厚生労働省は３月３日、2023年度薬価基準改定を官報告示した。原材料費の高騰や安定供給、さらにはイノベーションの配慮の観点から23年度改定は新薬創出等加算、不採算品再算定に臨時・特例的な対応がなされた。新薬創出等加算の加算額が臨時・特例的に増額されたのは改定対象233品目のうち143品目。臨時・特例的に不採算品再算定により薬価が引上がったのは、解熱鎮痛消炎薬・アセトアミノフェンや抗菌薬・セファゾリンナトリウムなど328成分1100品目（告示数：1081）となった。

文末の「関連ファイル」に厚労省発表の薬価基準改定の概要及び別添資料（基礎的医薬品対象品一覧、新薬創出等加算対象品一覧、新薬創出等加算品を有する会社）を掲載しました（どなたでもダウンロードできます）。

◎23年度改定で実施の「既収載品の外国平均価格調整」　該当品目はゼロ

23年度改定は、診療報酬改定のない年の改定に当たる。対象は平均乖離率7.0％の0.625倍（乖離率4.375％）超の品目で、約１万3400品目が該当した。診療報酬改定のない年であることから、実勢価改定と連動しないルールは通常適用されないが、不採算品再算定を実施。同一組成、剤形、規格の製品が複数ある場合にはその全てが不採算になっていないと適用ができないため、ハードルが高いことが指摘されていたが、臨時・特例的に全品を対象に実施する。

新薬創出等加算については、通常の加算の算定方式に基づき加算を行った後、改定前薬価と加算適用後の価格差に相当する額の95％を加算適用後の価格に上乗せする。また、21年度改定では実施されなかった、既収載品の外国平均価格調整を実施したが、該当品目はなかった。このほか、後発品の価格帯、最低薬価についてルールを適用した。

◎新薬創出等加算600品目中233品目が改定対象に　企業区分Ⅰは22企業

新薬創出等加算品600品目のうち、実勢価改定の対象となったのは233品目、臨時・特例的対応の対象は143品目だった。企業区分は区分Iが22企業、区分IIが52企業、区分IIIが18企業だった。

新薬創出等加算品を有する企業トップ10（成分数ランキング）は、１位がノバルティスファーマ（25成分44品目）、２位タイが武田薬品（19成分33品目）、ヤンセンファーマ（19成分28品目）、サノフィ（19成分26品目）、５位がファイザー（15成分24品目）、６位タイがMSD（13成分21品目）、中外製薬（13成分21品目）、８位が第一三共（12成分32品目）、９位がノーベルファーマ（11成分13品目）、10位がアストラゼネカ（10成分16品目）――で、内資系企業は武田薬品、第一三共、ノーベルファーマの３社だった。

なお、新薬創出等加算の加算要件別の成分数及び品目数は、①希少疾病用医薬品が206成分306品目、②開発公募品が13成分23品目、③加算適用品が89成分169品目、④新規作用機序医薬品のうち基準該当品が40成分58品目、⑤新規作用機序医薬品から３年以内かつ３番手以内のうち１番手が加算適用品又は基準該当品が22成分44品目（複数区分に該当する場合は、上の区分に分類）。

◎不採算品再算定　アセトアミノフェン20％1gは7.10円から9.90円に引上げ

臨時・特例的に不採算品再算定が実施されたのは328成分、1100成分（告示数：1081）だった。告示数と品目数が一致しないのは、複数品目をまとめて収載する統一名収載を行っているため。

臨時・特例的な主な品目として、解熱消炎鎮痛薬・アセトアミノフェン20％1gは改定前薬価7.10円が改定後薬価9.90円に、外皮用殺菌消毒薬・イソプロパノール70％10mLは同4.50円が5.00円に、漢方薬の葛根湯エキス1gは同8.30円が9.10円に、輸液の生理食塩液100mL1キットは同178円が204円に、抗菌薬・セファゾリンナトリウム2g 1瓶は同356円が474円に、それぞれ引き上げられる。

◎基礎的医薬品は328成分1094品目　市場撤退予定のG1品目にかかわる後発品は４品目

このほか、基礎的医薬品は328成分1094品目（告示ベース、以下全て）。このうち安定確保医薬品に係る基礎的医薬品は10成分60品目で、このうち先発品がG1/G2品目であるものは８成分58品目。

後発品の価格帯は、１価格帯に769成分規格、２価格帯に220、３価格帯に89、４価格帯に25、５価格帯に３だった。市場から撤退予定のG1品目についての後発品は、１価格帯に１、２価格帯に２、３価格帯に１だった。また、市場から撤退しない予定のG1品目について後発品及びG2品目に係る後発品は、１価格帯に613、２価格帯に116、３価格帯に29だった。