中外製薬のエレビジス点滴静注 3億497万2042円で薬価収載へ 安全性の対応求める声 中医協
公開日時 2026/02/16 04:53
中医協総会は2月13日、中外製薬のエレビジス点滴静注を1患者当たり3億497万2042円で薬価収載することを了承した。国内では過去最高の薬価となる。収載は2月20日の予定。同剤は2025年5月に条件・期限付き承認を取得。しかし、その後海外で死亡例が報告されるなど、有効性・安全性両面で懸念が示されたことから、検証と審議に時間が費やされた経緯がある。条件及び期限付き承認を受けた再生医療等製品に対して今年1月から運用が開始された新ルールも初めて適用された。ピーク時の売上高は2026年度の113億円を見込む。支払側の高町晃司委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、「患者の安全性は必ず確保されるべきだ。当局には、慎重に対応していただきたい」と念を押した。
◎条件・期限付き承認を受けた再生医療等製品の新ルールを初適用
条件及び期限付き承認を受けた再生医療等製品については、今年1月14日の中医協総会で、新たなルールの運用となることが了承されており、エレビジス点滴静注が初の適用となった。新たなルールでは、平均的な営業利益率に「0.5」を乗じた値とするほか、有用性系加算は本承認時に改めて該当性を判断することなどとされている。
エレビジス点滴静注も、営業利益率は平均的な係数である15.8%に0.5を乗じた「流通経費を除く価格の7.9%」が用いられた。また、希少疾病用再生医療等製品に指定されていることから市場性加算(Ⅰ)に該当し、10%の加算を取得したが、製造原価開示度50%未満ということで加算ゼロとなった。
◎ピーク時は26年度113億円 予測投与患者数は37人 中長期的には20人前後で推移
同剤のピーク時の売上高は26年度の113億円を見込む。予測投与患者数は37人。厚労省保険局医療課の清原宏眞薬剤管理官は、「発売後数年間は、現在の患者さんが待っており、留まっている3~7歳までの患者が使う。一時期は増えるが、中長期的には、基本的に新規発症の患者のみ対象になると考えており、年間およそ20人前後と予測を立てている」と話した。
◎条件・期限付き承認後に有効性・安全性両面から懸念 肝不全の死亡例、欧州不承認で
エレビジス点滴静注をめぐっては、歩行可能なデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を適応症として、5月13 日に条件・期限付き承認を受けた。一方で、海外で歩行不能な患者で致死的な経過を辿った急性肝不全が2例報告されたことをきっかけに、同剤の安全性に焦点が当たった。さらに、欧州委員会(EC)は、有効性が十分に証明されていないという見解から、Conditional Marketing Authorization(CMA)を不承認とする最終判断が行われていた。
こうした状況を受け、厚労省は改めて検討を実施。厚労省医薬局は1月14日に開かれた中医協総会に、「長期の経過を確認することにより、有効性の確認が可能な状況になることが合理的に予想される」などと報告。本承認に至る可能性を示し、薬価収載に向けた手続きを進めることが大筋了承されていた。
◎診療側・江澤委員「薬事承認段階での臨床的有効性・安全性調査、一層の取組みを」
診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「希少疾患に対する製品であり、使用を待ち望む小児の患者やご家族の方々に有効で安全であることを担保して届けることが中医協のミッションとして、大変重要だ」と述べ、薬価収載を了承した。そのうえで、エレビジスをめぐる議論は保険収載前の薬事承認の段階で議論をすべきだとの主張した経緯を振り返り、「これまでにない高額な製品の保険適用でもあり、今後の薬事承認における議論について、臨床的な有効性や安全性に関する調査などに、より一層の取り組みをお願いしたい」とクギを刺した。
◎支払側・松本委員 企業は「安全な使用サポートと有効性データ収集を」
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「これまで有効性の確からしさに加え、保険診療の大前提となる安全性の確保について、慎重に議論してきた経緯がある」と振り返り、「今後、医療現場においても、患者の十分な理解のもとで、使用されるよう丁寧に説明をし、有害事象が発生した場合には、速やかに対応していただきたい」と述べた。また、これまで条件・期限付き承認の製品が本承認に至っていないことから、「企業は、安全な使用について医療機関を支援するとともに、有効性のデータをしっかり収集し、正式承認に確実につなげていただきたい」とも述べた。
▽エレビジス点滴静注(デランジストロゲン モキセパルボベク、中外製薬)
類別:遺伝子治療用製品(ウイルスベクター製品)
効能・効果:デュシェンヌ型筋ジストロフィー
ただし、以下のいずれも満たす場合に限る
・抗AAVrh74抗体が陰性の患者
・歩行可能な患者
・3歳以上8歳未満の患者
薬価:1患者当たり304,972,042円
市場予測(ピーク時2年後):投与患者数37人、販売金額113億円
加算:市場性加算(Ⅰ)(A=10%)「本剤は希少疾病用再生医療等製品に指定されていることから、加算の要件を満たす」
新薬創出等加算:該当する(主な理由:希少疾病用再生医療等製品として指定)
費用対効果評価:該当しない ※改めて承認を受けた際にその該当性を判断する
マイクロジストロフィンをコードする遺伝子を搭載した非増殖性組換えアデノ随伴ウイルスを成分とする再生医療等製品。用法・用量は、「通常、体重10kg 以上70kg 未満の患者には1.33×1014 ベクターゲノム(vg)/kg を、体重70kg 以上の患者には9.31×1015vg を、60 分から120 分かけて静脈内に単回投与する。本品の再投与はしないこと