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EFPIA・テリエ会長 イノベーションにアウトカム評価導入を Valueベースで患者中心の医療実現

公開日時 2020/09/30 04:52
欧州製薬団体連合会(EFPIA)のジャン‐クリストフ・テリエ会長(ユーシービーCEO兼 経営委員会議長)は9月30日、記者会見に臨み、「制度としてイノベーションのアウトカムと価値(Value)を評価すべきだ。単に予算を管理したいとか、最も低い価格にすべき、という話ではない」と政府に求めた。新型コロナウイルス感染症の影響もあり、世界的にデジタル化が加速するなかで、患者データを統合した基盤構築の動きは欧米先進国を中心に推進されている。テリエ会長は、「特定の疾患に対する治療インパクトを理解するためには、複数のデータソースを活用し、長期的に検討する必要がある」との見解を表明。データが統合されることで、治療アウトカムを可視化する。これにより、患者を中心に、医師や薬剤師など医療従事者、製薬企業などのステークホルダーが同じステージで対話するプラットフォームも構築できる。この結果、デジタルツールとデータが橋渡しするバリューベースの患者中心の医療システムを実現すべきとの考えをテリエ会長は示した。

新型コロナの世界的な感染拡大により、製薬産業が生み出すイノベーションの重要性が増している。特に、革新的新薬の早期上市が求められるなかで、最新テクノロジーを軸に新たなコラボレーション(協業)の枠組みが相次ぎ誕生するなどの変化が起き始めている。テリエ会長は、「通常はお互いに競争している企業間が協力することが必要になる。そしてそれをさらに加速させていくことが必要だ」との見解を披露した。

実際に欧州では官民パートナーシップ「IMI」をプラットフォームとして、新型コロナの治療法を開発するための欧州最大規模のプロジェクトが進行中だ。プロジェクトには、11企業、17のアカデミア、6社の中小企業、さらには3つの提携パートナー、5つの第三者団体が含まれているという。

◎ステークホルダー同士の連携でイノベーションの環境整備を

テリエ会長は、「もし、イノベーションを成功させたいならば、重要なのはすべてのステークホルダー同士が協力することだ。イノベーションを支持する環境を作ることが重要だ」と強調した。そのカギを握るのは、AIやビッグデータを活用したデジタルツールの利活用だ。日本市場に対しても、イノベーションが適正に評価される環境整備を政府主導で取り組む必要性を強調。国内の現状認識として、こうしたデジタル活用の議論が消極的であることに加え、高騰する医療費問題も薬価削減がメーンとなっているとの見方を示し、「薬はコストだけではなく、バリューを提供することもできる。グローバルな視点から、そうしたインパクトを正しく評価することが重要だ」と主張した。新薬創出等加算を引き合いに「長期的イノベーションについて正しい角度から評価されていない」などと指摘した。

統合的な患者データプラットフォームの重要性も強調し、「これからは一つの土台を築き、データを集積し、価値あるものにして対話できるようにする」と述べた。そのうえで治療戦略を評価するシステムとして、「様々なチャネルを理解し、患者のアウトカムを評価するスキームが必要だ」と強調。「(患者を含む)あらゆる当事者に対し、これまで以上にオープンな姿勢でコラボし、データを共有できるシステムの構築を促していきたい」とも語った。

こうした環境整備が進み、「イノベーションを開発するプラットフォームを構築することができれば、疾病による負担を下げていくことが可能になる。ステークホルダーにとって、イノベーションが共通のゴールになる」と主張。自身の「夢であり、希望である」とも述べ、その姿は、「協業によってのみ可能雄になる。患者中心に考え始めるべきだ」と念を押した。

◎EFPIA Japanプリンツ会長 官民の強力なコラボ体制実現に意欲

EFPIA Japanのハイケ・プリンツ会長(バイエル薬品代表取締役社長)は、「日本の患者のために様々なステークホルダーと協力する」と述べた。コロナ禍でイノベーションを迅速に実現することが必要となるなかで、「前例のないような協力体制が必要だ」として、日本でもステークホルダーとの対話推進に力を入れ、官民の強力なコラボ体制を実現することに意欲をみせた。

環境整備の面ではデジタル化の推進に言及。治療アプリが医療機器として承認されていることなどを引き合いに、「デジタルは多くのチャンスを提供する。医療のアウトカムを改善することができる」との見解を示した。コロナ禍でオンライン診療を含むデジタル技術の活用が推進されることにも触れ、「患者の診療記録を電子的に共有することで、しっかりとした管理が医師と薬剤師の間でできる」と強調。日本における医療者と患者の対面原則に理解を示しながらも、「医療従事者側の負担も軽減できる」と述べた。

日本政府に対しては、「様々な社会のセクター間のバリアーを取っ払わないといけない」と要望。すでに産業界とアカデミアで協力関係が築かれていることを引き合いに出しながら、「新しいアプローチを取り入れることに対するオープンな姿勢が可能になる。電子カルテを活用することで体系的な患者記録を取ることもでき、そのデータに基づく介入によってアウトカムを評価することも可能になると考えている」と述べた。
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