国内製薬トップ年頭所感 マーケット環境の変化に危機感 対応急ぐ姿勢
公開日時 2014/01/08 03:52
国内製薬企業のトップの年頭所感が１月７日までに発表され、大手・準大手では、新薬の研究開発効率の低下、ジェネリック（GE）の台頭など国内外のマーケット環境に危機感をにじませ、変化に対応する事業に見直していく姿勢を表明する内容が目立った。
【武田薬品】長谷川閑史社長は、「先進国では大きな成長が見込めない一方で、新興国は急成長している」と、マーケットの変化を指摘し、この変化に対応する事業体制の構築の必要性を強調。次期CEO候補にクリストフ・ウェーバー氏を迎えることを挙げ「国際競争力のある会社に変革するという目標実現に大いに貢献してくれるだろう」との期待感を改めて表明した。一方で、社員に対し「外部から迎えた、グローバルでの豊富な経験を有する人材をロールモデルに、足りない部分を貪欲に吸収し、チャレンジしてほしい」と呼びかけた。
【第一三共】中山讓治社長は、抗凝固薬エドキサバンの日米欧承認取得・上市を最重点課題に挙げ「次代を担うベストインクラスの大型グローバル製品に育てていくことが、グループの持続的成長を実現する鍵」と、同薬の事業展開に注力する姿勢を示した。社員には▽常に、私たち自身の活動状況を顧客／市場競争の視点で冷静に見つめる▽速いテンポでPDCAをまわし、真に有効な打ち手を探索・検証する▽最終の目標達成のために、どのようにお金・時間を活かすべきか、考える▽考え抜いて、新たな戦略・チャンスが見つかれば、それを上司と経営と共有する－－ことを求めた。
【アステラス製薬】畑中好彦社長は、「新製品価値の最大化」、「新薬創出力の強化」、「オペレーションの高質化」の３つの戦略課題に引き続く取り組む姿勢を示した。「オペレーションの高質化」については地域・機能を問わず、「『成長期にこそ環境変化に柔軟に対応できる組織・仕組みづくりを行い将来に備える』ため」さらに強化するとした。
【エーザイ】内藤晴夫社長は、「成熟市場での成長から新興国市場での伸長へと移行し、医薬品の構成では後発品が拡大しブランド医薬品の役割とその位置づけが変わってくる」とマーケット環境の変化を指摘。さらに「新薬の承認取得のみならず市販後研究の役割が増大」するとした。これら変化に「危機意識と責任意識を持って構造改革に取り組み、hhc（ヒューマンヘルスケア）理念の実現に向けて患者様価値の最大化に邁進する」と表明した。
【田辺三菱製薬】土屋裕弘社長は、「競争環境の変化に対応するには、適者生存のビジネスへの変革が重要となる」とし、新規糖尿病薬SGLT2阻害薬など新薬の市場浸透と育薬に努めるほか、「国内製造拠点の再編及びコスト構造の再構築などの構造改革を加速化する」姿勢を見せた。
【大日本住友製薬】多田正世社長は、薬価改定、北米での催眠鎮静剤ルネスタの独占期間満了を挙げ、2014年は「正念場」と表明。日本国内では戦略品・新製品のマーケティング強化、グループ全体では経営効率の「極大化」の早期実現を課題に挙げた。
【塩野義製薬】手代木功社長は、アストラゼネカ社からの高脂血症薬クレストールのロイヤルティについて14年から従来より数％低い料率に変する一方、受取期間を23年まで７年延長する取り決めをしたことに触れ、同社が中長期的な安定的な成長を重視する会社であることを宣言するものとする一方で「『クレストールクリフ』の正念場が2014年になることも意味する」と指摘。「企業体質の強化への取り組みを進化させ、全員の力を合わせることで『クリフを見事に対応した企業』となり、次なるステージへのさらなる成長を目指していこう」と呼びかけた。
GE国内大手の沢井、東和 安定供給体制強化を強調
国がジェネリック（GE）数量シェア目標を５年後に60％に設定し、さらなるGE使用促進策が打たれる一方で、薬価の引き下げなど厳しい面もあるGE企業。国内大手の沢井薬品の澤井光郎社長、東和薬品の吉田逸郎社長は発表した年頭所感で、いずれもGEの使用拡大を見越し、工場増設など安定供給体制の強化に努めることを強調した。