NEC 中外製薬とがん薬剤併用療法の効果をAIで予測する実証実験 従来の手作業より作業時間50%短縮
公開日時 2025/06/19 04:50
NECは6月18日、がん薬剤併用療法の効果をAIで予測する実証実験を行い、論文や臨床データを手作業で分析する従来の手法に比べて作業時間を50%短縮できる可能性が示されたと発表した。今回の実証実験は、中外製薬と共同で2024年12月~25年3月に行ったもの。NECは、今回のAI予測モデルを用いることで、研究者が効率的かつ迅速に薬剤の組み合わせ候補を発見することを支援し、データに基づく薬剤の組み合わせ候補の予測に貢献できると強調。引き続きソリューショの開発と実用化を進める方針を明らかにした。
がん治療においては、2種類以上の薬剤を組み合わせる薬剤併用療法が選択肢の一つとして用いられている。一方で併用療法に用いる薬剤の組み合わせ予測には、膨大な論文や臨床試験データなどをもとに、薬剤の組み合わせ実績や関連する疾患、作用機序、適応症などの情報を手作業で調査、分析する必要があり、多大な時間を要することが課題となっていた。
NECはこうした課題に対し、臨床試験データベースAACTや、生化学データベースChEMBLで公開されているがんや薬剤に関する膨大な情報を、自社が有する独自のグラフベースのAI技術に学習させ、治療効果を高める薬剤の組み合わせを予測するシステムを構築した。今回の実証実験では、臨床試験データベースから約400組のがん治療薬の組み合わせ情報をランダムに抽出。薬剤の組み合わせ情報のうち、片方の薬剤情報をAI予測システムに入力し、併用療法によってがん治療の効果が高められる薬剤として、もう一方の治療薬を予測できるかを評価した。
その結果、AI予測システムが提示した薬剤の組み合わせ候補予測の精度は事前に規定した基準を越え、また予測根拠の納得性が高いことを確認した。また、薬剤の組み合わせ予測に要する作業時間を従来の手法に比べて約50%短縮できる可能性があることを確認した。同社は、今回の成果により、製薬企業の研究者は、併用薬候補の早期発見、新規の組み合わせの提案、常に最新情報から併用薬選定などに活用することが可能になるとしている。