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日米欧製薬団体 革新的新薬に新たな算定方式求める 原価計算方式に限界

公開日時 2017/09/14 03:52

日本製薬団体連合会(日薬連)など日米欧製薬団体は9月13日、中医協薬価専門部会で意見陳述を行い、世界に先駆けて日本で最初に承認される革新的な新薬について、薬物以外の治療法など医療コストを踏まえた新たな薬価算定方式の検討を求めた。革新的新薬には類似薬がなく、製造経費などを積み上げて算出する“原価計算方式”で算定されるケースが多い。この日の業界陳述では、原価計算方式による評価に限界があるとして、革新性に応じた新たな新薬の評価を訴えた。政府が6月に閣議決定した骨太方針では、「エビデンスに基づく費用対効果評価を反映した薬価体系を構築する」ことが盛り込まれており、薬物以外の治療法や類似疾患に対する治療薬・治療法などの医療コストを踏まえ、イノベーションへの評価を求める考え。

世界初の革新的新薬を日本で上市した例としては、抗がん剤・オプジーボが代表格だ。原価計算方式で算定され、高額な薬価がついたが、2年に1回の薬価改定を待たず、50%薬価が引き下げられた経緯がある。

この日の中医協で、欧州製薬団体連合会(EFPIA)は、原価計算方式の限界を指摘した上で、新薬の新たな算定方式を提案した。具体的には、①同一効能に対する薬物以外の治療法(薬物以外の治療費用を加える)、②類似する疾患に対する治療薬・治療法(疾患背景等の類似性)、③当該品目及び類似薬の海外における価格参照―など、算定方式の選択肢を増やすよう検討することを要望した。業界では10年ほど前から、類似治療比較方式と呼ばれる、新たな薬価算定方式について議論を重ねてきたが、議論の中で比較対象とする治療法を選定する難しさや価格上昇などへの懸念を示す声もあったという。


◎支払側・幸野氏「国民の納得感ある」 検討に理解


業界側の提案に対し、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)が姿勢を問うのに応える形で、日米欧すべての団体が原価計算方式に限界があるとの認識を示し、EFPIAの案に賛意を示した。幸野委員は、「検討の余地があるのではないか。類似薬がなくても、ほかの治療で一定のQOLになった患者と同等のQOLに引き上げるのであれば、比較対象にする意味がある。原価計算方式のブラックボックスで積み上げるよりも国民の納得感もある」と理解を示した。これに対し、厚労省保険局医療課の中山智紀薬剤管理官は、「治療法と比較するという考え方はひとつありうる」とした上で、「過去の事例を基にということになるが、どのような算定の方法があるのか、精査することが避けられない。薬価制度の抜本改革の中に取り入れるのは難しいと思うが、事例を集め精査をしていく中で検討していく」と述べた。

この日の中医協では、類似薬がないときの新薬算定に用いる原価計算方式に議論が集中。この日、初めて業界陳述に臨んだ日本バイオテク協議会は、世界初の革新的新薬を日本で初めて上市する場合は、メーカー主張を十分尊重した原価構成で計算することを要望した。現行の薬価制度では、企業規模にかかわりなく、同一係数を用いられるが、企業規模が比較的小さいベンチャー企業では、販管費や工場設備償却が重くのしかかることや、新薬しかないために開発が失敗した際の赤字を吸収する手立てがないことなどを説明し、理解を求めた。また、医薬品の市場規模が当初の予測を上回った場合引き下げる一方で、予測の半分以下に下回った場合には薬価を引き上げることを要望した。

これに対し、診療側からは、今村聡委員(日本医師会副会長)が「違和感を覚える。我々の言っていることを聞けというのは行き過ぎだ。薬は特別なものだという意識が強すぎて一般の市場のものの考え方と違っているのではないか」と述べるなど、難色を示す声が相次いだ。

◎新薬創出加算「対象範囲の縮小せずに制度化を」

そのほか、新薬創出加算については、日薬連が「対象範囲を縮小することなく特許期間中の新薬にかかわる薬価改定方式として制度化すべき」と主張するなど、すべての団体が対象範囲の縮小に反対する姿勢を示した。日薬連は、医薬品を①新薬、②先発品と後発品が共存、③上市から25年以上経過しても、なお医療ニーズの高い基礎的医薬品-とライフステージを示した。特許切れ後は、後発医薬品の使用促進により、国民負担の軽減に資するなどして、医療に貢献する考えを示した。薬価を下支えする基礎的医薬品については、抗生剤など一部の医薬品に限られているが、災害など非常時で一定の備蓄が求められている薬剤や、実質的に代替品がない薬剤、新薬が出ない領域など、対象範囲の拡大を求めた。

◎GE薬協・吉田会長「業界内では統合・再編の動き」 自ら集約化に言及

後発医薬品については、日本ジェネリック製薬協会は中間年改定は価格乖離の大きな品目に限定することや、銘柄別に市場実勢価格を反映することなどを主張した。(本誌既報、記事はこちら

日本ジェネリック製薬協会の吉田逸郎会長(東和薬品社長)は、協会が今年5月に策定した「ジェネリック医薬品産業ビジョン」の中で、研究開発に特化する企業や特定の剤型に特化し、製造受託を行う企業、特定の領域の品目の製造・販売・承認に特化した企業など新たな姿を打ち出したことを紹介。「(それぞれの企業の)役割を明確化し、製造分担や共同生産体制の構築などで効率化を進めていることを支持ししている」と述べた。こうした動きが集約化・大型化など業界再編につながるとの見方を示し、「業界内ではすでに統合・再編の動きが出始めている。集約化、大型化が進み、会社数、品目数が減少していくことは必然だろう」と自ら構造転換に触れた。その上で、こうした動きを妨げない薬価制度の在り方について改めて理解を求めた。 

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