2012年の新薬発売に重点領域変化の傾向
公開日時 2013/02/19 04:00
米国の2012年における新薬承認状況を振り返ってみると、新薬と生物製剤を合計して39剤という数も15年ぶりに最多となったばかりでなく(FDA医薬品評価研究センター(CDER)承認分)、質も高いものとなった。さらに、承認薬をみると、製薬企業のR&D投資が、従来のプライマリケア領域からがんや希少疾患などスペシャリティ領域へシフトしてきていることがうかがわれる。
しかし、なかには、米ファイザー社の経口関節リウマチ治療薬Xelijanz(トファシチニブ)のように巨大マーケットをターゲットとしたブロックバスターの可能性を持つ新薬もある。スイス・ロシュ社/ジェネンテク社の乳がん治療薬Perjeta(pertuzumab)や米Medivation社/アステラス製薬の前立腺がん治療薬Xtandi(エンザルタミド)も大きな市場をターゲットとしているが、ジェネンテク社/Curis社のErivedge(vismodegib)は切除不能および放射線療法不能あるいは術後再発の転移もしくは局所進行基底細胞がんを適応とし、市場規模は小さい。同剤は、ファースト・イン・クラスのヘッジホグ・パスウェイ阻害剤である。
製薬企業がスペシャルティにシフトしても、問題はこれからで、1990年代から2000年初頭まで市場を支配してきたプライマリケア医薬品の特許切れ後の穴を埋めることが出来るかだ。
今後のビジネスモデルは、小規模で小回りの利くバイオテク企業が最適かも知れない。2012年に承認取得した製品でもバイオテクが寄与したものが見られる。Onyx Pharmaceuticals社は自力で多発性骨髄腫治療薬Kyprolis(carfilzomib)を商業化した。しかし、多くは大企業との提携で商業化を行っている。Medivationはアステラスと提携してXtandiを、Ironwood Pharmaceuticals社はForest Laboratories社と便秘治療薬Linzess(linaclotide)を開発した。FDAのCDERが、2012年に承認した画期的新薬および生物製剤32剤のうち15剤はバイオテク企業、中小規模企業による申請あるいは共同申請だった。
2012年に承認された製品がすべて2012年に発売されるのではなく、年末に承認取得したものなどがある。2013年に発売予定の製品には、Aegerion Pharmaceuticalsの高コレステロール血症治療薬Juxtapid(lomitapide)、ブリストルマイヤーズスクイブ社(BMS)/ファイザー社の経口抗凝固薬Eliquis(アピキサバン)、NPS Pharmaceuticals社の短腸症候群治療薬Gattex(tedulglutidc)、ジョンソン・エンド・ジョンソン社(J&J)の多剤耐性結核治療薬Sirturo(bedaquiline)などが相次ぐ。
2012年に承認取得した薬剤のなかには、次のLipitorやPlavixは見当たらないが、新薬の特徴やその市場を考えると、2013年は、2010年に始まった新薬回復の道を継続して辿りそうだ。2011年には、いくつかの傑出した薬剤が見られた。BMS社の転移黒色腫治療薬Yervoy(イピリムマブ)、J&J社の抗凝固薬Xarelto(リバーロキサバン)および前立腺がん治療薬Zytiga(abiraterone)、Vertex Pharmaceuticals社のC型肝炎治療薬Incivek(teraprevir)、Regeneron Pharmaceuticals社のEylea(アフリベルセプト)などがある。これらは、すぐには大きな売上を示していないが、Yervoyは年商1億2100万ドル、Eyleaは年商1億2400万ドルを記録した。2012年に承認取得した薬剤もすぐには採用されるレベルではないが、いくらか時間をかけてブランドが根付く製品になるとみられる。
IMSヘルスのMarketing Analytics and Services担当のBill McClellan氏は、本当に特徴ある新薬は上市後最初の12か月で4億ドルを売り上げるべきと指摘しながら、今日の市場ではこれら薬剤はとても希な存在になっていると話す。一方、コンサルタント企業Kantar HealthのAlan Gray氏は、「ブロックバスターの定義が変化してきている」と述べたうえで、「私は(ブロックバスターについて)違った見方をする。その薬剤は会社の期待に応えるか?それは素早く上市できるか?あるいは遅れるのか」と述べ、売上の大きさがブロックバスターを定義するのではないとの考えを示した。
2012年に承認取得した注目すべき10剤(製薬企業・製品名、適応症、承認日、発売時期(承認から発売までの期間)の順)
*ロシュ社/ジェネンテク社・Perjeta、ファーストラインのHER2陽性転移乳がん、6月8日、6月。
*Vertex社・Kalydeco、嚢胞性線維症、1月31日、2月(直ちに)。
*Affimax社/武田薬品工業・Omontys、貧血、3月27日、4月24日(1か月)。
*Vivus社・Qsymia、体重管理、7月17日、9月17日(2か月)。
*Onyx社・Kyprolis、多発性骨髄腫、7月20日、7月後半(1週間)。
*Gilead社・Stribild、HIV感染症、8月27日、8月(直ちに)。
*Forest社・Linzess(提携先:Ironwood社)、慢性便秘を伴う過敏性腸症候群、8月30日、12月17日(3.5か月)。
*アステラス製薬/Medivation社・Xtandi、前立腺がん、8月31日、9月17日(2週間)。
*サノフィ社・Aubagio、多発性硬化症、9月12日、N/A。
*ファイザー社・Xelijanz、関節リウマチ、11月6日、11月後半(数週間)。
The Pink Sheet 1月28日号