【World Topics】はじまったオバマケアの政策効果分析
公開日時 2014/12/15 03:50
スケジュール通り2年目のオンライン医療保険登録を開始したオバマケア。一方、初年度データの解析に基づく政策効果評価の動きも始まっている。(医療ジャーナリスト 西村由美子)
ニューヨークタイムズ紙はじめ全国メディアに大きく報道された調査は、無保険者の医療保険加入促進・支援を目的として活動するNPO法人 ”Enroll America (http://www.enrollamerica.org/about-us/our-mission/)” が、政策分析を得意とする “Civis Analytics (https://civisanalytics.com/about/)” と共同で実施したデータ解析結果である。
調査は2014年度のオバマケア登録者(登録サイトから新たにメディケイド受給資格を得た者を含む)全数を対象とする、いわゆるビッグデータ解析。従来の抽出調査に基づく推定に比べ高い精度が期待できる。
調査によれば、オバマケア実施以前に比して無保険者比率が低下したのは、①低所得層、②アフリカ系国民、③ラテン系国民、④若齢層、⑤(都市に対する)地方、⑥女性で、オバマケアは、当初掲げた政策目標通り、これまで医療弱者であった層に手厚い政策であることが明らかになった。
また、オバマケアを全面施行した州(26州およびワシントンDC)の無保険者比率は9.2%で、メディケイド適用基準を拡大しなかった州の無保険者比率13.2%に比して明らかに低いことが明らかになった。
オバマケアに対する根強い批判の一つは「若齢者に 負担が重い不公平な施策(オバマケアでは高齢であることを理由に医療保険料を高くできない)」であったが、今回の解析で、オバマケアは全米で若齢層(18歳から34歳)の無保険者を大幅に減じたており、従来の批判は的外れであったことが明らかになった。実際、オバマケアに新規加入した若齢層には、 2010年実施の緊急対策「26歳までの『子』は親の医療保険に加入できる」によって親の医療保険でカバーされた21歳以上26歳までの300万余人の若齢層は含まれていないから、これを考え合わせると、オバマケアの若齢層への政策効果はいっそう明らかである。