外来通院中の軽症脳梗塞患者の脳梗塞１年再発率は約５％で、特にアテローム血栓症を複数合併する患者では再発率が高いことが分かった。慶應義塾大医学部神経内科教授の鈴木則宏氏が４月15日の一般口演で、「虚血性脳卒中患者における血管イベントの発症率に関する前向き観察研究（EVEREST）」の解析結果を発表する中で明らかにした。

研究は、①経口抗血小板療法下における脳梗塞の再発を含むアテローム血栓性イベントの発症率を評価する②実臨床下での経口抗血小板薬の使用状況を調査することで、脳梗塞の再発をはじめとしたアテローム血栓症に対する抗血小板薬の効果を把握し、今後の治療に活用する――ことを目的に、全国313施設で実施された。

対象は、経口抗血小板薬を内服する外来虚血性脳血管障害患者（発症から２週間～６カ月、modified Rankin Scale（mRS）≦２）。心原性脳梗塞患者や新たな脳出血が確認された患者は除外した。

患者登録後、医師の裁量により、抗血小板療法（アスピリン、クロピドグレル、チクロピジン、シロスタゾール）と合併症に対する治療を実施し、約１年間（12±３カ月間）追跡した。

主要評価項目は、致死性・非致死性脳梗塞の発症。登録期間は、2006年11月～08年４月までで、2009年７月に研究は終了している。

鈴木氏は、登録時の解析結果からみられた登録患者の特徴を①初発脳梗塞患者が約85％、ラクナ梗塞が45％含まれている②mRSが０［全く症状なし］～１［何らかの症状はあるが、障害はない］の症例が８割を超える③既往歴として、虚血性心疾患（5.2％）、末梢動脈疾患（0.6％）が非常に少ない④危険因子の保有率は、高血圧（約75％）、糖尿病（約26％）、脂質異常症（約60％）で、脂質異常症の保有率が他の日本人の疫学研究に比べて高い――と説明した。

◎冠動脈イベントの発症は0.6％と低値に

解析対象である3452症例を、Kaplan-Meier法を用いて解析したところ、主要評価項目の脳梗塞の再発は4.7％（95％CI：4.0～5.6）だった。発症した157症例のうち、致死性脳梗塞患者が４症例含まれていた。

サブ解析では、①メタボリックシンドローム②虚血性脳血管障害（脳梗塞、一過性脳虚血発作（TIA））の既往③アテローム血栓症（脳梗塞、虚血性心疾患、末梢動脈疾患）を複数合併――の３集団に分け、脳梗塞の再発率を検討した。

それによると、メタボリックシンドロームでは5.9％（95％CI：4.6～7.5）、虚血性脳血管障害患者では5.9％（95％CI：4.1～8.4）、アテローム血栓症を複数合併している患者では11.4％（95％CI：4.9～25.2）といずれも高い発症率となった。

特に再発率が高かったアテローム血栓症を複数合併している患者だが、脳梗塞以外のアテローム血栓症の既往がある患者の再発率は5.2％（95％CI：2.7～10.0）で、脳梗塞の既往がある患者で脳梗塞の再発率が高い傾向となることが分かった。

一方、冠動脈イベント（心筋梗塞もしくは不安定狭心症の発症）の発症は、0.6％（95％CI：0.3～0.9）と低い発症率となった。発症した18症例のうち、心筋梗塞は５症例、不安定狭心症は13症例だった。

◎REACH Registryでもアテローム血栓症複数合併で再発リスク上昇

鈴木氏は、この結果を、日本の疫学研究である久山研究やREACH Registry（日本人サブ集団）の結果と比較し、脳卒中の１年再発率は、久山研究（脳梗塞後を対象）の10％、REACH Registry（虚血性脳血管障害（TIA含む）後を対象）の2.77％の中間に位置するとした。

さらに、アテローム血栓症を複数合併した患者では、REACH Registryでも、脳梗塞の再発率が上昇していることを紹介し、アテローム血栓症が重複した症例の脳梗塞再発に留意することの必要性を呼びかけた。