国内上位企業のMR1人当たり生産性 トップはエーザイ3億1700万円 中外製薬は3億800万円
公開日時 2021/07/02 04:52
国内医療用医薬品売上高が年間2000億円以上の製薬企業のMR1人当たり生産性をミクス編集部が調べたところ、最も高い製薬企業はエーザイの3億1700万円であることが分かった。第2位は中外製薬の3億800万円。エーザイは3年連続、中外製薬は2年連続で生産性3億円超をキープした。一方、MR1人当たり生産性が2億円台の企業に、MSD、田辺三菱製薬、第一三共、小野薬品、大塚ホールディングスがランクされた。各社とも国内売上高が前期比を下回る中で、MR数削減などで1人当たり生産性の各社水準を維持していることも分かった。
ミクス7月号に掲載したMR1人当たり生産性の
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編集部は製薬各社が公表している直近の国内医療用医薬品売上高と、本誌が集計したMR数調査結果(Monthlyミクス6月号掲載)を用いて、MR1人当たり生産性を算出した。国内売上高2000億円以上の企業は13社あり、このうち21年4月時点のMR数を開示していない武田薬品等を除く9社について調べた。その結果、MR1人当たり生産性「3億円超」の企業はエーザイと中外製薬の2社となった。
◎国内売上は減収 MR数は減少 生産性は前年水準をほぼキープ
エーザイのMR1人当たり生産性は3億1700万円となった。前年の生産性は3億200万円で1500万円アップした。同社の場合、当期の国内売上高は2138億円で前年比6.2%減収。MR数も前年実績に比べて86人減らしており、減収分とMRの削減でMR1人あたり生産性が維持されていることが分かる。一方で中外製薬のMR1人当たり生産性は3億800万円で1000万円減らした。国内売上高は4091億円で前年比6.5%減収。MR数は前年実績に比べて49人減となり、こちらもエーザイと同じように減収分とMRの減少分で生産性が維持されていることが分かる。
◎国内売上2000億円超企業 MR生産性の目安は「2~3億円」
MR1人当たり生産性が「2兆円超」をみると、エーザイや中外製薬とほぼ同様の傾向が見える。MSDのMR1人当たり生産性は、前年実績より200万円減らして2億3200万円だったが、こちらも国内売上高7.1%減収を、MR100人減で生産性をキープした格好だ。
一方でアステラス製薬のMR1人当たり生産性は1億6400万円で前年比3900万円減となった。同社の場合、国内売上高が2791億円で、前年比19.2%の減収。しかし、MR数は1700人で前年人数をそのままキープしており、この結果、MR1人当たり生産性を大きく落とすことになった。同社は5月27日にコア営業利益に対する販管費率の圧縮(20年度の31%から25年度は21%に)を盛り込んだ「経営計画2021」を公表、その後6月3日にはグループ会社を含む450人の早期退職優遇制度の導入を発表している。武田薬品は21年4月時点でのMR数を公表していないため、MR1人当たり生産性は分からないが、20年11月に国内ビジネス部門の社員を対象に希望退職プログラムを導入しており、他社と同様にMRの生産性は一定程度回復しているものと推察される。
国内医療用医薬品市場は、革新的新薬を有する企業にとって成長戦略の可能性が拡がる一方で、長期収載品などの低薬価品は金額・サイズともに鈍化のスピードを増しており、製薬各社にとって収益モデルの転換が急務の課題となっている。2000年代初頭に大量のMRを抱えた製薬会社を軸に、自社MRの削減がいまも続いており、本誌の調べでも直近1年で1000人超、過去5年間で5000人超のMRが姿を消した。今回行ったミクス編集部の調べでも、国内売上高2000億円超の大手企業にとって、MR1人当たり生産性は、概ね「2~3億円」をいかにキープできるかが経営上の課題になってきた。コロナ禍で勢いを増すデジタル投資との見合いで、いかに社員の働き方改革を実践し、生産性を維持向上できるかが重要となっている。(編集長・沼田佳之)