アステラス 国内MR数2100人体制、MSLへの異動や自然減で 早期退職者でさらに減少も
公開日時 2018/11/01 03:51
アステラス製薬の松井幸郎・執行役員販売統括担当は10月31日、東京本社で開いた2019年3月期第2四半期(4~9月)決算会見で、国内のMR数は現在、アステラス・アムジェン・バイオファーマへの出向者を含め、2100人体制であることを明らかにした。これまで国内最多の2400人体制と公表していた。メディカルサイエンスリエゾン(MSL)への異動や自然減などによるもので、この日の会見でMR数を更新した。
同社は18年度中に、本社及び営業支援などを行う国内グループ3社を対象に早期退職者を計600人募集するとしている。安川健司社長によると、9月に労働組合の了承を得られた段階だという。募集期間や対象者の年齢などの詳細は開示していない。
松井氏は、「今後の早期退職者の影響もあり、(国内MR数が)どのように変化するか現時点ではコメントできないが、製品ポートフォリオを踏まえ、必要なアプローチやプロモーションの仕方を考えながら、最適な組織体制にしていきたい」と述べた。アステラス本体のMR数が2000人を下回る可能性もありそうだ。
MR数が減っても必要となる情報提供・収集活動を実現するため、研修体制をより充実させるほか、製品の特徴や医師の情報ニーズなどを踏まえた面談やデジタル活用を推進していく。さらに、血液がんや泌尿器がんを専門的に治療している施設でより専門的な情報活動を行う「リージョナル・マーケティングマネジャー」を全国に4人配置。今後の医療提供体制で求められている医療連携に的確に対応するため、「エリアマーケティングコーディネーター」も配置した。エリアマーケティングコーディネーターは、医療連携に関するMRの活動支援や、MRとは別に、製品を通じて患者に提供できる価値をより高める役割を担うという。人員数は開示していない。
■18年度第2四半期 国内医療用薬事業は7.9%の減収
同社の国内医療用医薬品事業の18年度第2四半期(上期)の売上は1787億円で、前年同期比7.9%減だった。18年4月の薬価改定で93億円の減収影響が出たほか、17年6月にジェネリックが参入した降圧剤ミカルディスファミリーが前年同期比61%減、金額では193億円の減収となったことが大きく影響した。
国内の通期予想をこの日、下方修正し、通期売上は3641億円(期初計画3653億円)と設定した。計画通りであれば、前年度比で5%の減収となる。前立腺がん治療薬イクスタンジや期初に厳しめの予想を立てたミカルディスファミリーなどは上方修正したが、便秘症薬リンゼスは期初計画92億円を今回40億円に大きく引き下げた。同社はリンゼスについて、排便に関する効果の訴求を強化していくとしている。
上期の連結業績は、売上6470億円(前年同期比1.1%増)、営業利益1268億円(32.0%増)などと、増収、各利益段階で2ケタ増益だった。特に最主力品の前立腺がん治療薬イクスタンジは全世界で1640億円(16.9%増)を売り上げ、全ての地域で順調に拡大し、米州では過去最高の四半期売上を記録した。
■遺伝子治療の保険償還 「当局とできるだけ早くスキームの交渉したい」
安川社長は会見で、18年8月に買収した英国ケセラ社(Quethera Limited)により、最先端の遺伝子治療プログラムを獲得したと説明した。失明リスクの高い緑内障患者の網膜に治療遺伝子を発現させる遺伝子組換えアデノ随伴ウイルスを活用した治療プログラムで、失明に至る患者の視力を確保できる可能性があるという。
ただ、世界的に遺伝子治療に対する保険償還のあり方が固まっていない。安川社長は、失明を回避し、介護も不要となるなど医療経済学の側面からも当局と交渉していくとしつつ、問題点として、「申請時には4~5年のデータしかなく、効果を何年保証できるということなく価格をつけることになる」と指摘した。
そこで、▽遺伝子治療に対して一度に何千万円ということではなく、効果が持続している間は年払いとする▽一度、保険償還して効果がなくなったら、もう一回はフリーで遺伝子治療を提供する――と私見を披露した。そして、「病気によっていろいろなモデルがあると思う」とし、「日本のように承認を取得としてから薬価交渉するとのモデルでは、我々もリスクが大きすぎてビジネスができない。当局とはできるだけ早くチャネルを開き、今までにないスキームで交渉していきたい」と述べた。
【連結実績 (前年同期比) 18年度通期予想(前年同期比)】
売上高 6470億9600万円(1.1%増) 1兆3000億円(横ばい)←修正前1兆2780億円
営業利益 1268億4200万円(32.0%増) 2340億円(9.7%増)←修正前2650億円
親会社帰属純利益 1038億6700万円(26.5%増) 1950億円(18.4%増)←修正前2130億円
【グローバル主要製品全世界売上高(前年同期実績) 18年度通期予想、億円】
イクスタンジ 1640(1403) 3259←修正前3103
エリガード 76(84) 159←修正前170
ベシケア 481(497) 961←修正前969
ベタニス/ミラベトリック/ベットミガ 686(576) 1496←修正前1462
ハルナール/オムニック 235(254) 465←修正前469
プログラフ 1004(993) 1960←修正前1907
ファンガード/マイカミン 182(209) 343←修正前348
【国内主要製品売上高(前年同期実績) 18年度通期予想、億円】
グローバル品
イクスタンジ 168(129) 294←修正前282
ベシケア 113(121) 224←修正前227
ベタニス 155(141) 325←修正前320
ハルナール 27(40) 52←修正前51
プログラフ(グラセプター含む) 234(250) 453←修正前463
ファンガード 44(55) 75←修正前78
ローカル品
セレコックス 251(248) 503←修正前494
シムビコート 194(190) -
ジェニナック 37(40) 83←修正前87
ワクチン 84(68) 305←修正前368
アーガメイト 28(29) 53←修正前53
ゴナックス 24(23) 49←修正前51
シムジア 47(45) 97←修正前98
スーグラファミリー 84(58) 179←修正前178
内、スージャヌ 17(-) -
レパーサ 12(7) -
リンゼス 16(4) 40←修正前92
ミカルディスファミリー 122(315) 215←修正前177
内、ミコンビ 14(33) -
内、ミカムロ 37(92) -
ボノテオ 54(68) 88←修正前104
リピトール 80(105) 152←修正前153
マイスリー 56(69) 110←修正前109
セロクエル 25(33) 48←修正前45
*仕切価ベース