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塩野義製薬・手代木社長 ゾコーバ錠の「育薬はこれからだ」 市販後のエビデンス構築に注力

公開日時 2022/11/25 04:52
塩野義製薬の手代木功代表取締役会長兼社長CEOは11月24日、ゾコーバ錠が緊急承認されたのを受けて東京都内で記者会見に臨み、「緊急承認はゴールでも何でもなく、単にスタートラインに立たせていただいたということ。育薬はこれからだ」と語った。将来的には抗インフルエンザ薬のように服用後に患者を日常生活に戻す姿を描いた。そのうえで、「日本人におけるデータは、他2剤(ラゲブリオ、パキロビッド)より圧倒的に持っていると思うが、それでもまだ数千例単位だ。まずは安全性、それから抗ウイルス効果はあると思うが、それが症状にどのような影響を及ぼしているかということを、少なくともEPPV(市販直後調査)の6か月の間は一生懸命調べさせていただきたい」と述べ、市販後の安全性監視をはじめとしたエビデンス構築に注力する姿勢を強調した。

「ゴールは、タミフルやゾフルーザのように、患者がかかりつけ医に行ってとりあえず5日間飲んでもらうというような、普通の生活のなかで、この薬をお使いいただけるようなプロファイルとなるように目指していきたい。COVID(新型コロナ)もインフルエンザと同じような状態になったね、と言っていただけるような、安全で有効性に信頼がおける薬のプロファイルを作りたい」-。手代木社長は、同剤が育つ姿をこう見通した。そのために重要なのが、日本人を対象としたエビデンス構築が重要との考えを強調した。

ゾコーバについては、今年度中に300万人超、23年4月以降は年間約1000万人の供給を可能とする生産計画も説明した。

◎全社あげて安全性監視体制を徹底 登録センターの患者情報に基づきMRが医療機関を訪問


この日の会見で手代木社長は、MRをはじめ、全社をあげて安全性監視体制を徹底する方針を示した。6か月間の市販直後調査において、全処方患者を対象に安全性情報を収集すると説明した。登録センターの患者情報に基づき、処方された医療機関にMRが訪問し、副作用や転帰などの情報を集約。2週間ごとに同社のホームページで最新情報を開示し、処方に役立ててもらう方針を示した。また、医薬品リスク管理計画としては、3000例を対象とした一般使用成績調査を実施し、早期に使用実態下での安全性・有効性を確認する。また、重要な不足情報として指摘された「中等度以上の肝機能障害患者での安全性」について血中薬物濃度の推移などについて臨床薬理試験を実施し、エビデンス構築に注力する姿勢を示した。

手代木社長はまた、「催奇形性や薬物相互作用の問題などあり、ゾコーバ錠が100点満点だとは現時点では思っていないが、他の薬と比べても、どれくらいウイルス量が下がるかということと、それを鑑みたうえで臨床症状の改善など、総合力ではずいぶん良いものを作らせていただいた」と自信をみせた。

◎「今後も感染症ビジネスを継続したい」 継続的な感染症ビジネスモデルの必要性指摘


この日の会見では、新型コロナ治療薬の承認に加え、新型コロナワクチンの内資系企業として初めて申請したことを披露した。手代木社長は改めて、感染症ビジネスのサステナビリティの難しさを指摘。「ゾコーバの緊急承認をいただき、かつ新型コロナワクチンについても承認申請をさせていただいたが、これを一つのきっかけとして今後も感染症のビジネスを継続させていただきたい」と述べ、政府の継続的な支援を訴えた。

さらに、AMR(薬剤耐性)で今後有効な対策がとられなかった場合、2050年までに年間推定約1000万人が死亡するとのデータを示し、対策の必要性を強調した。一方で、AMR対策の治療薬は使われない方が望ましい一方で、製造を継続するうえでは製造を含めて平時からの継続的な投資が必要だと説明した。

こうした感染症ビジネスを“消化器”に例え、「一家に1台ある消火器は(火事が起きずに)使わない方が正しい。でも、きちっとそれがいざというときの役に立つように、毎年1万円でも2万円でもお金を払って消火器をアップデートする、そういったことを国としてモデルとして作っていただけない限り、残念ながら我々もなかなか戦争を続けることはできない」と説明。「何とかこの感染症の研究開発を続けさせていただきますように、消化器モデルのご理解を多くの方々にしていただけないだろうか」と訴えた。

◎G7サミットでのAMR議論に期待感 プル型インセンティブで研究開発継続後押しを

手代木社長は、「我が国の政府だけではなくて研究開発を支援するという初期の支援、プッシュ型インセンティブについては、過去もずいぶん充実をしてきたと思うが、工場などの生産や情報提供を含めて承認後を支援するプル型インセンティブはまだまだ弱い」と指摘。使用しないことがむしろ社会にとって良いものに対し、国民の税金を活用することへの理解が必要との考えも示した。

そのうえで、イギリスでのサブスクリプションモデルなどを引き合いに、使用量ではなく医薬品へのアクセスに応じた支払いを行うモデルであれば、「私ども工場をフル稼働できるし、使わなかったら使わなかったで、それはそれでよかったというふうに思える」と説明。AMRがG7サミットで議題になることに触れ、「どのぐらいの金額レベルでどのぐらいの期間、ある意味で考えていただけるのかっていうことを、今後また皆様方のお力をお借りしながら充実をさせていただければ少し安心をして研究開発ができると思っている」と理解を求めた。

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