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横浜市大・五十嵐准教授 医薬品の価値評価「“バリューベース・プライシング”は必ず広めていくべきだ」

公開日時 2022/06/08 04:51
横浜市立大学医学群健康社会医学ユニットの五十嵐中准教授は6月7日、製薬協メディアフォーラムで、医薬品の価値評価として「“バリューベース・プライシング”は必ず広めていくべきだ」との見解を示した。ただ、実現には、患者の満たされないニーズや社会的労働生産性など、「質的な評価をどうやって量的な評価とミックスさせるかが一つの課題」と指摘。対象疾患によっては顕在化価格が分析時点薬価を下回るようなケースが存在するとしながらも、上市前後におけるデータ収集の必要性を強調した。また、日本国内のイノベーション評価については、「いまの環境下で“現状維持か+αか”という制度は恐らく許容されない。凸を創るときの凹を許容できるかどうかが論点になると思う」との見解を示した。

この日のメディアフォーラムには、五十嵐准教授のほかに、東京女子医科大学医学部膠原病リウマチ内科の田中榮一准教授、獨協医科大学の平田幸一副学長が登壇し、「医薬品がもたらす多様な価値を考える-患者さんやそのご家族が望む豊かな日常のために」をテーマにディスカッションした。

◎五十嵐准教授「(コロナ禍で)否が応でも健康・ヘルスケアと経済は分けて考えられない」

五十嵐准教授は講演でコロナ禍の2年間を振り返り、「否が応でも、健康・ヘルスケアと経済は分けて考えられない。お互いがお互いに関係するので、相対的に考えないといけないということで(この2年間は)盛り上がった」と強調。コロナ禍の医療費(20年2月~21年11月・20~59歳)と比較した生産性損失の規模は5~6倍に膨らんだとのデータを提示した。

医薬品の価値評価については、有効性・安全性、治療費以外に、仕事への影響や家族・医療者の負担軽減度なども考慮するようになっていると指摘。95%以上の患者が治癒したC型肝炎治療薬を例にあげながら、臨床的有効性のほか生存年数・QALYともに年数延長を認めるなど、上市直後において生産性損失や費用対効果などに関する「チャンピオンデータ」が揃っていたと説明し、「薬剤の価値を示すには最も優れたケースになる」と強調した。

ただ一方で、医療費以外の介護費・インフォーマルケア費用の寄与が大きい神経変性疾患治療薬や、対象患者が高齢者でPFS全期間(生産性損失改善)やOSの延長が月単位の分子標的薬については、「顕在化価格が分析時点薬価を下回ることもある」と指摘。「すべての領域でうまくいくとは限らないが、やはり価値があるというところなので、質的な評価をどうやって量的な評価とミックスさせるかが課題だと思う」との見解を示した。

◎田中准教授 TNF阻害薬によって患者の日常生活や労働生産性が大きく改善


東京女子医科大学医学部膠原病リウマチ内科の田中准教授は「関節リウマチ患者の賃金・給与の増加に関する調査」を紹介。TNF阻害薬コホート、MTX単剤コホートの賃金・給与収入の年間増加率をみた。その結果、5年間の観察機関においてMTX単剤コホートに参加した患者の収入がベースラインに比べて3.1%増加していたのに対し、TNF阻害薬コホートに参加した患者は14.7%に増加しており、TNF阻害薬の上市によって患者の日常生活や労働生産性が大きく改善していることを示した。

◎平田副学長 片頭痛の支障度は時に非常に高く生産性に影響する

独協医科大学の平田副学長は、片頭痛患者が抱える日常生活の支障や悩みに言及。予防治療薬が無効だった片頭痛患者の疾患負担に関する調査結果から、「家族との時間を犠牲にしている」(回答率・44%)、「仕事に集中できない」(52%)、「仕事を休んでしまう」(32%)などと紹介した。平田副学長は、「頭痛は非常に多い疾患で、その診断はしばしば難しい」と述べながらも、片頭痛の支障度は時に非常に高く生産性に影響すると強調。抗CGRP抗体(受容体抗体)薬による発症抑制療法が可能となったことなどで、治療のアウトカムにも影響しているとの認識を示した。



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