アステラス製薬は５月11日、2016年３月期（15年度）決算を発表し、国内売上は4972億円、前期比0.3％減だった。前立腺がん治療薬イクスタンジ、過活動膀胱（OAB）治療薬ベタニスを中心とする新薬群の伸長で、高脂血症治療薬リピトールなど長期収載品の減収をほぼ吸収した。イクスタンジはグローバル戦略製品で15年度は全世界で2521億円を売り上げ、前期比83.7％増と大きく成長した。同社連結業績もイクスタンジの貢献などで２ケタの増収増益となった。

15年度の国内製品売上をみると、イクスタンジが262億円（前期比76.1％増）、ベタニスが212億円（43.5％増）で両剤が大きく伸びた。強みを持つ泌尿器領域の主力品のひとつであるOAB治療薬ベシケアは265億円（3.5％増）だった。また、免疫抑制薬プログラフや消炎鎮痛薬セレコックス、気管支喘息薬シムビコートなどの新薬群も堅調に売り上げを伸ばした。

■国内OABはベタニスにリソース集中　ベシケア特許切れ見据え

国内の16年度計画をみると、イクスタンジは２％減収を計画する。これは16年４月の薬価改定で市場拡大再算定が適用されて薬価が25％下がったため。同社によると、化学療法未治療患者を中心に処方が伸びており、16年度も数量シェアは拡大するとしている。

OAB治療薬では、ベタニスが274億円（29.0％増）、ベシケアが272億円（2.7％増）――と、ベタニスの売上がベシケアを上回る計画を立てた。この点について桝田恭正・上席執行役員（財務担当）は同日、業界誌・紙向けに開いた決算会見で、両剤でOAB治療に貢献していくとの基本的な姿勢を示したうえで、営業戦略としては「戦略的にリソース配分をベタニス中心にする」「理由はベシケアの特許切れを視野にいれている」と語った。同社によると、ベシケアの国内特許切れは20年12月であり、早くも対策を講じる。

桝田氏は、作用機序の異なるベタニスとベシケアは「ともに持ち味がある」とも話し、ベタニスは閉経後女性OABの第一選択薬として、ベシケアは重症OABの第一選択薬との位置付けで展開していく方針も示した。

【15年度連結業績 （前年同期比）16年度予想（前年同期比）】　
売上高  １兆3727億600万円（10.1％増）１兆3500億円（1.7％減）
営業利益  2489億8600万円（34.1％増）2670億円（7.2％増）
純利益  1936億8700万円（42.6％増）1970億円（1.7％増）

【15年度のグローバル主要製品全世界売上高（前年同期実績）16年度予想、億円】
イクスタンジ 2521（1372）2959
プログラフ 2036（1947）1879
ベシケア 1356（1352）1191
ベタニス/ミラベトリック/ベットミガ 817（531）1004
ハルナール/オムニック 534（560）464
ファンガード/マイカミン 416（388）404
エリガード 176（190）176
プロトピック 156（217）‐
 
【15年度の国内主要製品売上高（前年同期実績）16年度予想、億円】
ミカルディスファミリー 972（957）908
内、ミコンビ 101（107）
内、ミカムロ 260（238）
プログラフ（グラセプター含む） 498（481）478
セレコックス 466（418）504
ワクチン 411（388）259
シムビコート 374（330）411
リピトール 309（367）224
ベシケア 265（256）272
イクスタンジ 262（149）257
ベタニス 212（148）274
マイスリー 179（194）146
ガスター 147（180）105
ボノテオ 141（130）151
ハルナール 127（150）94
ファンガード 117（118）115
ジェニナック 108（104）102
セロクエル 105（126）72
スーグラ 73（41）125
シムジア 66（50）96
アーガメイト 62（59）61
ゴナックス 39（34）46
キックリン 16（15）20