MDV・中村新社長 地域医療への貢献、データ×AIで新たな価値創造へ 日本生命グループとして始動
公開日時 2026/06/23 04:52

日本生命グループの一員として始動したメディカル・データ・ビジョン(MDV)の中村正樹代表取締役社長が本誌インタビューに応じ、「両社のネットワークを掛け合わせて、地域医療への貢献や、データ×AIによる新たな価値創造を実現したい」と意欲を示した。MDVが有する病院を中心とした医療ビッグデータに加え、日本生命グループとしての総合力やAIを組み合わせることで、従来の事業を上回る社会的なインパクトを生み出して企業成長にもつなげていく意気込みだ。
MDVは2025年12月に日本生命グループ入りを発表し、26年5月21日から中村新社長を始めとする新経営陣の下で新たなスタートを切った。6月8日に行った本誌インタビューには、中村社長と日本生命出身の飛田知明代表取締役副社長が応じた。
◎ヘルスデータ基盤、データ分析・提供網、医療機関ネットワークでシナジー
中村社長は日本生命グループとしてのシナジーについて、①唯一無二のヘルスデータ基盤、②データ分析体制・提供網、③強固な医療機関ネットワーク―の3点を強調した。
ヘルスデータ基盤については、MDVの6000万人超の診療データベースに対し、日本生命は健康診断結果やレセプトなどの保険者データ約600万件を有する。加えて、厚生労働省のレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を活用した「ニッセイ医療費白書」を提供するなど自治体との結びつきも強い。中村社長は「病院由来の電子カルテや音声・画像データ、個人の健康・医療・日常データなども巻き込んで、圧倒的に強いヘルスケアデータ基盤を構築していきたい」と抱負を述べた。
データ活用においては、MDVが強みとする製薬企業に加えて、日本生命のブランド力を背景に自治体やヘルスケア事業に取り組む多業種へのアプローチを視野に入れる。保険数理の専門家であるアクチュアリー人材との掛け合わせによる価値提供にも期待を寄せた。医療機関向けサービスでは、グループ内のニチイ学館やニッセイ情報テクノロジーとの連携を深め、より強固な医療機関ネットワーク構築にも意欲を示した。
◎データ利活用の高度化・深化で製薬企業にも利点 「疾患啓発から一連の流れを評価」
こうしたデータ利活用の高度化や深化は、製薬企業やアカデミアにとっても大きなメリットが見込まれる。中村社長は「個々の医療機関にとどまらず、地域としての医療データが扱えるようになる意義は大きい」と指摘。対象とする疾患領域がアンメットメディカルニーズへと広がっていく中で、製薬企業が自治体と連携して疾患啓発に乗り出す事例も増えており、「疾患啓発から受診、診断、治療まで一連の流れをデータで追跡して活動を評価するなど、これまでにはなかった価値提供が可能になる」と確信を込めた。
◎日本生命にも相乗効果 予防から治療、介護まで「シームレスに支える世界」目指す

MDVのグループ入りは日本生命にとっても競争力強化につながる。日本生命でヘルスケア事業部長などを務めた飛田副社長は、「MDVは医療機関との強固な信頼関係とネットワークを持ち、データを価値に変えて提供している。日本生命にはなかったものを持っている会社だ」と強調。生命保険事業とのシナジーについても「疾患リスクの可視化から予後の社会復帰までも支える保険商品やサービスの提供が期待できる」と展望した。さらに保険以外にも介護事業やヘルスケア事業なども展開しており「予防から治療、介護までグループ内でシームレスに安心を支えることができる世界を目指していきたい」と相乗効果に期待を込めた。
MDVは病院を中心としたネットワークや6000万人超の診療データベースを保有する。医療情報システムの開発・販売のほか、診療データベースを活用した各種分析データ提供などのサービスを展開している。生保業界最大手の日本生命は17年にヘルスケア事業へ本格参入し、企業・保険者・自治体を対象としたヘルスケアサービスを提供してきた。医療関連サービスの拡充や保険事業の高度化に向けて今回のM&Aに踏み切った。