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INES 「マクロ経済スライド」を用いた新薬価制度改革案を発表 革新的医薬品の「価値評価」と両立も

公開日時 2021/05/31 04:52
社会保障分野の政策提言などを手掛ける新時代戦略研究所(INES)は5月28日、オンライン記者会見を開催し、「マクロ経済スライド」を用いた新たな薬価制度改革案を公表した。中⾧期的な経済成⾧に見合った薬剤費の総額上限を設定しつつ、革新的医薬品の価値評価を両立させるというもの。保険薬価収載された医薬品を、「イノベーティブ新薬群」、「成熟製品群」、「基礎的医薬品」の各カテゴリーに分類。指標とする経済成⾧率を超えた場合は、成熟製品群を対象に広く薄い薬価改定を実施し、薬剤費を調整する。一方で原価計算方式に変わる「薬剤価値」に基づく算定方式を求めたほか、特例拡大再算定を含む市場拡大再算定の廃止を提言した。

新たな薬価制度改革案は、20年7月に同研究所内に発足した「INES 新薬イノベーション研究会」がまとめたもの。改革案は、「財政と産業の紐帯」の視点から構成され、マクロ的な視点では経済成長との調和・整合性を、ミクロ的な視点としてイノベーティブな新薬の評価と財源配分の考え方を明示した。

◎薬剤費成長上限を設定 上回った場合は薬価改定で薬剤費を調整

マクロ経済スライドによる薬剤費マネジメントのイメージは、あらかじめ薬剤費成⾧上限を設定するというもの。成長率の上限は名目GDP成長率(Z%)とし、仮に画期的な大型新薬の登場で薬剤費成⾧率が経済成⾧水準を上回った場合は、薬価改定によってGDP成⾧率の範囲内に薬剤費を調整する。また、この際に実施する薬価改定については、「“成熟製品群”の薬価を成⾧上限額に合わせる形で引き下げる」と提案。これにより、主に長期収載品や後発品が薬剤費調整の役割を担い、イノベーティブ製品群や基礎的医薬品の薬価は、成熟製品群ほどの改定影響を受けることはない。

薬剤費調整の薬価改定に際しては、新たに「スライド調整率」を設定。調整後薬価は、「市場実勢価+改定前薬価×スライド調整率」で算定するとした。さらに、市場実勢価に調整幅(現行2%)を上乗せする現行の改定方式を発展させ、成⾧上限に見合った新たな調整方式を導入する。なお、総薬剤費実績が上限成⾧率以下の場合、マクロスライド調整は実施しないとの考え方も明示した。

◎マクロ経済スライドのシミュレーション 成熟製品群の改定率を試算

研究会はマクロ経済スライドを導入した際のシミュレーションも公開した。2019年度実績をベースにしたもので、上限成長率+1.8%、仮に4000億円製品が発売されたケースを想定すると、市場平均の薬価改定率▲4.0%に対し、成熟製品群の改定率は▲6.3%。イノベーティブ製品群(例:新薬創出等加算品)の市場サイズは改定前と後とで同じ規模が維持される。

◎コストの積み上げではなく薬剤価値に基づく薬価算定方式の導入を

「医薬品の価値」を評価する新算定方式では、コストの積み上げではなく薬剤価値に基づく薬価算定方式の導入を求め、「価値ベースの薬価算定を実施している他国の算定方式も参照のうえ設計する」とした。一方で、売上規模のみに基づく再算定は適用しないとし、市場拡大再算定および特例拡大再算定は適用除外(廃止)とする。

このほか長期収載品については、「撤退による新陳代謝の加速」を提言。後発医薬品への一定割合の置き換えが進んだ⾧期収載品の市場撤退ルールをさらに緩和するほか、後発医薬品企業に安定供給、情報収集・提供、品質責任を分担することで市場全体の新陳代謝を促進すると提案している。OTC類似薬については、混合診療回避の観点から、「保険外併用療養費制度」など既存の制度の活用を検討すべきではないかとも提案。ただし、OTC類似薬の保険除外の財政効果は一時的で持続的な効果は乏しいのではないかとも指摘している。
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