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政府・全世代型社会保障検討会議 日医など医療関係団体が患者負担増「反対」を表明

公開日時 2019/11/11 03:52
政府の全世代型社会保障検討会議が11月8日、首相官邸で開かれ、日本医師会などからヒアリングを行った。この中で日本医師会の横倉義武会長は、患者の受診時定額負担の引き上げに強く反対を表明した。日本薬剤師会の山本信夫会長も同様に、高齢者の負担増とOTC類似薬の給付範囲や給付率の見直しに反発する姿勢を示し、足並みを揃えた。政府は年末までに「給付と負担」で中間的なとりまとめを行う方針だ。ただ、与党自民党の支持団体である日本医師会、日本薬剤師会から患者負担増に「No」が突き付けられたことで、今後の政府・与党間の調整にも暗雲が漂ってきた。この動きとは別に、同日は健保連など被用者保険関係5団体が、75 歳以上の後期高齢者の窓口負担を原則 2 割とする共同意見書を加藤勝信厚労相に提出した。

この日の検討会議で日医の横倉会長は、受診時定額負担の見直しについて、被用者保険3割負担導入を行った2002年の改正健保法の附則で「将来にわたり100分の70を維持する」と明記したことを指摘。その後の国会審議(2006年6月・医療法等改正案)における付帯決議でも同様のことを確認したとして、「容認できない」とのスタンスを鮮明にした。日本医師会は、患者負担増に伴う受診抑制が疾病の重症化を招き、結果的に医療費が高騰するとの認識だ。日本薬剤師会も日本歯科医師会も同様のスタンスで一致しており、健保連など経済団体が主張する高齢者の窓口負担引き上げを強く牽制している。

【FOCUS 過去事例からみる患者負担増の行方と当事者それぞれの思惑】

給付と負担をめぐる議論は、早くも各論をめぐり利害当事者間で賛否が割れる展開となってきた。政府の全世代型社会保障検討会議と並行し、自民党の「人生100年時代戦略本部」(本部長:岸田文雄政調会長)も関係団体から意見を聴取し、議論を進めているところ。こちらも年内を目途に中間報告を取りまとめるが、自民党支持団体の日本医師会が明確に反対を表明している以上、負担割合まで中間報告で言及することは難しい。また公明党が、過去の国会審議を踏まえ、受診時定額負担の見直しに慎重姿勢を示しており、与党内の調整にも課題が潜んでいる。

実は、過去にもこれと似た状況で政府・与党間の調整が難航したことがある。被用者保険3割引き上げと後期高齢者医療制度の創設で、日医と小泉首相(官邸)が対立した2002年の医療保険制度改革だ。当時も、今回と同様に政府・与党が年末の予算編成に向け、それぞれ制度改革について議論した。ところが患者負担増をめぐり、被用者3割負担引き上げを押し切ろうとする政府側に対し、自民党の厚労関係議員が猛烈に反発し、議論が何度も決裂した。加えて、小泉政権が2002年度診療報酬改定で「本体マイナス」を断行したことから、医師会が内部崩壊を来し、その後の弱体化を生む原因ともなっている。

今回の全世代型社会保障の議論は、団塊世代が後期高齢者になる2025年度に向けたマイルストーンの位置づけであると捉えれば、小泉政権当時のように日本医師会と全面対立することが得策で無いと政府側が判断する可能性は高い。よって、2020年度診療報酬改定についても、財務省が「本体マイナス」を主張しているものの、これからの予算編成過程で一定程度のバランスをもって着地できるとの見方もある。加えて消費税率引き上げを10月に行った直後ということもあり、財政規律の面で幾つか課題があるにせよ、日本医師会など医療関係団体が呑めない改革案を早々から提起する必要は低いという関係者の見方もある。

では何故、このタイミングで関係団体の対立軸を明確化する必要があるのか。財務省側からみると一つの示唆がみえる。次期診療報酬改定は単年度予算ベースの事項となるが、全世代型社会保障は2025年、2030年といった中期的な財政バランスをより盤石にするためのステップでもある。患者負担増に医療関係団体が反発することは、日本医師会の横倉会長が主張した通り、過去の国会審議における附則や付帯決議をみれば明らかで、仮に政府・与党間の調整に入ったとしても、難航が予想される。とはいえ、目の前に診療報酬改定が控えている状況で、財政当局がバッファーを持った交渉を行えるのは、この年末の予算編成過程であり、むしろ先々の改革について、関係者から一定の言質を取った上で、年明けからの法改正の議論に入る方が正論であるとの見方も成り立つわけだ。過去のように、3年間で1.5兆円という抑制目標ありきの議論からも建前上は解放される。

安倍首相も麻生財務相も2002年当時、小泉政権を支えた重要閣僚にほかならない。その後、それぞれが政権の座についたものの、その理由は異なれど政権の座から降りることを経験した。一時は下野した時期もあり、その間の社会保障政策や地域医療が遅れをきたし、それをリカバーするまで約20年あまりの月日が流れた。現政権は人生100年時代を掲げ、70歳までの雇用・年金環境の構築や働き方改革、Society5.0によるテクノロジーの利活用など、人口減少に耐えうる社会構造、社会システムの構築に注力している。その総仕上げとしての全世代型社会保障の実現は、現政権にとって避けて通れない課題だ。一見すると、この一連の議論は財政主導の色彩が目につく。ただ、実を取る議論はこれからだ。(沼田佳之)
 
 


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