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武田薬品 次期主力品oveporextonのP3で主要評価項目達成 グローバル売上20~30億ドル「強い自信」

公開日時 2025/09/09 06:30
武田薬品は9月8日、ナルコレプシータイプ1治療薬候補・oveporexton(TAK-861)の第3相臨床試験で主要・副次評価項目の全てで統計学的有意差を示したと発表した。同剤は武田薬品が次期主力品に位置付ける製品で、ナルコレプシータイプ1治療薬のファースト・イン・クラスとなる可能性がある。同社は、米国およびグローバルで2025年度中に申請する方針。次期CEO候補のジュリー・キム氏(U.S. ビジネスユニットプレジデント)は同日開いた投資家向けカンファレンスコールで、「グローバル全体での売上高がピーク時に20~30億米ドル超という見通しに対し、依然として強い自信を持っている」と自信をみせた。

World Sleep Congress 2025(世界睡眠学会)で発表された2本の国際共同第3相臨床試験「FirstLight(TAK-861-3001、168例)」と「RadiantLight(TAK-861-3002、105例)」には、19か国273例の被験者が登録された。FirstLight 試験では3投与群(1日2 回2mg 群、1mg 群およびプラセボ群)、RadiantLight 試験では、2投与群(1 日2 回2mg 群およびプラセボ群)に無作為に割り付けた。両試験の主要評価項目は、覚醒の標準的な指標である覚醒維持検査(MWT)で測定した日中の過度の眠気(EDS) の改善。主な副次評価項目は、エプワース眠気尺度(ESS)で評価したEDS 、1週間あたりのカタプレキシー発現率(WCR)の改善。12週投与時点で、主要評価項目を含む14の評価項目全てで、統計学的に有意に、かつ臨床的に意義のある改善を示した(p<0.001)。プラセボ対照試験を完了した患者さんの95%以上が長期継続投与試験に移行しており、忍容性の高さも指摘した。主な有害事象は不眠、尿意切迫および頻尿で、ほとんどの有害事象は軽度から中等度だった。

ナルコレプシータイプ1の治療をめぐっては現在、オレキシン欠乏に対応する病態生理に対する根本的な治療は現在確立されていない。対処療法が中心となっており、80%以上の患者で残遺症状を報告されるなど、アンメットニーズが高いことが指摘されている。特徴的な症状の一つであるカタプレキシーは、笑うことなどがきっかけとなっておきる脱力発作。人前で起きることもあり、患者にとって恐怖の体験となり社会的にスティグマとなる可能性があり、患者の孤立を招き、抑うつ状態に陥りやすいことなども指摘されている。

◎「ナルコレプシータイプ1治療の新たな時代の到来を示唆」 試験全体で一貫性示す

ニューロサイエンス疾患領域ユニットヘッド兼グローバル開発ヘッドであるサラ・シーク氏は、「申請の根拠となる第3相臨床試験で、これほど包括的な結果を示し、成功したのは初めてだ。異なる投与量、評価項目、試験全体でこれほどの規模で一貫性を示す事例はこれまで、私自身が長年医薬品開発にかかわってきたなかでも、oveporextonが初めてだ。P値を見なくても有効であると確信できる、非常に稀有事例の1つだ」と強調した。シーク氏は、「ナルコレプシータイプ1治療の新たな時代の到来を示唆している」と自信をみせた。

◎上市に向けてあらゆるリソース投入 診断率向上へバイオマーカー開発も

U.S. ビジネスユニットシニアバイスプレジデント・ニューロサイエンスビジネスユニット
ヘッドのヘザー・ディーン氏は、「oveporextonの上市に向けたあらゆる要素を綿密に実行するため、あらゆるリソースを投入していく」と強調。具体的には、疾病負担およびオレキシンの役割に関する啓発と認知度向上、治療へのアクセス確保、診断の進歩と加速を柱に取り組む考え。ナルコレプシータイプ1をめぐっては、正確な診断が難しいと指摘されており、米国では正確な診断を受けるまで10~15年を費やすとのデータもある。ディーン氏は、「新たなバイオマーカーの開発、革新的なウエアラブル、家庭用の検査ソリューションの開発、AIアルゴリズムの活用により、診断の精度向上に取り組んでいる」と説明。診断率を10~20ポイント向上させることができると見通した。ディーン氏は、「私たちは生物学と神経科学に関する専門知識、そして世界的な営業のフットプリントを活用し、ナルコレプシータイプ1患者の治療成果を根本から変える可能性のある、革新的な治療法を提供することに深くコミットしていく」と述べた。

同社は、oveporextonの適応拡大を見据えるほか、ナルコレプシータイプ2(NT2)と特発性過眠症(IH)を対象に「TAK-360」が第2相臨床試験段階にあり、開発を加速させている。キム氏は、今回のoveporextonの結果発表について「これは始まりに過ぎない」と強調し、オレキシンフランチャイズの拡大に意欲をみせた。


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