薬食審 2月26日に第二部会 7品目審議 第一三共の抗体薬物複合体エンハーツなど
公開日時 2020/02/13 04:51
厚生労働省は2月26日に、新薬の承認の可否などを審議する薬食審・医薬品第二部会を開催する。当日は7品目を審議する予定。この中には第一三共の大型候補品で、乳がん治療に用いる抗体薬物複合体(ADC)のエンハーツ点滴静注用(一般名:トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え))や、日本セルヴィエが承認申請した殺細胞性抗がん剤イリノテカンのリポソーム製剤で膵がん治療に用いるオニバイド点滴静注がある。
【審議予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽オニバイド点滴静注43mg(イリノテカン塩酸塩水和物:日本セルヴィエ):「膵がん」を対象疾患とする新効能・新剤型医薬品。
イリノテカンのリポソーム製剤。イリノテカンをリポソームに封入することで時間をかけて徐々に薬剤を放出し、より長く腫瘍組織に働きかけることが特徴のひとつとなる。
日本セルヴィエはゲムシタビン治療後に進行した転移性すい臓がんを予定効能に承認申請した。同社が販売・流通を担い、ヤクルト本社がプロモーションする。日本セルヴィエはコ・プロのオプション権を留保している。
▽ベレキシブル錠80mg(チラブルチニブ塩酸塩、小野薬品):「中枢神経系原発リンパ腫」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬。B細胞受容体シグナル伝達経路の下流に位置するメディエーター(BTK)を選択的に阻害することで、治療効果を発揮する。B細胞受容体シグナル伝達経路は、B細胞性非ホジキンリンパ腫(B-NHL)や慢性リンパ性白血病(CLL)で恒常的に活性化していることが知られている。
承認申請は、再発・難治性の中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)患者44人を対象に、同剤の有用性を検討した多施設共同非盲検非対照フェーズ1/2に基づく。PCNSLは、高用量メトトレキサート療法を基盤とした薬物療法や全脳放射線療法が行われている。ただ、再発率が高く、再発・難治性のPCNSLでは標準治療が確立されていないことから、新たな治療選択肢が望まれている。
▽エンハーツ点滴静注用100mg(トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)、第一三共):「乳がん」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。条件付き早期承認の対象になる見込み。
抗体と薬物(低分子化合物)を適切なリンカーを介して結合させた抗体薬物複合体(ADC)。がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介して薬物をがん細胞に直接届けることで、薬物の全身暴露を抑えつつ、がん細胞への攻撃力を高める。
T-DM1(トラスツズマブ エムタンシン、国内製品名:カドサイラ)既治療のHER2陽性の再発・転移性乳がんに対する治療薬として承認申請された。承認されれば、主に乳がんのサードライン以降の治療で用いることになる。
厚労省によると、エンハーツは「条件付き早期承認制度」の対象となる見込み。同制度は、重篤な疾患であって有効な治療方法が乏しく、患者数が少ない疾患等の理由でフェーズ3試験などの検証的臨床試験を行うことが難しい医薬品について、発売後に有用性を評価することを条件に承認する制度のこと。重篤な疾患に対する有用な医薬品をいち早く承認することが目的。同省によると、同剤の条件は米国と同様の内容になる見込み。米国では、HER2陽性の再発・転移性乳がんを対象としたフェーズ3試験での臨床的有用性の検証が必要とされた。
HER2陽性の再発・転移性乳がんではトラスツズマブなどの抗HER2療法が標準治療で、病勢進行した患者に対しては別のADCのカドサイラが使われる。エンハーツは、T-DM1投与でも進行した患者を対象とした日米欧アジアでのグローバルフェーズ2試験「DESTINY-Breast01」で、主要評価項目の客観的奏効率は60.9%を示した。
▽ステボロニン点滴静注バッグ9000mg/300mL(ボロファラン(10B)、ステラファーマ):「頭頚部がん」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。先駆け審査指定制度の対象品目。
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)用ホウ素薬剤。患者に同剤を投与することで、ホウ素(10B)ががん細胞に集まる。その後、患部に体外から中性子線を照射してホウ素(10B)とぶつかると核反応を起こし、放射線が発生する。BNCTは、この放射線によってがん細胞を破壊する治療法で、放射線治療の一種となる。なお、照射する中性子線は、非常にエネルギーが小さく、人体への影響はほとんどないという。
▽テプミトコ錠250mg(テポチニブ塩酸塩水和物、メルクバイオファーマ):「非小細胞肺がん」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。先駆け審査指定制度の対象品目。希少疾病用医薬品。
低分子MET阻害薬。MET遺伝子は、がんにおいて過剰発現(遺伝子増幅)がみられるがん遺伝子のひとつ。MET遺伝子増幅は、肺がんだけでなく、胃がんや肝がんなど様々ながんにみられる。MET は HGF(肝細胞増殖因子)をリガンドとする受容体チロシンキナーゼで、HGF と結びつくことで、細胞の増殖や運動性を増加させるシグナルを活性化させ、腫瘍の形成や悪性化に関連すると考えられている。同剤はMETに対して高い選択性を有する低分子阻害薬で、肝細胞増殖因子依存性および非依存性のMET活性を低ナノモルの濃度で阻害する能力を持つ。
▽デュピクセント皮下注300mgシリンジ(デュピルマブ(遺伝子組換え)、サノフィ):「慢性副鼻腔炎」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
インターロイキン4およびインターロイキン13 (IL-4 およびIL-13)のシグナル伝達を特異的に阻害するヒトモノクローナル抗体。成人の既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎や、既存治療によっても症状をコントロールできない重症または難治の気管支喘息に対する治療薬として発売されている。
▽ボンベンティ静注用1300(ボニコグ アルファ(遺伝子組換え)、シャイアー・ジャパン):「フォン・ヴィレブランド病」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
同疾患は、止血に重要な役割を果たすフォン・ヴィレブランド因子(VWF)の質的異常又は量的低下・欠損に起因する疾患で、最も効果的な治療法はVWFの補充療法とされる。同社によると、同化合物は世界で初めて承認された唯一の遺伝子組換えVWF製剤。
【報告予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽ヌーカラ皮下注用100mg(メポリズマブ(遺伝子組換え)、グラクソ・スミスクライン):「気管支喘息」の小児適応を追加する新用量医薬品。
喘息において重要な炎症細胞である好酸球の機能を調節する役割を果たすIL-5を標的とした初の生物学的製剤で、IL-5が好酸球の表面にあるIL-5受容体に結合することを阻害する。これにより、血中、組織、喀痰に含まれる好酸球数を減少させる作用をもつ。現在の効能・効果は、「気管支喘息、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症」。
▽リサイオ点滴静注液100mg(チオテパ、大日本住友製薬):「悪性リンパ腫」を追加する新効能・新用量医薬品。
DNA合成阻害作用を持つ抗腫瘍性アルキル化剤。19年3月に「小児悪性固形腫瘍における自家造血幹細胞移植の前治療」を効能・効果として承認された。
▽ニンラーロカプセル2.3mg、同3mg、同4mg(イキサゾミブクエン酸エステル、武田薬品):「多発性骨髄腫における自家造血幹細胞移植の前治療」を追加する新効能・新用量医薬品。
細胞内で不要となったタンパク質を分解する酵素の複合体であるプロテアソームに結合し、そのキモトリプシン様活性を阻害することにより、がん細胞の増殖を抑制する。現在は「再発又は難治性の多発性骨髄腫」を効能・効果としているが、今回はファーストラインの前治療での使用を目的とするもの。
▽ブスルフェクス点滴静注用60mg(ブスルファン、大塚製薬):「悪性リンパ腫」を追加する新効能・新用量医薬品。事前評価済公知申請。
細胞の増殖に必要なDNA合成を阻害し、異常細胞の過剰な増加を抑える。現在の効能・効果は、「同種造血幹細胞移植の前治療、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、神経芽細胞腫における自家造血幹細胞移植の前治療」。19年10月31日の薬食審医薬品第二部会で、医療上の必要性 の高い未承認薬・適応外薬検討会議の報告書に基づき、公知申請を行っても差し支えないとする事前評価が行われていた。