塩野義 インフルエンザ薬S-033188を承認申請 1回の経口投与で治療完結 先駆け審査対象品目
公開日時 2017/10/26 03:51
塩野義製薬は10月25日、自社創製品で、1回の経口投与で治療が完結する抗インフルエンザウイルス薬「S-033188」(開発コード)について、同日付で承認申請したと発表した。一定要件を満たす革新的新薬として厚労省から2015年10月に、先駆け審査指定制度の対象品目に指定されており、申請後6か月での承認が見込まれる。
同社は、成人および小児におけるA型またはB型インフルエンザウイルス感染症を適応症として申請した。経口による1回のみの錠剤の服用で治療が完結するため、同社は、「利便性が高く、確実なアドヒアランスが期待できる薬剤」としている。
申請データのリスク因子を持たない健常なインフルエンザ患者を対象にしたフェーズ3試験の「CAPSTONE-1」では、既存薬のタミフルと比較して、抗ウイルス効果が高く、投与翌日には50%以上の患者(小児を含む)でウイルス力価の陰性化が認められた。塩野義は、「家庭内や学校、職場等でのウイルス伝播、飛沫・空気感染拡大に対しても、一定の抑制効果を示すことが期待される」としている。
■ウイルス排出期間 中央値で24時間
同試験は、S-033188を体重に応じて40mgまたは80mg単回経口投与した際の有効性と安全性を、対照群のプラセボあるいはタミフルカプセル75mg1日2回、5日間反復経口投与時と比較した二重盲検比較試験。計1436人が登録された。
その結果、インフルエンザ罹病期間(TTAS)の中央値は、プラセボの80.2時間に対してS-033188は53.7時間と有意に短縮(p<0.0001)。タミフルに対しては同程度にTTASを短縮した。ウイルス力価(感染性を有するインフルエンザウイルス粒子の指標)では、治療開始後24時間におけるウイルス力価のベースラインからの変化量の中央値は、S-033188が-4.4、プラセボが-1.2、タミフルが-2.5(p<0.0001、S-033188vsプラセボ、タミフル)で、S-033188はいずれに対しても有意に減少した。
ウイルス排出期間(患者体内から感染性を有するインフルエンザウイルス粒子が検出されなくなるまでの時間)の中央値は、S-033188が24.0時間、プラセボが96.0時間、タミフルが72.0時間(p<0.0001、S-033188vsプラセボ、タミフル)で、S-033188はいずれに対しても有意に短縮した。インフルエンザは解熱後もウイルスを排出するため、外出を控える必要があるほか、学校保健安全法の施行規則では出席停止期間を定めている。同試験で確認されたS-033188のウイルス排出期間の短さは、同法施行規則の改正に向け、一石を投じる可能性もありそうだ。
有害事象の発生頻度は、S-033188が20.7%、プラセボが24.6%、タミフルが24.8%――。薬剤との関連性が疑われる有害事象の発生頻度は、「タミフルに対して有意に低い発現率を示した(p=0.0088)」としている。
S-033188は、タミフルなど既存のノイラミニダーゼ阻害薬とは異なる新たな作用機序で、高病原性鳥インフルエンザウイルスを含む各種A型、B型ウイルスに強い活性を示すことが期待される。Capエンドヌクレアーゼ阻害薬と呼称する新クラスの薬剤で、インフルエンザウイルスが細胞に侵入後、ウイルス増殖に必須なRNA複製過程の最初の反応となるmRNA合成の開始を特異的に阻害し、細胞内でウイルス粒子を形成されなくする。
なお、重症化、合併症を起こしやすいリスク因子を持つハイリスク患者を対象とした試験も進められている。