科研製薬の堀内裕之社長は11月６日、2021年３月期（20年度）第２四半期決算のウェブ会見で、９月に承認を取得した国内初の原発性腋窩多汗症外用薬エクロックゲル（一般名：ソフピロニウム臭化物）の情報提供活動について、コロナ禍でもＭＲによるリアル面談をメインに据えて、デジタルでの情報発信でカバーしていく考えを示した。「やはり新薬なので、先生方の認知度、理解度、また患者さんの状況をフォローするということが必要であり、メインはリアルの活動だろうと考えている」と述べた。ＭＲが医師とリモート面談したり、デジタルコンテンツを配信するため、エムスリー提供のリモートディテーリングサービス「my MR君」を導入したことも明らかにした。

堀内社長は、ウィズコロナ時代のＭＲ活動について、「医薬品情報を発信するだけであればデジタルツールだけでも良いが、情報の伝達確認や、その先にいる患者さんの状況もトータルでフォローしていくためには、ある程度のリアルの部分も必要と考えている」と話した。医療機関の訪問規制の状況などを踏まえてリアルとデジタルを融合させた情報活動を行う考えだが、新製品はリアル中心で展開する構えもみせた。

エクロックゲルは神経伝達物質であるアセチルコリンの作用を阻止する抗コリン剤。アセチルコリンはムスカリン受容体と結合することで汗腺から発汗を誘発すると考えられている。同剤はムスカリン受容体と結合することでアセチルコリンの結合を阻害し、発汗を抑制する。

１日１回、適量を腋窩に塗布する。塗布の際にアプリケーター（塗布具）を用いることで手が薬液に触れることなく塗布できる。現在は重度の原発性腋窩多汗症に対する治療薬としてA型ボツリヌス毒素製剤ボトックス注用があるが、エクロックは軽度から使用できる。今回の適応でのゲル製剤は国内初となる。

■爪白癬薬クレナフィン、２ケタ減収　春先から夏場の受診抑制響く

同社の20年度上期業績は売上367億円（前年同期比18.6％減）、営業利益97億円（28.8％減）、当期純利益72億円（24.3％減）――の減収減益だった。同社は20年４月の薬価改定で、18年４月からみて７％台前半、増税改定後の19年10月からみて４％台後半の改定影響を受けた。堀内社長は会見で、薬価改定影響と新型コロナによる受診抑制影響が大きかったと説明した。

最主力品の爪白癬治療薬クレナフィンの上期売上は102億円（16.0％減）だった。同剤は春先から夏場にかけて患者数が多い季節製品。しかし、20年度は４～５月に緊急事態宣言が出されるなどして全国的な受診抑制が起こったうえ、ＭＲ活動の自粛も重なり、同剤の２ケタ減収に至った。

下期はデジタルツールの活用強化に加え、創傷治癒促進薬フィブラストスプレー、抗白癬菌剤メンタックス、抗アレルギー薬デザレックス、新薬エクロック――といった他の皮膚科領域の製剤とトータルで情報活動し、シナジーの最大化を図る。クレナフィンは通期で202億円を目指す。

これまで同社の売上トップ製品だった関節機能改善薬アルツの上期売上は92億円（26.2％減）と厳しかった。同剤は薬価改定で後発品価格へと段階的に引き下げる「G2」の対象製品で、18年４月からみて16.2％、19年10月からみて13.1％の薬価引下げを受けた。加えて、同剤は医療機関で関節内に投与する薬剤のため、受診抑制による外来患者の減少が直接、減収につながった。

【20年度第２四半期連結業績 （前年同期比）　通期予想（前年同期比）】
売上高　367億8900万円（18.6％減）　772億円（13.5％減）←修正前829億円
営業利益　97億8200万円（28.8％減）　181億円（31.7％減）←修正前208億円
親会社帰属純利益　72億2600万円（24.3％減）　134億円（30.8％減）←修正前150億円

【20年度第２四半期の国内主要製品売上（前年同期実績）　通期予想、億円】
クレナフィン 102.52（121.99） 202←修正前225
アルツ　92.25（125.02）　190←修正前202
セプラフィルム　43.94（50.14）　90←修正前96
フィブラストスプレー　13.73（15.47）　28←修正前31
エブランチル　9.55（9.72）　19
リグロス　3.29（3.26）　7←修正前8
ヘルニコア　1.59（1.82）　4←修正前7
ジェネリック計　41.44（50.09）　82←修正前88