ロシュCEO 事業の多様化はせず革新的医薬に注力へ、新興市場にも積極投資
公開日時 2010/10/13 04:00
ロシュ・グループのセヴリン・シュヴァンCEOは10月8日に都内で開いた「2010年経営説明会」で、中外製薬の永山治社長兼CEOとともに会見した。シュヴァン氏は今後の経営戦略について「競合他社の多くは様々な領域への多様化を図っているが、当社は今まで得意としてきた『革新』や『科学』に焦点を絞り続けたい」とし、医薬品・診断薬事業でハイテクかつ革新的医薬品ビジネスにフォーカスしていく従来通りの方針を維持すると説明した。また、米欧での医薬品の価格への圧力が強まっていることに迅速に対応するため、収益性を確保し、コスト構造を変化させることを目的に、グループ全体で11~12年度に「オペレーショナル・エクセレンス・イニシアチブ」を実施することを明らかにした。
シュヴァン氏は米欧での医薬品の価格への圧力や規制要件の増加など「製薬業界は今まで以上のチャレンジ、挑戦を受けている。迅速に対応する必要がある」と指摘。11~12年度に「オペレーショナル・エクセレンス・イニシアチブ」を実施する方針を示したが、中外製薬に関しては「中外はロシュのパフォーマンスに貢献して頂いている。直接、中外のオペレーションに影響を与えることはない」と述べた。
自社の製品ポートフォリオに関しては「特許満了の影響が非常に少ない。10年半ばまで特許満了による売上損失への影響は限定的であり、業界の環境変化に安定的に適応することができる」と自信を示した。同社は世界トップのバイオテク企業であり、バイオ製品が中心なため、長期にわたる特許期間を有し、バイオ後続品にとっての大きな参入障壁があることから、この点がアドバンテージになるとの見通しも示した。
今後は新興市場にも積極投資する方針だ。既にインターナショナル地域(米国、西ヨーロッパ、日本を除く市場)の売上はグループ全体の27%(10年上期)を占め、対前年比15%増と先進国市場をはるかに上回る勢い。それを牽引しているのが、ハイテクの革新的医薬品であり、がん領域の売上に占めるインターナショナル地域の割合は22%だが、「人口に占めるカバー率は少ない。まだまだ大きな機会が存在する」として、乳がん治療薬ハーセプチンやリンパ腫治療薬マブセラ/リツキサンなどについても大きな伸長が見込めると期待を示した。
中外製薬・永山社長 10年後半にトップ企業目指す
中外製薬の永山治社長兼CEOは、ロシュとの戦略的アラインアンスは「第2段階に入った」と解説。10年以降はロシュ開発品についてグローバル同時開発を進めるほか、国内ではがん領域でシェア17.3%(09年)を獲得し、トップに躍り出て、成長率でもトップになったと強調した。売上に占めるバイオ製品の比率はタミフルを含めると49%とほぼ半数。
同氏は10年後半にはトップ製薬企業を目指すと明言。国内シェア、連結営業利益率、従業員一人当たりの連結営業利益額、MR一人当たりの国内売上高全てで上位3位以内を目指すともに、戦略疾患領域(がん、骨・関節、腎)で国内売上トップシェア、海外売上比率の向上により、2010年は売上高4185億円、営業利益700億円を目指す計画を示した。