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中医協・薬価専門部会 新薬創出加算の見直し機運高まる 厚労省からは“死守”の声も

公開日時 2017/05/18 03:53

中医協薬価専門部会は5月17日、薬価制度の抜本改革について製薬業界からヒアリングを行った。業界側がファースト・プライオリティーに掲げていた新薬創出・適応外薬解消等促進加算について、日本製薬団体連合会(日薬連)の多田正世会長は、「将来に向けた研究開発への投資を継続して行う上で、これまで以上に重要なものになっている」と主張したが、支払側から見直しの声があがった。一方で、厚労省内からは、新薬創出やドラッグ・ラグ解消の観点から、新薬創出加算が必要との声も根強い。官邸、財務省が廃止も視野に“ゼロベースでの抜本的な見直し”を迫る中で、今後調整が本格化することになりそうだ。


昨年12月に4大臣が合意した「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」では、新薬創出加算のゼロベースでの見直しが明記されている。財務省の財政制度等審議会・財政制度分科会が「廃止し、加算分は国民に還元すべき」と提起するなど、廃止を主張する声も強い。一方で、省内からは、日本市場が欧米に比べて小規模である中で、ドラッグ・ラグを解消し、新薬を創出する土壌を創り上げるには、薬価上のバックアップが必須との声がある。2年に1度引き下がる国内市場の中で、新薬創出加算がいわば、市場実勢価格の歪みを調整する役目を果たしているとの考えだ。こうした中で、新薬創出加算を「なんとかして残したい」との声があがっている。


◎国内市場の構造的変化 新薬創出加算は「これまで以上に重要」


この日の中医協薬価専門部会では、日本製薬団体連合会(日薬連)の多田正世会長は、後発医薬品80%目標が示され、特許切れしたときに後発医薬品への置き換えが加速度的に進むようになったと説明。国内市場の大きな構造変化が起きているとした上で、「将来に向けた研究開発への投資を継続して行う上で、これまで以上に重要なものになっている」と説明した。シーズが減少する中で、研究開発にかかる時間、コストが増大していることにも触れ、「研究開発における効率性の向上は研究開発型企業にとって最も重要な経営課題」と述べ、研究開発促進のためにも、新薬創出加算は必須との立場を示した。


米国研究製薬工業協会(PhRMA)のパトリック・ジョンソン在日執行委員会委員長は、新薬創出加算の試行的導入以降、薬剤の開発品目の増加、ドラッグ・ラグの短縮など「堅調な効果がもたらされた」と述べた。その上で、「現行の仕組みから薬価を維持する品目の適用範囲を縮小するべきではない」と主張。特許期間後に後発医薬品へと置き換わることで、十分な財政的余地を生むことが可能だと述べた。


欧州製薬団体連合会(EFPIA)のオール・ムルスコウ・ベック会長は、後発医薬品の置き換えによる節減額を新薬創出加算の原資とすることで「当初の価格レベルを特許期間中は維持することに充当すべき」とした。


◎支払側・幸野委員「薬の”価値”に基づいた比較を」


支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、「患者サイドの感覚で申し上げると、当該新薬のコスト負担については、安定供給に対するコスト負担には納得感があるが、企業のR&Dの将来に向けたインセンティブが上乗せされて算出されることについては納得感が持てないのではないか」と述べた。その上で、初収載時に加算要件による引き上げがあることなどから、「研究開発(R&D)の活性化を担保するために、違う方式を要件として考え、算定する」ことを提案した。これに対し、日本製薬工業協会(製薬協)の畑中好彦会長は、特許期間中は価格を維持する「新薬創出加算のコンセプトを維持しながら新たな形で薬価制度を構築していただければ」と述べた。


また、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、新薬創出加算が適応された製品が類似薬効比較方式の対照薬となっていることが「薬価全体の水準を引き上げているのではという疑問がある」と述べた。業界側は、市場実勢価格に基づいていることから適切な競争をうながすとの意見を述べたが、幸野委員は、「新薬創出加算は、創薬の原資としてつくられたもので、比較するのであれば、薬の価値に基づいて比較されるのが妥当だ」との考えを示した。


◎原価計算方式 見直しに理解も「研究開発投資の維持を」


薬価算定方式として、原価計算方式についても議論となった。類似薬がない場合に製造販売原価や一般販管費、営業利益などを上乗せして薬価を算出する方式だが、日薬連は「医薬品の価値を十分に反映することは限界があると認識している」との考えを表明。EFPIAは、医薬品の患者、社会に対する価値に基づく重要性を強調し、「原価計算方式の薬価算定に対する代替案について話し合いたい」と述べた。


支払側の幸野委員は、原価計算方式の際に積み上げられる営業利益率を問題視。二桁を超える高い数字であることから、「日本の景気やほかの産業の営業利益率を見ながら補正していく必要があるのではないか」と指摘した。これに対し、日薬連の多田会長は、研究開発型製薬企業は、全産業の中でも高い研究開発費率をほこっていると説明。1300億円の研究開発投資を行っても0.86剤の新製品しか生み出せないとのデータを引き合いに、「研究開発投資を維持するためには利益を確保しないとやっていけない。産業の特殊性も比較いただきたい」と強調した。


そのほか、外国平均価格調整については、現在参照する米、英、独、仏の4か国の中から米国を外すことが議論の俎上にあがっている。PhRMAとEFPIAは米国外しに対して明確に反対の姿勢をとった。PhRMAは、現在活用するAWPmの代わりに、メディケア、メディケイドで償還価格の算定基準に用いられるASPや、NADACの参照を提唱した。これに対し、診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)がカバーする医薬品が限られていることや一部の州でしか採用されていない現状を指摘。「適正な価格のリストがない以上、対照とする外国価格の中に入れるのは難しいのではないか」と述べた。


◎卸連 中間年の薬価調査は客体数の絞り込みを


そのほか、日本医薬品卸売業連合会(卸連)は、中間年の調査は、「薬価改定の範囲は極力限定していただきたい」と主張。調査客体数を絞ることなどをあげた。また薬価調査の公表事項の拡大については、「薬価調査の正確性の検証とは直接関係なく、価格交渉に重大な悪影響を及ぼしかねないため、反対だ」と述べた。
 

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