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武田薬品プランプ・プレジデント 創薬エコシステム構築へ「日本は独自の道切り開く必要がある」

公開日時 2025/09/04 06:45
武田薬品のリサーチ&デベロップメントのプレジデントを務めるアンドリュー・プランプ氏は米ボストンで本誌取材に応じ、日本の創薬エコシステムのあり方について、「日本はカルチャーに合致した独自の道を切り開く必要がある」との考えを示した。創薬力低下が指摘されるなかで、創薬エコシステム構築の重要性が指摘されている。「日本は、ヘルスケアイノベーションにおいて世界的なプレーヤーになる大きなポテンシャルがある」と話すプランプ氏に、日本の創薬環境をめぐる課題と、描く未来の絵姿を語っていただいた。(望月 英梨)

Monthlyミクス9月号の巻頭特集では、「世界に挑む!“Takeda”の挑戦 米ボストン発 創薬エコシステムの未来」と題し、米ボストンでの取材を通じて見えた、創薬エコシステムと武田薬品の挑戦をリポートしました。プランプ氏の一問一答も掲載しています。(会員限定、記事はこちらから

◎湘南発の次期主力品候補 ナルコレプシー治療薬候補・oveporexton(TAK-861)

「日本には優れたサイエンスがあり、新薬の発見と開発で長い成功の歴史がある。政府もイノベーションを推進しており、そのポテンシャルは計り知れないほど、非常に高いと考えている」-。プランプ氏は、日本の可能性についてこう話す。

武田薬品が次期主力品に位置付けるナルコレプシー治療薬候補・oveporexton(TAK-861)も日本のサイエンスと武田薬品の湘南研究所の英知を結集した、湘南研究所発の自社創薬の化合物だ。すでに公表されたトップラインデータでは、ナルコレプシータイプ1を対象とした2本の第3相臨床試験で主要評価項目・副次評価項目を達成。試験結果は近く国際学会での発表も予定されており、日本を含むグローバルで2025年度中の申請を目指している。創薬の歴史を振り返っても、多くの革新的新薬を創出してきたと振り返る。

◎カギ握る“真のグローバル化”と“アントレプレナーシップの醸成”

現在、創薬力の低下が指摘される背景の一つに、ビジネスモデルをめぐる課題があると指摘する。グローバル全体で見たときに日本の市場シェアが低下するなかで、「多くの日本企業は国内市場に集中しすぎて、グローバル市場を見据えていなかったため、規模がどんどん小さくなっていった。一定の規模がなければ、イノベーションを創出し続けるのは難しくなってしまう」と指摘する。「成功確率が低下し、世界的に医薬品の開発コストが高騰するなかで、特定の地域だけで医薬品を開発するメリットはない。日本以外の市場をライセンスによるロイヤリティ収入に頼り続けるのではなく、グローバル化を意図し、そこから価値を生み出す能力を企業が持たなければならない。これらが成功の最大のポイントだ」と述べ、真のグローバル化を目指す必要性を強調する。

そのうえで、「武田薬品はいち早くグローバル市場を競争相手としてビジネスモデルを構築してきた」と述べ、「我々は日本に本社を置くグローバル企業だ」と胸を張る。実際、ミレニアム買収以降、米ボストン(ケンブリッジ)に根差した活動を続けることで、現在ではケンブリッジ(ボストン)のエコシステムで最大の企業雇用主と言われるほど、存在感が増してきていることも取材では耳にした。

もう一つの日本をめぐる課題が、“アントレプレナーシップ(起業家精神)”だ。「アントレプレナーシップの溢れるエコシステムを構築することがもっとも重要であり、難しいことだ」とプランプ氏は話す。資金だけでなく、“経験豊富な人材”の重要性を強調。「そこに到達するためには、多くの試行錯誤と失敗を繰り返す必要がある。失敗は日本のカルチャーではあまり歓迎されないが、学ばなければならないことだと思う。失敗しても平気な人などいない。しかし、真のアントレプレナーとは、“投資して失敗し、そこから学び、また失敗から学び、最終的には成功する”という覚悟を持つ人のことだ。これは非常に重要な考え方であり、定着させる必要がある」と強調する。

◎“効率化”の観点が重要に

そのうえで、日本のエコシステムの未来の姿として「効率性」の重要性にも言及した。プランプ氏は、「創薬にかかるコストは依然として非常に高い。日本に期待するのは、継続的に投資したコストを回収できる仕組みが構築されることだ。コストを大幅に削減し、生産性と効率性を高めることで優位性を発揮するチャンスがある。私が新たなエコシステムを立ち上げるのであれば、より少ないコストでより多くのことを実現できる環境をどう構築するか考える」と述べ、創薬の基盤整備の重要性も口にした。

「米国を含めた世界的に、医療費、薬価への圧力が強まるなかで、製薬企業の研究開発資金が減少することも予測される。より少ない研究開発費で、より効率的にビジネスを進める方法を考える必要がある。日本で、効率的なエコシステムを構築することができれば、より大きな影響力を発揮できると思う」と強調した。


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