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東和薬品・吉田社長「企業再編を考えないといけない」 原材料価格の高騰や為替変動など経済要因も

公開日時 2022/05/17 04:52
東和薬品の吉田逸郎代表取締役社長は5月16日の決算会見で、ジェネリックビジネスを取り巻く環境激変を踏まえ、「企業再編を考えないといけない時期が来る可能性が高い」と述べた。ジェネリックビジネスを取り巻く環境とは、相次ぐ供給不安や、毎年薬価改定の導入など業界内の事象に加え、世界経済情勢によるインフレ率の上昇やそれに伴う、価格高騰、為替変動による経済的要因も経営リスクに位置づけられる。吉田社長は、「ジェネリックビジネスは非常に厳しい状況にこれからも進んでいく」と危機感を露わにした。そのうえで、「業界再編もすでに少しずつ起きているのではないか」と述べ、「経営効率化や競争力強化」を視野に入れた新たな視点での製薬産業としてのビジネス構築が経営者に求められるとの考を示した。

◎ジェネリック業界は「異常事態」

現状のジェネリックビジネスのリスクについて問われた吉田社長は、「業界はいま、コロナ禍と業界の不祥事ということで異常事態だ。この異常事態に対して業界としてできる限りのことを対応しているのだが、なかなか対応しきれてはいない」との見方を示した。

吉田社長は業界と個社、それぞれで対応すべきことがあるとしたうえで、「業界の事情がさらに悪化しているのではないか。経済事情というか世界的なインフレが起き、円安が進んでいることもあり、輸入材料の価格が上がってきている。原末の原料も少しずつあがってきている状況にある」と強調。「業界全体として安定供給体制に取り組んでいるが、個社は生産もいっぱい一杯でやっている。そのなかで、インフレなどで原材料価格が高騰しており、加えて毎年改定で薬価が下がっていくなど、これらが相まって非常に厳しい状況にこれからも進んでいくと思う」と見通した。

◎「個社対応では難しい、限界がそのうち来るのではないか」

業界再編については、先発大手企業の子会社売却や、外資系企業では事業再構築があったことにも触れ、「こうしたことが徐々に起こっている。薬価の引下げや原材料費の高騰など、将来も厳しい状況が続くという予想の下で経営を考えると、経営の効率化や競争力強化をしなければならない」と述べた。そのうえで、「個社対応では難しい、限界がそのうち来るのではないか。その時に、企業の再編のようなことで、リスクを緩和できるのかということを考えていけない時期が来る可能性が高いと思っている。それがいつかはわからないが、いまの状況で経営を継続していけるかというと厳しくなっており、その中で変化が起こってくるのではないかと思っている」と続けた。

◎安定供給へ増産体制急ぐ 省人化や連続生産などでの効率化も

東和薬品としては安定供給に向け、生産体制の増強に力を入れていることも説明した。現在は140億錠体制だが、今期中に20億錠増産できる体制を整備する考え。24年4月には山形工場の第三固形製剤棟と第二無菌製剤棟での生産を開始し、25年度までには175億錠体制を敷く考えも示した。こうした体制整備が安定供給に対して、「最大限努力する中での打ち手としてできること」と説明。「新工場ができるときに、生産ラインの見直しを行いながら、品目ごとの効率化を考えて、175億錠+αを努力して対応する」と述べた。

効率化も求められるなかで、吉田社長は新工場の建設に当たり、「ありきたりのことだが、機械化、そして、ロボットを使う、ということ。極力、ヒトを使わない省人化した製造ラインと、連続生産などにより生産の効率化は可能になってくるのではないか」とも述べた。増産を急ぐなかで、「いま一番困っているのは、24時稼働する中で、深夜の生産は疲弊感があることだ。短い期間ならそれでも協力していただけるのだが、もう2年続いている」と説明。「深夜の作業は非常に負担になっている。ロボット化、システム化、機械化をして、代わりができないか検討しており、その可能性が見えてきている。新しい工場は、そういう効率化を考えて進めている」と述べた。また、従来の製造ラインを見直し、省人化を図ることが必要との考えも示した。

◎22年3月期 売上高は6.9%増の1656億1500万円 米国事業は“差別化”で23年3月期も増収計画

同社の22年3月期の連結業績は売上高が前年比6.9%増の1656億1500万円、営業利益の3.6%減の192億500万円の増収減益だった。当期純利益は14.0%増の159億1400万円。国内売上高は6.7%増の1266億7600万円、海外売上高は7.5%増の389億3800万円だった。

米国市場についてはインド製薬企業の相次ぐ参入で価格の引下げ圧力が強まっており、日本企業が苦戦を強いられるなかで、増収を確保した。23年3月期は22.8%増の231億円と大幅な増収を計画する。久保盛裕上席執行役員国際事業本部担当は、スペシャリティ製品を中心に差別化を図る考えを表明。「売上や利益率が高いという考え方ではなく、必要とされる医薬品とは何かを見極めて、東和薬品としても、グループの海外子会社としても、同じような姿勢で製品の選択をし、長きにわたって使ってもらえるような製品をしっかり見極めて開発して販売したい」と話した。


【21年度連結業績(前年同期比) 22年度予想(前年同期比)】
売上高 1656億1500万円(6.9%増) 2125億円(28.3%増)
国内売上高 1266億7600万円(6.7%増) 1690億円(33.4%増)
海外売上高 389億3800万円(7.5%増) 435億円(11.7%増)
営業利益 192億500万円(3.6%減) 190億円(1.1%減)
親会社帰属純利益 159億1400万円(14.0%増) 120億円(24.6%減)
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