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【UEGW事後特集】アダリムマブ クローン病の寛解導入療法での腫瘍、感染症リスク上昇否定?

公開日時 2012/11/05 05:00

クローン病患者の寛解導入療法において、アダリムマブが免疫抑制剤と比べ、重症度が高い患者に処方されているにもかかわらず、患者背景を調整すると、腫瘍、感染症、全ての入院などの安全性で、大きな差がみられないことが分かった。米国の健康保険請求データベースのデータを後ろ向きに解析した結果から示唆された。10月20~24日までオランダ・アムステルダムで開催された第20回欧州消化器病週間(United European Gastroenterology Week:UEG Week)の22日に開かれたセッション「Free PaperSession:IBD and malignancy」で、フランスCentre Hospitalier Universitaire de LilleのJean-Frédéric Colombel氏が発表した。


研究グループは、クローン病の寛解導入療法における、アダリムマブと免疫抑制剤との間の安全性を比較する目的で、米国の健康保険請求大規模データベースを後ろ向きに解析した。
対象は、2001~10年までに、2回以上クローン病治療のために保険請求をしたことがあり、寛解導入療法としてアダリムマブか免疫抑制剤を処方されていた18~64歳の患者で、6カ月以上の統計データがあることを条件とした。解析対象は、アダリムマブ群2195例、免疫抑制剤群6477例。評価項目は、腫瘍、感染症または重篤な感染症(入院または救急治療を必要としたもの)、救急医療の利用(入院および緊急治療室)、全ての理由による入院。



患者背景は、アダリムマブ群は、免疫抑制剤群と比べて、平均年齢が低く(40.4歳 vs 41.1歳)、男性の割合が低いほか(40.5% vs 44.0%)、 コルチコステロイド(60.5% vs 51.4%)、抗生物質(48.2% vs 41.8%)の処方率や、貧血(18.1% vs 15.2%)、喘息(4.6% vs 2.9%)、うつ病(11.2% vs 8.0%)、関節リウマチ(6.1% vs 2.6%)、瘻孔(7.9% vs 4.3%)などの合併症が多く、これらの項目には2群間に有意差がみられた(p<0.05)。追跡期間(中央値)は、アダリムマブ群で330日、免疫抑制剤群で427日だった。



その結果、アダリムマブ群は免疫抑制剤群と比べ、感染症(1年時点:14.1% vs 11.8%、3年時点:35.1% vs 25.6%、p=0.001)と重度の感染症(1年時点:5.8% vs 4.4%、3年時点:12.5% vs 8.3%、p=0.004)の発生率が有意に高かった。その他の項目では両群に有意差は、みられなかった。Kaplan-Meier法による生存曲線により、腫瘍の再発がない割合は、1年時点でアダリムマブ群で97.4%、免疫抑制剤で96.8%、3年時点でアダリムマブ群で93.7%、免疫抑制剤群で91.7%で、両群間に差はみられなかった(p=0.266、log-rank)。
重篤な感染症を発生しない生存は、1年時点ではアダリムマブ群で94.2%、免疫抑制剤群で95.6%、3年時点でアダリムマブ群で87.5%、免疫抑制剤群で91.7%で、アダリムマブ群で有意に高い結果となった(p=0.0043、log-rank)。


全ての理由による入院を発生しない生存は、1年時点ではアダリムマブ群で75.7%、免疫抑制剤群では76.4%、3年時点ではアダリムマブ群では56.6%、免疫抑制剤群では60.8%で、両群間に有意差はみられなかった(p=0.6811)。


ベースライン時に有意差がみられた、年齢、性別、検査からの期間、薬物療法、全ての理由による入院/緊急入院のベースライン時の頻度などについて調整を行って、Cox比例ハザードモデルを用いて解析した結果、腫瘍(ハザード比(HR):0.924、95%CI:0.669-1.277、p=0.636)、感染(HR:1.170、95%CI:0.998-1.371、p=0.053)、重篤な感染(HR:1.174、95%CI:0.906-1.225、p=0.225)、救急医療の利用(HR:1.005、95%CI:0.916-1.102、p=0.924)、全入院(HR:0.934、95%CI:0.831-1.050、p=0.253)で、いずれも2群間に有意差はみられなかった。


Colombel氏は、前向きに検討されていないことや、重症度や追跡期間中の併用薬など、多くの因子が調整が不可能であったことなど、研究に限界があることを指摘。その上で、「今回の解析では、寛解導入療法で、アダリムマブを処方された症例は、免疫抑制剤を処方された患者に比べ、重症度が高かったにもかかわらず、腫瘍や感染症、重篤な感染症、全ての理由による入院、救急医療の利用において、リスクは上昇していないことが分かった」と結論付けた。

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