第3次安倍内閣発足 2015年度予算編成本格化 医療・介護の歳出抑制は必至
公開日時 2014/12/25 03:52
先の衆院選を受けた特別国会が12月24日に召集され、衆参両院による首班指名で自民党の安倍晋三総裁が第97代内閣総理大臣に指名された。首相は同日夜に組閣を行い、第3次安倍内閣を発足させた。これに伴い越年となっていた2015年度予算案の編成作業が動きだす。消費税率引き上げ先送りに伴い、医療・介護分野の歳出抑制は厳しさを増しており、地域包括ケアの実現を目指す医療提供体制の見直しなどの改革論議が年明けから本格化する。15年度予算編成作業は年明け1月中旬に事前閣僚折衝を経て閣議決定される。
2015年度予算編成をめぐっては、12月22日に政府の経済財政諮問会議が「2015年度予算編成の基本方針」を取りまとめた。基本方針では、消費税率10%への引き上げが2017年4月まで1年半先送りしたことを受け、社会保障費を含めた歳出抑制策を一層加速させる考えを強調した。医療・介護などの社会保障給付費も例外とせず、「都道府県ごとの医療提供体制と地域の医療費の差にも着目した医療費の適正化」を図る考えも示した。
麻生太郎財務相もまた22日の諮問会議で、財政制度等審議会の予算編成等に関する建議の方向性について説明。消費税増収分を当て込む予定だった社会保障費について「2015年度、16年度において優先順位づけが必要」と指摘し、聖域なき歳出抑制を断行する考えを表明した。また具体的な取り組みにも言及し、医療提供体制の改革の推進や経済力に応じた公平な負担の確保、介護報酬の適正化などをあげた。
◎2015年は製薬ビジネスの今後を見定める時期に
消費税率10%への引き上げ時期を当初の2015年10月から1年半先送りした来年度の予算編成は、歳出抑制を前提とした制度改革論との一体化を念頭に置いている。製薬業界への影響をみると、2016年4月の薬価・診療報酬改定に始まり、17年4月の消費増税改定、18年4月の診療報酬・介護報酬同時改定という3年連続改定を経験することになる。薬価についても3年連続改定に加えて、大型長期収載品の特許切れや、これに伴うジェネリック(GE)の市場浸透などが重なり、市場実勢価格も大幅に下落する可能性がある。
これに加えて、医療提供体制の改革(地域包括ケアシステムの構築)に伴い、高度医療サービスを提供する施設や機能の集約化、調剤薬局の機能強化も図られる見通しで、医師や薬剤師の薬剤使用に対するマインドに大きな変革をもたらすことが想定されている。GE使用促進策も目標の数量シェア60%の達成が早まりそうな気配もあり、次なる数値目標(ドイツ・イギリス並みの80%)をめぐる議論への波及も避けられそうにない。
厚生労働省の医療保険制度改革案は年明けの社保審医療保険部会での議論を経て、予算関連法案として次期通常国会に提出される。同時に、地域包括ケアシステムを円滑に運用するための診療報酬・調剤報酬に関する議論も中医協を舞台に行われる。16年からの3年連続改定は製薬各社の企業収益だけでなく、MR活動も含めた製薬ビジネスの根幹を揺るがす医療システムの大改革が待ち受けている。製薬企業各社にとっても、年明けからの1年間の議論がその後の経営方針の根幹を決める大事な時期になるといっても過言ではないだろう。(編集長 沼田佳之)