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アステラス製薬・安川社長 製品構成変化、利益構造改善で「増収増益を目指す体制整った」

公開日時 2022/04/28 04:51
アステラス製薬の安川健司社長CEOは4月27日、2022年3月期(21年度)決算会見に臨み、「製品構成はこの数年で大きく変貌した。利益構造がさらに改善し、増収増益を目指す体制が整った」と述べ、中長期的な成長トレンドの達成に自信をみせた。同社は、新薬群の成長が続く一方、長期収載品の販売契約終了や製品譲渡も相次いでいる。21年度は3期ぶりに増収増益とし、22年度も増収増益の計画を立てた。また、22年度から、「断捨離イズム」をグループ全体の日常業務にまで浸透させると表明。徹底的に無駄を省き、優先順位の低い業務は“断捨離”して社員の心理的・物理的な余裕を生み出し、新たなイノベーションが起きやすい組織に変革させることに意欲を示した。

◎イクスタンジ 21年度に5000億円突破 22年度6000億円台に

同社は近年、日本市場での大型品の販売契約の終了が相次いだ。19年に喘息COPD治療薬・シムビコート、20年に降圧剤・ミカルディスファミリー、21年は7月に高脂血症治療薬・リピトール、12月に消炎鎮痛薬・セレコックス――のアステラス製薬による販売が終了。抗潰瘍薬・ガスターなど長期収載品の製造販売承認の他社への承継も近年相次ぎ実施し、新薬シフトを加速させてきた。グローバルでは21年度に前立腺がん治療薬・エリガードの製品譲渡も行った。

その一方で、イクスタンジを中心とする新薬群に経営リソースを集中。イクスタンジは21年度に売上5343億円(前期比17%増)と5000億円の大台に乗せ、22年度は6425億円(同20%増)を目指すとした。米国や日本などで転移性去勢感受性前立腺がんの適応で売上拡大させて実現する考え。また、主要製品の急性骨髄性白血病治療薬・ゾスパタ、尿路上皮がん治療薬・パドセブ、腎性貧血薬・エベレンゾ、過活動膀胱治療薬・ミラベグロン(国内製品名:ベタニス)――は、いずれも21年度に堅調に伸長し、22年度も全製品で増収の計画を立てた。

◎連結業績は3.7%増収 日本は7.3%減収

その結果、21年度の連結業績は売上1兆2961億円(前期比3.7%増)、営業利益1556億円(同14.4%増)、親会社帰属当期利益1240億円(同2.9%増)――と増収増益を達成した。ただ、国内売上は2588億円で前期比7.3%減だった。イクスタンジや骨粗鬆症治療薬・イベニティは2ケタ成長するなど新薬群は伸長したものの、セレコックスやリピトールの販売契約終了、長期収載品の過活動膀胱治療薬・ベシケアなどの減収影響が大きかった。

なお、21年度の販管費は、▽米国でのイクスタンジ共同販促費用、▽デジタルトランスフォーメーション投資(約80億円)、▽新製品上市・育成に向けた販促費の増加(約50億円)、▽グローバルでの要員最適化(約90億円減)――などで前期比8.8%増となり、想定も上回った。安川社長は、「将来成長への投資増加を、旧来型費用の削減努力でカバーできなかった」と述べ、販管費の絶対額は維持しつつ、成長や効率化に向けた投資には今後も最優先で取り組む方針を改めて示した。

◎22年度予想 国内は前期並み目指す

22年度予想は売上1兆4430億円(同11.3%増)、営業利益2690億円(同72.8%増)、親会社帰属当期利益2080億円(同67.6%増)――とした。この中には、前臨床試験で期待した効果が得られず研究開発を中止した、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を対象疾患とする3つの遺伝子治療プログラム「AT702」「AT751」「AT753」の無形資産の減損損失1億7000万ドルも含まれる。国内事業は前期並みの売上2600億円を目指す。

◎断捨離イズム推進で「新たなイノベーションが起きやすい組織に変革させる」

安川社長は会見で、「企業の競争力、価値向上に寄与しないコストを徹底的に見直し続けていく」とした上で、「不要なモノを断ち、過剰なモノへの執着から離れるという“断捨離”の概念を日常業務に応用する。実施すべき業務への傾注やその時間を増やし、労働生産性向上による新たなイノベーションが起きやすい組織に変革させる」と強調した。そして、「今期は断捨離イズムを推進する」と宣言した。

同社のいう断捨離イズムは、(1)聖域のない徹底的な業務見直し(2)止める、捨てる業務の特定(3)特定した業務を実際に止める・捨てる――の3ステップで構成する。

徹底的な業務見直しでは、過去から続く慣例、古い業務プロセス、ルーチンワークなどの業務を対象に、“Must have/Nice to have”の観点で分類する。止める・捨てる業務の特定では、ROIや優先度の「低い」業務を特定。一例として既存の古い業務プロセス、類似の内容のレポート、過剰品質の報告書、会議参加者の見直し――を挙げた。そして、特定した業務の優先順位の低いものから実際に止める・捨てる(=断捨離する)ことで従業員のホワイトスペースを確保。その結果、コストの削減をしながら新しいことにリソースを投資できるようにし、持続的にイノベーションの創出が可能な環境にするとしている。

同社の菊岡稔CFOは会見で、「意図としては、コスト削減ありきではなく、いかにマインドセットを変えながら、無駄を省いていくかにある」と指摘。管理職には財務規律とコストオーナーシップを徹底し、従業員の労働生産性向上による新たなイノベーションが起きやすい組織へと変革することがねらいと説明した。

【21年度連結業績 (前年同期比) 通期予想(前年同期比)】 
売上高1兆2961億6300万円(3.7%増)、1兆4430億円(11.3%増)
営業利益1556億8600万円(14.4%増) 2690億円(72.8%増)
親会社帰属純利益1240億8600万円(2.9%増)、2080億円(67.6%増)

【21年度のグローバル主要製品売上(前年同期実績) 通期予想、億円】
イクスタンジ 5343(4584) 6425
ゾスパタ 341(238) 462
パドセブ 217(128) 365
エベレンゾ 26(11) 99
ベタニス/ミラベトリック/ベットミガ 1723(1636) 1787
ベシケア 220(316) 127
プログラフ 1854(1827) 1907

【21年度の国内主要製品売上(前年同期実績) 通期予想、億円】
グローバル品
イクスタンジ 472(402) 526
ゾスパタ 39(38) 49
パドセブ 18(-) 43
エベレンゾ 25(11) 63
ベタニス 375(351) 362
ベシケア 100(185) 18
プログラフ(グラセプター含む) 382(407) 357
ハルナール 26(30) 14
ファンガード 16(44) 9

ローカル品
スーグラファミリー 303(279) 331
うち、スージャヌ 125(113) 非開示
レパーサ 58(51) 非開示
リンゼス 69(64) 78
ビーリンサイト 64(45) 非開示
イベニティ 314(248) 非開示
スマイラフ 24(17) 33
ジェニナック 26(25) 非開示
ワクチン 51(79) 86
ゴナックス 50(51) 49
シムジア 112(100) 非開示
マイスリー 70(78) 55
*仕切価ベース
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