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厚労省 経口新型コロナ治療薬・ゾコーバを緊急承認 重症化リスク因子のない軽症患者などの治療選択肢

公開日時 2022/11/22 23:00
厚生労働省は11月22日、塩野義製薬の経口新型コロナウイルス感染症治療薬・ゾコーバ錠125mg(一般名:エンシトレルビル フマル酸)を緊急承認した。同日開催の薬食審の薬事分科会・医薬品第二部会合同会議で、賛成多数で緊急承認が了承され、即日、承認した。投与対象は「軽症~中等症Iの患者」で、重症化リスク因子のない患者にも使用できる初の経口薬となった。なお、具体的な投与対象患者は日本感染症学会が作成するガイドライン「COVID-19に対する薬物治療の考え方」を改訂して規定する。(写真提供:塩野義製薬)

同剤は内資系製薬企業が創製した初の新型コロナに対する経口薬となり、緊急承認された初の医薬品となった。

緊急承認の期限は、承認のあった日後1年とされた。塩野義製薬は、この期間に新たに得られた情報に基づいて推定された同剤の有効性の妥当性を再検討し、確認できた内容を踏まえた同剤のベネフィット・リスクに関する総合的な考察を行う。正式承認を得るためには再度申請し、承認を得る必要がある。

同剤の効能・効果は「SARS-CoV-2 による感染症」。用法・用量は「通常、12歳以上の小児及び成人にはエンシトレルビルとして1日目は375mgを、2日目から5日目は125mgを1日1回経口投与する」。禁忌は、▽同剤に過敏症の既往歴のある患者、▽降圧剤や高脂血症薬など36種の薬剤(併用禁忌)、▽腎機能又は肝機能障害のある患者で、コルヒチンを投与中の患者、▽妊婦又は妊娠している可能性のある女性――となる。

◎投与対象は高熱・強い咳症状・強い咽頭痛などの症状ある者 72時間以内に初回投与

この日の合同会議に示された日本感染症学会のガイドライン案によると、ゾコーバの投与にあたっては、「一般に、重症化リスク因子のない軽症例の多くは自然に改善することを念頭に、対症療法で経過を見ることができることから、エンシトレルビル等、重症化リスク因子のない軽症~中等症の患者に投与可能な症状を軽減する効果のある抗ウイルス薬については、症状を考慮した上で投与を判断すべきであること」とし、具体的な投与対象患者像は、「臨床試験の成績等を踏まえ、高熱・強い咳症状・強い咽頭痛などの臨床症状がある者に処方を検討すること」と記載する予定だ。投与の開始は、「SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから遅くとも72時間以内に初回投与する」と注意喚起する予定。

このガイドライン案について厚労省は、「(ゾコーバ投与の)必要性を十分に考慮してもらいたいということ」だとし、投与の必要性を検討する目安として高熱・強い咳症状・強い咽頭痛が列挙されていると解説した。

◎問診で直前の月経終了日以降に性交渉を行っていないことを確認

また、ガイドライン案では、併用禁忌薬が多岐にわたるため、「服用中のすべての薬剤を確認すること」と注意喚起するほか、妊婦や妊娠の可能性のある女性に投与しないよう、「問診で直前の月経終了日以降に性交渉を行っていないことを確認する。妊娠の可能性が否定できない場合は、本剤を投与しないこと」などと具体的に規定する予定だ。

◎5症状快復までの時間の中央値 ゾコーバ群167.9時間、プラセボ群192.2時間

緊急承認制度は、安全性が確認され、有効性が「推定」された場合に緊急承認する制度。7月20日の合同会議では、ゾコーバの第2/3相臨床試験(T1221試験)のうち軽症/中等症患者を対象とした第2b相パートの結果をもとに緊急承認の可否を審議したが、「有効性が推定できない」など否定的な意見が相次ぎ、継続審議となった(記事はこちら

この日の合同会議は、塩野義製薬から提出されたT1221試験の第3相パートで得られた速報データをもとに緊急承認の可否を審議した。第3相パートは、ゾコーバ(低用量、高用量の2用量)を1日1回、5日間経口投与した際の臨床症状の改善効果を検証することを主目的に、軽症/中等症患者を対象に実施した。試験は日本、韓国、ベトナムで、重症化リスク因子の有無、またワクチン接種の有無にかかわらず、1821例の患者が登録された。

主要評価項目は、発症から72時間未満に割付された患者集団における、オミクロン株流行期に国内で共通してみられる特徴的な5症状(倦怠感又は疲労感、熱っぽさ又は発熱、鼻水又は鼻づまり、喉の痛み、咳)が快復するまでの時間とした。

その結果、速報データとして、全体集団における5症状が快復するまでの時間(中央値)は、申請用量投与群(本薬375mg/125mg群)167.9時間、プラセボ群192.2時間で、本薬375mg/125mg群はプラセボ群と比較して24.3時間短縮し、統計学的に有意な症状改善効果を示した(P=0.0407)。このうち日本人部分集団における5症状の快復までの時間は、本薬375mg/125mg群165.8時間、プラセボ群172.1時間だった。

PMDAは合同会議で、これらの速報データに加えて、全体集団における12症状の快復までの時間が「短くなる傾向が認められた」とも補足。そして、「検討可能な情報に限りがある」としたものの、「有効性を有すると推定するに足る情報は得られたと判断した」と審査結果を説明した。

◎厚労省・吉田課長 重症化リスク因子のない患者に投与可能な点に「代替性の要件満たす」

この説明に医薬品第二部会の島田眞路委員(山梨大学学長)は、特に日本人部分集団における群間差の小ささから、「これで有効性が推定されると言えるのか」と指摘。これにPMDAは、「日本人部分集団での群間差の結果の小ささはあるが、臨床試験の評価という点からは、検出力等を考慮した全体集団での評価が原則であろうということで、我々が行った専門協議においても全体集団の結果で評価を行うことが妥当となった」と回答した。

また、緊急承認制度では代替治療法の有無も検討される。新型コロナに対する経口薬として既にパキロビットやラゲブリオがあるなかで、ゾコーバが代替治療に係る要件を満たすかも論点のひとつになっていた。この点について厚労省の吉田易範・医薬品審査管理課長は、ゾコーバが重症化リスク因子のない患者にも投与可能な点を挙げながら、「重症化リスク因子のない患者に投与可能という意味では、医療現場において代替可能な医薬品はないということで、実質的な意味において代替性の要件を満たしていると考えている」と説明した。

◎塩野義製薬 11月23日から医薬品卸への出庫開始

塩野義製薬は11月22日、ゾコーバの緊急承認を取得したことを受けてコメントを発表した。「第8波による感染拡大、医療逼迫が懸念される中、当社はその緊急性を鑑み、速やかに全国の医療機関への供給を開始できるよう、日本政府から受託する流通業務に関して協力機関を含めた緊密な調整を進めてきた」とし、23日から医薬品卸への出庫を開始することを明らかにした。

また、厚労省の事務連絡に基づき、ゾコーバの処方・調剤が可能な登録医療機関・薬局からの発注を順次受け付ける予定だとしたほか、「緊急承認医薬品として安全性情報の迅速かつ確実な収集と、医療機関に対するタイムリーな提供に取り組む」とした。

ゾコーバは塩野義製薬と北海道大学の共同研究から創製された3CLプロテアーゼ阻害薬。SARS-CoV-2は3CLプロテアーゼというウイルスの増殖に必須の酵素を有しており、同剤は3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、SARS-CoV-2の増殖を抑制するとされる。日本政府は塩野義製薬との間で、承認後速やかに100万人分を購入する基本合意を締結している。
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