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中外製薬 腎性貧血治療薬ミルセラ59億円 計画の半分以下に

公開日時 2012/02/02 04:01

中外製薬は2月1日、2011年12月期の通期決算(1月~12月)を発表した。主力品の腎性貧血治療薬エポジンの後継品で、競合品からのシェア奪還を課されている月1回製剤の同ミルセラの売上は59億円にとどまった。ミルセラは、エポジンからの切り替えを含めて、当初計画で124億円の売り上げを見込んでいた。

全体の業績でも減収減益となったが、これについて同社では東日本大震災での宇都宮工場と製造委託先の被災による出荷調整が昨年10月まで長引いたことを指摘。ミルセラも同様で、常務執行役員の戸早正昭営業本部長は、出荷調整のほかミルセラの発売が1カ月遅れたことで、十分なプロモーション活動も行えなかったことに加え、これまでになかった月1回投与への不安が当初臨床側にあったことを、計画未達の理由に挙げた。

一方、12年のミルセラ売上計画は11年の5倍増。戸早氏は、昨年11月ごろから病院で採用の動きが出て、透析クリニックへの「十分な供給回復」も進んできていることや、ミルセラの効果、使用上の簡便性の浸透度合いを挙げ、計画達成に自信を見せた。

◎主力のがん領域 前期比0.5%増

他の11年の業績では、同じく震災の影響で昨年4月に発売した活性型ビタミンD3製剤・エディロールも通期13億円と振るわなかった。ただし、骨・間接領域については、関節リウマチなどの追加承認を取得後、売上を大きく伸ばしているヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体・アクテムラの伸長もあって、領域別では最も高い売上伸長率となった。

主力であるがん領域は、売上伸長率は0.5%増にとどまった。ただ、アメリカで乳がん適応が取り消しとなったアバスチンについては、国内では同適応を残したままのため、その影響も懸念されたが、製品全体としては発売開始以来の毎年2桁成長は達成できなかったものの、前年比で売上伸長は続いている。

一方、抗インフルエンザ薬・タミフルは、行政備蓄による売上が前年比8割減になったことも影響して、前年比半減以下まで落ち込んだ。

◎小坂専務執行役員が次期社長に 永山氏は代表権ある会長に

同社は決算発表と同時に3月28日付で小坂達朗・現取締役専務執行役員が代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)に就任するトップ人事を発表した。この人事により、永山治・現代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)兼COOは代表権を有する会長に就任してCEO兼務を続けるほか、上野幹夫・現代表取締役副社長は代表取締役副会長となる。
(写真は右から小坂氏、永山氏、上野氏)

同社では今回の社長人事について「CEO が全社経営戦略および重要案件の意思決定を担い、COO が業務執行上の意思決定を行う体制とし、意思決定の迅速化ならびに経営力の一層の強化を図るため」と説明している。

小坂新社長は現在58歳。76年に中外製薬に入社し、95年4月には中外ファーマ・ヨーロッパ社(イギリス)副社長、02年10月に執行役員、04年10月に常務執行役員を就任を経て、10年3月から現職。

◎小坂氏 短期的課題は営業力 MRとeマーケで競争力強化

同日記者会見が行われ、小坂氏の起用理由について永山社長は、営業、経営企画、海外経験など幅広く事業に携わり、成果を上げてきたことを強調。同席した小坂氏は、「トロイカリーダーシップチームで、トップ製薬企業になり、中外製薬のブランドの確立に尽力したい」と抱負を述べ、短期的な課題として、顧客に信頼される営業力・マーケティングを挙げ、「MRだけでなくeマーケティングなど新たなものも取り入れて、より強くしていきたい」との考えを示した。

トップ交代とはいえ、CEOは永山氏であり、経営の責任者であり続ける。COOの小坂氏との役割分担が分かりにくいところだが、その点、永山氏は、ロシュとの提携効果をさらに上げ、同社を成長軌道に乗せていくていくことに加え、世界的な社会保障・医療財政のひっ迫、新薬開発の生産性の低下など取り巻く環境が大きくかつ急速に変化してきていることを挙げ、全て自身で判断、実施することが難しくなっていることを示唆し、役割分担する必要性を指摘。

そこで、永山氏が経営戦略の策定、経営の意思決定をし、戦略・方針に従った迅速な実行を小坂氏が担い、上野氏がコンプライアンス、ガバナンス体制を固めるという役割分担をし、「目指すトップ製薬企業像を作り上げていきたい」と説明した。社長は、中外内部からの起用になったが、親会社のロシュとしても中外製薬の自主経営を尊重している結果という。

【通期連結実績(前年比) 12年度通期予想(前年度比)】
売上高  3735億1600万円(1.6%減) 4185億円(12.0%増)
営業利益 624億3000万円(5.7%減) 800億円(28.1%増)
経常利益 635億8500万円(2.3%減) 805億円(26.6%増)
純利益  352億3400万円(15.0%減) 490億円(39.1%増)

【通期主要製品の国内売上(前年同期) 12年度予想、億円〕

がん領域 1419(1412) 1654
アバスチン 564(526) 688
ハーセプチン 259(253) 273
リツキサン 229(230) 253
ゼローダ 100(107) 168
ノイトロジン 94(104) 97
タルセバ 83(79) 82
フェマーラ 36(32) 43
カイトリル 34(55) 31

骨・関節領域 662(626) 703
エビスタ 185(187) 169
アクテムラ 175(141) 183
スベニール 130(136) 147
アルファロール 112(123) 80
エディロール 13(-) 78

腎領域 507(574) 627
エポジン 288(400) 168
ミルセラ 59(-) 296
オキサロール 122(120) 135
レナジェル 31(49) 23

移植・免疫・感染症領域 228(258) 256
ペガシス 83(105) 121
コペガス 33(45) 27
セルセプト 57(52) 60
ロセフィン 51(54) –

その他領域 338(374) 300
シグマート 111(130) 98

海外 396(330) 402
アクテムラ 205(127) 241
ノイトロジン 156(170) 131
シグマート 21(22) 16

タミフル 87(182) 96
 うち行政備蓄等 33(166) 3
 

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