米食品医薬品局（FDA）は、希少疾病薬プログラムへの個別化療法の影響や全ての疾患での希少疾病薬の指定を受けられる可能性がある場合の定義について検討している。

個別化医療の背景にある治療の科学的原理が進化するにつれて、通常の疾患における小規模で特定の集団をターゲットとした多数の薬剤の可能性が出てきている。このことはこれら疾患のサブグループ（下位分類）を対象とした希少疾病薬の指定や独占権、他のインセンティブを与えるべきという要望に道を拓くものだ。結局、FDAは、希少疾病薬の指定政策の変更を考慮しなければならないかもしれない。

FDAのGayatri Rao希少疾病薬製品開発部長は、「FDAは、希少疾病薬の指定が、デュシェンヌ筋ジストロフィーのような従来の希少疾病とは反対に肺がんのサブグループのような疾患に向っているかどうかを見ている」と話している。

FDAは、2011年11月に、希少疾病薬指定のためには、どのような疾患のサブグループが考えられるべきかを明確にするルール案を作成した。FDAは、その提案では、サブグループを決定する「医学的に妥当な」術語は、特定の疾患あるいは症状を持った、医学的に認知されうる、もしくは、臨床的に区別しうる小集団として意味すると誤って解釈されてしまったと話している。

同ルールは、現在通用している疾患におけるサブグループを決定するプロセスを変更するものでなく、薬理学的特性あるいは臨床経験のように、それがどのように決定されるかを説明するものだ。FDAはこれについて意見を募集したが、ルールを最終化していない。

希少疾患の患者団体は、FDAが目指している方向が、独占権や患者が小集団であることを理由に価格を上げるのではないかと懸念し、議会に働きかけをしている。FDAの希少疾病薬指定数は、過去数年上昇の一途を辿ってきたが、ここ2-3年足踏み状態だ。2011年度は214だったが、2012年度は184と14%減となった。

2013年第1四半期の希少疾病薬指定が了承されたものは49件。この数字は月平均16.3件であり、2012年度の月平均15.3件より多い。しかし、現段階では、共に2011年度の17.8件より少ない。薬効別に見ると、2012年度の36%は抗がん剤で、13%が神経学製品だった。FDAは、通常の疾患の小集団あるいはどの程度が標的療法を構成しているのかについてのデータは持っていないとしている。

現在、指定数はやや落ち込んだが、FDAは、今後、希少疾病薬の申請は増加すると見込んでいる。処方せん薬ユーザーフィーの更新を規定した「FDA安全・イノベーション法」（FDASIA）では、希少疾病薬審査の改善のために審査官の教育への予算も盛り込まれた。

FDAは、また、希少疾病薬申請を促すようなプログラムについても取り組んでいる。これは、小児用希少疾病薬の開発企業に優先審査バウチャーを発行する試みだ。熱帯病のバウチャーシステムに倣ったもので、優先審査指定を他企業の製品や他企業へ移転させることを可能にし、審査を迅速にさせるシステムである。しかし、FDAのRao氏は、FDASIAにおける、バウチャー実施の要件が複雑であることを指摘している。

ひとつの課題には、小児希少疾患の定義がある。FDASIAでは、小児を18歳以下としているが、CDERはこれを16歳以下としている。

Rao氏は、「バウチャーシステムを実行するときに考慮するべきことのひとつは、その年齢内で、ある疾患が最初に影響を及ぼすという事実をどのように定義するかである。それは発症の年齢なのか、疾患の徴候が現れたときなのか？最初に影響を及ぼすことをどう定義するのか」と疑問を投げかけている。

FDAは、近い将来、小児用希少疾病薬のバウチャーの要望を受けることを想定してはいない。しかし、このことは、既存の優先審査熱帯病のバウチャーシステムが一般化していないので、意外なことではない。

The Pink Sheet 　4月29日号