなっている。

次の23ページだが、こちらは4つ目のテーマで、臨床試験の効率化や承認審査の更なる迅速化について触れている。課題としては患者の来院に依存しない分散化臨床試験(DCT)導入に向けたルール作りや、再生医療等製品の特性を踏まえた審査要件の明確化、製薬企業等のニーズを踏まえた試験実施環境の整備、関連する人材の確保などが課題として挙げられている。

これらに対する取り組みのご紹介は25ページをお願いできればと思う。一つ目はオンライン治験信頼性確保調査事業としまして、患者に対する同意説明ですとか治験の実施またデータの信頼性の確認などの作業に関しまして、オンラインで行えるようにするために国内外の試験実施例を調査しつつ、オンライン技術を活用して治験を実施する際のガイダンスを作成する。これにより国際共同治験への参加を促進するということを目的とした事業だ。

次の26ページでは、医療技術実用化総合促進事業についてご紹介している。こちらはより大規模かつ迅速な臨床研究や治験を実施できるようにするという狙いから臨床試験EDCネットワークという試験データの入力等共通に実施可能とするための広域のネットワークを構築して短期間に多数の医療機関から効率的にデータ収集ができるにするといった基盤を整備するといった事業だ。こちらもアカデミアや企業が臨床試験等をより実施しやすくするための環境整備なる事業だ。

続きまして27ページ。こちらは先ほど挙げました四つのテーマとは別の取り組みとなるが、従来から新薬の研究開発への再投資を促進するための取り組みとして、税制上の措置につきましても研究開発税制を実施しているところだ。

具体的には上の四角囲みにございます通り、研究開発を行っている企業に対して法人税額から試験研究費の額に一定の割合を乗じた金額を税額控除できるといった制度。この研究開発税制につきまして下にあるように、今回の令和5年度税制改正において研究開発投資の維持拡大に対するインセンティブを強化するという狙いから試験研究費の増減割合に応じて、上限が変動するという制度の導入や研究開発型スタートアップの定義の見直しを行っているところだ。

最後の28ページでございます。こちらは今までお話いただきましたヒアリングの内容も含めて本日の議論、意見交換に当たっての論点を記載させていただいている。希少疾病小に難病等の治療薬など海外では新興バイオベンチャー企業、主として開発している医療上特に必要な革新的新薬について、日本での創薬や日本への上市を進めるためにどのような取り組みが必要かとさせていただいている。

前回の12月の検討会では、この革新的医薬品の創出人速度に向けた取り組みのうち、薬価制度に関するご議論をいただいたところだが、今回はそれ以外の取り組みについてご意見をいただきたいと考えている。また別の参考資料の方ではその他の政策も含めて資料を掲載しているので、必要に応じてご参照をいただければと考えている。事務局からのご説明は以上でございます。

遠藤座長:はい。どうもありがとうございました。ただいま事務局からこの革新的新薬の創出であるとかあるいはバイオベンチャーの進行に対する支援ということについて既に政府として行っていることをについて簡潔にご説明をいただきました。

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