田辺三菱製薬は５月９日、2019年３月期（18年度）の国内医療用医薬品売上が2962億円、前年度比4.2％減になる見通しと発表した。関節リウマチなどに用いる生物製剤シンポニーや経口血糖降下薬など新薬群は堅調に伸長する一方で、18年度薬価改定で210億円の減収影響が出るほか、生物製剤レミケードのバイオシミラーや抗アレルギー薬タリオンの後発品の更なる市場浸透、後発品事業のニプロへの譲渡（66億円分）といった減収要因を、新薬群の成長でカバーできないとしている。

薬価改定では、本態性高血圧症・狭心症治療薬メインテートが「G2」区分となり、約53％の薬価引下げを受けた。これにより同剤は18年度に前年度比48％減、金額では50億円の減収見込みとなるなど、18年度薬価制度抜本改革の影響が大きい。

■国内売上3000億円未満は田辺三菱発足以来初めて

18年度計画の通りに国内医療用薬売上が3000億円を下回ることになれば、07年10月の同社発足以来、初めてのことになる。同社の石﨑芳昭・常務執行役員営業本部担当は同日開いた17年度決算会見で、薬価制度抜本改革で新たに導入された「G1」「G2」「C」といった後発品収載後10年たった長期収載品の更なる薬価引下げルールによるダメージが大きいとの認識を示したものの、「今後も通常改定＋アルファが常にあると認識しないといけない。こういう中で3000億円をいかに維持するかだ」と強調した。

同社では16年度から５か年の中期経営計画で、最終20年度の国内売上目標を3000億円と設定している。18年度の2900億円台との計画数値も、20年度の目標達成に至る過程での数値ととらえることもできる。

石﨑氏は、注力している自己免疫疾患領域のレミケード、シンポニー、ステラーラ――、糖尿病・腎疾患領域のDPP-4阻害薬テネリア、SGLT-2阻害薬カナグル、両剤の配合剤カナリア――といった各製品の育薬・営業強化によって製品価値の最大化を図るとともに、製品導入にも取り組み、「20年度、3000億円をなんとか維持したい」と話した。

カナリアについては「（17年９月の）発売と同時に口座、病院の採用がかなり増えた」という。カナリアへの将来の処方を見据えたテネリアやカナグルの処方もみられていることから「良い影響が出ている」と述べ、糖尿病３剤による相乗効果が出ていると説明した。

■17年度連結売上、過去最高を更新　米国でのALS治療薬ラジカヴァがけん引

17年度の国内医療用薬売上は3093億円、前年度比1.5％減だった。新薬群は好調だったが、長期収載品の減収や後発品事業のニプロへの譲渡の影響が大きかった。

17年度連結業績は、米国で17年８月に発売したALS治療薬ラジカヴァが売上123億円となるなど海外事業の好調により、連結売上は4338億円、前年度比2.3％増だった。この売上は過去最高となる。ラジカヴァ発売に伴う販管費の増加に加え、後期開発へのステージアップやニューロダーム社買収による研究開発費の増加により、各利益は２ケタ減益となった。

【17年度連結業績（前年同期比）　18年度予想（前年同期比）】
売上高　4338億5500万円（2.3％増）　4350億円（0.3％増）
営業利益　772億8500万円（17.9％減）　670億円（13.3％減）
親会社帰属純利益　579億6300万円（18.7％減）　470億円（18.9％減）

【17年度主要製品国内売上高（前年同期実績）　18年度予想、億円】
レミケード　646 （668）555
シンポニー　321（249）350
テネリア　175（165）170
タリオン　169（189）73
レクサプロ　127（112）131
セレジスト　108（123）93
メインテート　103（118）53
クレメジン　65（75）84
ラジカット　58（58）－
カナグル　56（34）76
デパス　53（61）－
ウルソ　52（61）－
イムセラ　47（49）－
ルパフィン　－（－）68
ワクチン計　350（389）365
うち、インフルエンザ　99（127）112
うち、テトラビック　87（99）91
うち、水痘ワクチン　52（54）55
うち、ジェービックV　52（39）－
うち、ミールビック　50（59）55
田辺製薬販売取扱品　66（141）－
ロイヤリティ収入等　791（822）698
うち、ジレニア　ロイヤリティ　577（537）非開示
うち、インヴォカナ　ロイヤリティ　139（188）非開示
※田辺製薬販売は17年10月１日付でニプロに譲渡。