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【ADA特別版】ORIGIN インスリン グラルギン早期導入で心血管イベント、がんリスク上昇せず

公開日時 2012/06/20 05:00

心血管リスクが高い、早期糖尿病患者または空腹時血糖異常(IFG)、耐糖能異常(IGT)症例を対象に、インスリン グラルギンの早期導入を行った結果、標準治療に比べ、心血管イベント、がんの発生リスクを上昇させないことが分かった。インスリン グラルギンの早期導入と標準治療とを比較検討した国際無作為化試験ORIGINの結果から分かった。カナダMcMaster UniversityのHertzel Gerstein氏らが、6月8~12日まで、米国・フィラデルフィアで開催された第72回米国糖尿病学会(ADA)のORIGIN試験の特別オーラルセッションで11日発表した。

同試験は、2×2factorial試験と実施され、空腹時正常血糖(≤5.3 mMまたは95 mg/dL)を治療目標にインスリン グラルギンを早期導入することで、標準治療に比べ、心血管イベントの発生リスクを低下できるか、をメイン試験で検討した。それと同時に、オメガ3脂肪酸の併用により心血管死の発生リスクが低下するかどうかについても検討した。

試験の対象は、50歳以上で、心血管リスクが高い、IFGまたはIGT、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)で新型2型糖尿病とされた患者、または従来型2型糖尿病患者で、40カ国、573施設から1万2537例が登録された。追跡期間(中央値)は6.2年。

患者背景は、2型糖尿病既往(~5.4年)が82%、新規診断が6%、IFGかIGTが12%だった。空腹時血漿血糖値(FPG)は125 mg/dL(中央値)、A1Cは6.4%(中央値)だった。平均年齢は63.5歳、女性が35%を占めており、高血圧は80%、心血管疾患既往が59%。血圧は146/84、BMI 29.8、LDLコレステロール値112 mg/dLであった(全て平均値)。処方薬剤は、スタチン54%、ACE阻害剤/ARB 69%、β遮断薬53%、抗血小板薬69%などだった。

インスリン グラルギンの早期導入の安全性・有効性についての検討では、インスリン グラルギン早期導入群6264例、標準治療群6273例に分け、比較した。インスリン グラルギン群では、糖尿病の有無にかかわらず、FPG≤95を目標値としてインスリングラルギンを投与し、併用薬として、経口糖尿病治療薬(1剤以下)に加え、低血糖を軽減させるためメトホルミンも可とした。標準治療群では、IFGやIGT症例に対しては1年に1回糖尿病のスクリーニングを実施し、糖尿病症例に対しては、ガイドラインと医師の判断に則った治療を行い、経口治療薬が2剤以上になるまでインスリンは投与せず、インスリン グラルギンは投与しないこととした。

主要評価項目は、心血管死+心筋梗塞+脳卒中のイベント(第1主要評価項目)と、心血管死+心筋梗塞+脳卒中+血行再建術+うっ血性心不全による入院(第2主要評価項目)の2項目とした。副次評価項目は微小血管イベント、2型糖尿病の発生(非糖尿病症例のみ)、全死亡の3項目を設定し、これらの他にがん、狭心症、低血糖症、体重の変化など。


◎IFGやIGT症例へのグラルギン投与 2型糖尿病進行リスク有意に低く



治療の結果、主要評価項目のハザード比は、第1主要評価項目(心血管死+心筋梗塞+脳卒中)で1.02、第2主要評価項目(心血管死+心筋梗塞+脳卒中+血行再建術+うっ血性心不全による入院)では1.04で、両群間に有意差はみられなかった(p=0.63、0.27)。また、副次評価項目である微小血管イベントの発生、全死亡については、いずれも両群間に有意差はみられなかった(微小血管イベント:ハザード比0.97、p=0.43、全死:ハザード比0.98、p=0.98)。

ただし、IFGやIGTの症例1456例(インスリングラルギン群737例、標準治療群719例)を対象に、2型糖尿病の発生を検討した結果、オッズ比は0.72で、インスリン グラルギン群は標準治療群に比べ、有意にリスクが低いことが分かった(p=0.006)。


なお、FPG値は試験開始後に低下した後、期間中は90~94mg/dLで安定的に推移し、試験終了時には95mg/dLだったのに対し、標準治療群の終了時の値は123mg/dLだった。

一方で、インスリングラルギンの副作用として懸念されていた、がんの発生も、ハザード比1.00と、両群間で有意差はなく(p=0.97)、各がん種に対する分析でも全て有意差はみられなかった。

これらの結果から研究グループは、正常FPGを目標としたインスリングラルギンの早期導入は、「心血管疾患とがんの発生リスクは、標準治療と同等であった」とし、糖尿病予備軍であるIFGやIGT症例では、「インスリン グラルギンの早期導入により、標準治療と比べ、糖尿病の発生率を低下させた」とまとめた。


同時に検討されたオメガ3脂肪酸投与の有効性については、主要評価項目である、心血管死の発生リスクは、プラセボ群との間に有意差はみられず(ハザード比0.98、p=0.72)、オメガ3脂肪酸投与の有効性は見いだせなかった。
 

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