スイス・サンド社のピーター・ステニコ インターナショナルリージョン・プレジデントは11月8日、サンド東京本社で本誌インタビューに応じ、今後10年間で特許期間を満了（LOE）するバイオ医薬品のうち27製品についてバイオシミラーの開発を進めていると明かした。その上で日本市場への製品導入について、「医療ニーズを見極め、分析しながら進めたい」と述べ、投資継続に強い意欲を示した。一方で、米FDAが10月に発表した「分析データとPK・免疫原性データで十分だと判断されれば、比較臨床有効性試験（CES）は必ずしも必要としない」とするガイドライン案のインパクトに触れ、「バイオシミラーの上市タイミングや開発コスト抑制に影響する」と期待感を示し、欧州・日本アジアなどの規制当局とハーモナイゼーションが求められると強調した。

◎バイオシミラー27製品　LOE市場3000億ドルのうち2000億ドルをカバー

「我々は今後10年間でゴールデンイヤー（黄金時代）を迎える。それは、多くのバイオ医薬品が特許を失効するからだ」－。ステニコ氏はこう強調した。欧州におけるバイオシミラーの市場機会は高額バイオ医薬品のLOEで約8倍に拡大するという。ステニコ氏は、「グローバル市場規模は金額ベースで売上高3000億ドル、製品数で150におよぶ」と述べ、「サンドはこれから10年で特許期間を満了するバイオ医薬品のうちバイオシミラー27製品を開発する。金額ベースみると3000億ドルのうち2000億ドルをカバーすることになる」と明かした。

◎日本市場への投資「非常に重要な市場だ」　市場環境も「正しい方向に進んでいる」

ステニコ氏は日本市場への投資について、「非常に重要な市場だと考えている。バイオ医薬品で日本は3番目の市場だからだ」と強調。市場環境については、「日本政府を含めて（バイオシミラー施策等が）正しい方向に進んでいる」との認識を示し、「今後10年間で日本は大きなチャンスを持つ国になると思う」と語った。製品導入については、「現在、バイオシミラー3製品を投入しているが、この数を今後10年間で増やしていきたい」と明かしながら、「日本での医療ニーズを見極め、分析しながら進めていく」と前向きな姿勢を示した。

◎日本市場への期待　医療者・患者への啓蒙、規制環境の整備、経済的エコシステムの構築

さらに「バイオシミラー市場が今後拡大していくとなると、色々な方面からの支援が必要になってくると思う」と述べ、医療者・患者に対する啓蒙活動（教育）に加えて、規制環境の整備やバイオシミラーを利活用することに伴う経済的なエコシステムの必要性についても言及した。


◎米FDAのGL案　「P3試験必要なし」でVOID解決も　欧州・日本との規制ハーモナイズに期待

バイオシミラー開発をめぐる課題にも触れた。ステニコ氏は、米FDAが10月に発表した「分析データとPK・免疫原性データで十分だと判断されれば、比較臨床有効性試験（CES）は必ずしも必要ではない」とするガイドライン案に期待感を表明。今後10年間で特許期間満了（LOE）するバイオ医薬品のうち60％が売上規模５～10億ドルの製品で、「売上の小さいバイオシミラーを開発する余裕がなかった。その結果、バイオシミラーの開発が行われない“VOID”（空白）を生じる可能性があった」と指摘した。その上で、FDAのガイドライン案は、「分析データとPK・免疫原性データで同質、同等性を担保できれば第3相臨床試験（P3）が必要なしというもの」と述べ、開発企業にとってメリットは大きいとして社内検討を進めていることも明らかにした。一方で、「FDAのガイダンスは米国に適用するもの。欧州の規制当局もこの方向を示唆しているが、製薬企業が1つの国のためにP3を行うということはできない」と述べ、日本を含めて規制当局間での調和（ハーモナイゼーション）が求められると強調した。