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製薬協・岡田会長 給付と負担の議論への参画を表明 日本の医薬品産業論を発信して国民的な議論をリード

公開日時 2022/01/21 04:53
日本製薬工業協会(製薬協)の岡田安史会長は1月20日、会見に臨み、少子高齢化が進み、医療保険財政が厳しさを増すなかで、「医薬品市場のなかで、従来の延長線上の線引きを超えた議論を私はする」と給付と負担の議論に積極的に参画する決意を示した。岡田会長は、医薬品産業が健康寿命の延伸に貢献し、日本経済を牽引する産業として成長する必要性を強調。「公的保険給付範囲や負担構造の見直しといった国民的な議論も不可欠になってくる」との見解を示し、社会全体としての負担を含めた議論の必要性を強調した。

◎「従来の延長線上の薬剤費の引下げ策を継続することは限界」


厚労省は昨年、8年ぶりとなる医薬品作業ビジョンを改訂した。官民での本格的な議論のスタートを控え、岡田会長は製薬業界の現状と課題認識を示した。世界市場が成長するなかで、国内の医薬品市場が横ばいになるとのデータを示した。そのうえで、国内未承認薬が2016年の117品目(56%)から、20年には176品目(72%)に増加しているとして、「未承認薬が増加する状況は、日本の市場の魅力度が低下し、優先順位が下がってきているのではないか。ドラッグ・ラグの兆しではないかと強い危機感を持っている」と危機感を露わにした。そのうえで、「(日本だけマイナス成長するという)市場予測を現実のものにしてはいけない。従来の延長線上の薬剤費の引下げ策を継続することは、限界を迎えていることは明々白々だ。限界を迎えていることを直視しなければいけない状況だ」と課題認識を示した。

◎「すべからず、公的保険でカバーされている現状を見直す必要も」

岡田会長は、「高齢化の進展などで、今後さらに保険財政がひっ迫するなかで、イノベーションと国民皆保険の両立を図るためには、これまでの枠組みを超えた議論が必要だ。そのなかでは、公的保険給付範囲や負担構造の見直しといった国民的な議論も不可欠になってくる。医薬品は画期的な治療効果をもたらす新薬から上市時期や臨床的位置づけが変化した薬剤まで、すべからず、公的保険でカバーされている現状を見直す必要も出てくると考えている」と述べた。

また、「医薬品市場は成長すべきだが、すべて公的保険の枠の中とは思っていない。約10兆円の医薬品市場について、その線引きの議論は従来の延長線上にない。我々自身も問題提起し、向き合っていきたい」と述べた。「国民皆保険の重篤な疾患を支える公助という最後の砦はあるが、その前段階の社会全体でカバーしていくときに、消費税含めて高い税負担の下で、社会保障を求めていくのか。国民の皆さんも含めてしっかり向き合っていただくための努力をしないといけない」とも述べた。

◎革新的新薬は「医療的価値のみならず、労働生産性の向上など、多様な価値評価を」

薬価については、「特許期間中の新薬、長期収載品、ジェネリックと大別すると、価格を構成する要素や役割が異なっていることは明らかだ。特性に合わせてグローバルスタンダートの観点から、価格のあり方についての議論も必要だと強く思っている」との認識を表明。革新的新薬については、「医療的価値のみならず、労働生産性の向上など、多様な価値が評価されるべき」と従来の主張を繰り返した。一方で、新薬評価のメリハリを強化する議論についても、「向き合わなければならない」との見解を表明した。

◎「日本の医薬品産業論という形で発信していきたい」 医薬品産業が議論をリード


給付と負担の議論に臨むなかでは、国民やステークホルダーに理解を求めるためにも、医薬品産業としてのビジョンを示すことも求められるところだ。岡田会長は、「ドラッグ・ラグ、それに準ずることが起きないようにしないといけない。グローバルなコンセンサスとして出せるかどうかはわからないが、日本の医薬品産業論という形で少なくとも発信していきたい」と表明した。

医薬品産業については、「国民の健康寿命の延伸を支えるとともに、日本の経済を牽引し得る、最先端の産業であると思っている」との見解を示した。日本の経済成長を牽引するためには、「日本からイノベーションが生まれるようにしっかり取り組まないと、日本という国の先はないと思っている」と強調。「最終的な出口である薬価だけでなく、最初のイノベーションを生むエコシステム、日本のデータが利活用できる環境を作るかが大きなポイントだ。それによって実現できる社会というのは、今と大きく様変わりすると思うし、これを含めて医薬品産業が中心的な議論をリードしていかなければならないという気概をもっている」と述べた。

岡田会長は、「国民の健康寿命延伸を支え、少子高齢化社会の中で医薬品産業が国の成長を支えるという観点で本当に議論されているのかというと、個人的には至っていないと感じている。本格議論でありながら、最後のチャンスではないかと思って向き合っている」と議論に参画する意欲を強調した。

◎毎年薬価改定「乖離率の大きい品目という趣旨に立ち戻って議論を」

毎年薬価改定が導入されるなかで、今年議論が本格化することが想定される、診療報酬改定のない年の薬価改定(中間年改定)については、「薬価制度抜本改革で示された乖離率の大きな品目について薬価改定を行うという趣旨に立ち戻って議論をしたい」との見解を表明。調整幅については、価格のバラツキを吸収する機能があるとして、「薬剤流通の安定のためには必要であると思っており、調整幅を引き下げる等の議論、見直しは行うべきではないと考え、議論に臨んでいく」と述べた。

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