性的マイノリティ当事者 カミングアウト前後で職場でのパフォーマンスが約4割向上 武田薬品が調査
公開日時 2025/10/08 04:51
武田薬品は10月6日、性的マイノリティ当事者の職場でのパフォーマンスがカミングアウト前後で約4割向上するとの調査結果を発表した。調査は性的マイノリティ当事者が多く集まるイベントに集った約1500人を対象に行われており、結果に偏りはあるものの、環境整備が進むことで性的マイノリティ当事者の心理的安全性が高まることなどが示唆された。同社は11日の「国際カミングアウトデー」にあわせて公表することで、カミングアウトデーへの認知を広げ、誰もが働きやすい環境づくりにつなげてもらいたい考え。
調査は、同社の従業員リソースグループが、性的指向や性自認のカミングアウトの有無、職場のDE&I施策の影響などを明らかにする目的で実施した。2024年10月に大阪で開催された「レインボーフェスタ!2024」と、25年6月に東京で開催された「Tokyo Pride 2025」において、オンラインアンケートに協力した1481人の回答をもとに分析をした。
性的指向でストレート以外を選択した回答者を対象にした質問では、カミングアウトの有無について、伝えている人は「いない」と回答した人が33.9%(265/782)だった。また、職場や学校でカミングアウトした人のうち、カミングアウト後に「パフォーマンスが向上した・向上する」と思うと回答した割合が68.9%(346/502)に達した。カミングアウト前のパフォーマンスを10段階で5とした場合、カミングアウト後のパフォーマンスの自己評価は全体平均で6.89となり、カミングアウト前に比べて38%の向上が見られた。
◎性の多様性に関する学びの機会「これまでになかった」も4割
一方、性的指向にかかわらず、対象者全員に対して、職場や学校における性の多様性に関する学びの機会について尋ねたところ、「毎年ある」と回答した人は36.4%(501/1376)、「数年に一度ある」人は13.2%(182/1376)だった。「これまでになかった」とする回答も35.4%(487/1376)あった。
なお、調査は性的マイノリティ当事者が多く集まるイベントで行われたことから、「好意的な回答が多くなり、結果の偏りが生じている可能性は否定できない」としている。
◎「取り組みが依然として不足」 効果を実感できる制度などの必要性強調
同社は、「企業・教育機関における実効性のある取り組みが依然として不足している。社会でも一定数の当事者が十分なパフォーマンスを発揮できない環境で働いている可能性も考えられる」と分析。そのうえで注目すべき点を3つ挙げ、①理解の醸成と受け入れる側への学びの機会の提供など「オープンでいられる環境整備の必要性」、②制度の利用率を可視化し当事者の声を反映した改善プロセスなどを取り込む「制度の存在だけでなく運用と実感」、③社員の安心感や自己肯定感に直結する組織の姿勢を示す「トップのコミットメントと全社的な一貫性」――が重要だと強調した。
この結果を受け、同社ではLGBTQ+に関する製薬7社(日本イーライリリー、グラクソ・スミスクライン、武田薬品、ノバルティスファーマ、ヴィーブヘルスケア、ファイザー、ブリストル・マイヤーズ スクイブ)の従業員リソースグループのネットワーク「Pharma Ally Japan」での勉強会などに活かし、イベントなどでの情報発信も行っていく方針だ。グローバルDE&Iヘッドのヘイデン・マヤヤス氏は、「タケダでは、社員一人ひとりが自分らしく働ける環境づくりに取り組んでいるが、まだ十分とは言えない。今回の調査結果を受けて、私たちも多様性を力に変えていけるよう、今後も課題の解決に向けて努力していく」とコメントしている。